地球温暖化の科学的な信頼性が揺らぐ中、4月30日に日本学術会議が初めて、この問題を公開の場で論議する会合を開いた。
日本学術会議 公開シンポジウム
「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)問題の検証と今後の科学の課題」
開催趣旨:
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)をめぐる問題(所謂, Climate-gate, IPCC-gates)について、科学的観点から事実関係を明らかにし、その情報と認識を共有すること、そして、今後このような問題が生じないためのIPCC の科学的作業の在り方、社会と政策への情報提供の倫理性、科学者の行動規範などについて討議する。講演
「IPCC の意義と課題」 中島 映至 (東京大学 大気海洋研究所 教授)
「氷河問題とIPCC 今日の課題」 西岡 秀三 (国立環境研究所 特別客員研究員)
「科学問題としての温暖化をめぐる視点」 草野 完也 (名古屋大学 太陽地球環境研究所 教授)
「IPCC と科学論的視点」 米本 昌平 (東京大学先端科学研究センター 特任教授)
パネルディスカッション
「IPCC 問題が問いかけるもの:科学的作業、情報・倫理、科学者の行動規範」
パネリスト 中島 映至 (東京大学 大気海洋研究所 教授、第三部会員)
江守 正多 (国立環境研究所 温暖化リスク評価研究室長)
草野 完也 (名古屋大学 太陽地球環境研究所 教授)
安成 哲三 (名古屋大学 地球水循環研究センター 教授、第三部会員)
伊藤 公紀 (横浜国立大学 大学院工学研究院 教授)
米本 昌平 (東京大学先端科学研究センター 特任教授)ーーー
アラスカ大学の福田正己 教授は、「どう見ても言い訳のシンポジウムだった」としている。
フリージャーナリストの岩上安身氏のツイッターによると、「この会議は、政治とマスコミに振り回される科学者の悲鳴と弁明の場でもあった。」
マスコミの代表として日経新聞の記者が発言し、「温暖化でキャンペーンを張ってきた手前、すぐには否定する記事は出せない、今日の会議をきっかけにして、少しずつ紙面の論調を軌道修正してゆくだろう」と述べたという。
5月4日の読売新聞社説は早速、次の通り述べている。
地球温暖化 科学的な根拠の検証が急務だ
地球温暖化の科学的な信頼性が揺らぐ中、日本の科学者を代表する日本学術会議が初めて、この問題を公開の場で論議する会合を開いた。
だが、会合では、専門家がそれぞれ自説を述べるだけで学術会議の見解は示されなかった。このまま終わらせてはならない。
取り上げられたのは、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が過去4回にわたってまとめてきた温暖化問題に関する科学報告書だ。次々に、根拠の怪しい記述が見つかっている。
報告書の作成には、日本人研究者も多数関与している。
しかも、この報告書は、日本をはじめ各国の温暖化対策の論拠にもなっている。学術会議自身、これをもとに、早急な温暖化対策を求める提言をしてき た。
どうして、根拠なき記述が盛り込まれたのか。国連も、国際的な科学者団体であるインターアカデミーカウンシル(IAC)に、IPCCの報告書作成の問題点を検証するよう依頼している。
国際的に多くの疑問が指摘されている以上、科学者集団として日本学術会議は、問題点を洗い直す検証作業が急務だろう。
IPCCは3~4年後に新たな報告書をまとめる予定だ。学術会議は、報告書の信頼性を向上させるためにも、検証結果を積極的に提言していくべき だ。
現在の報告書に対し出ている疑問の多くは、温暖化による影響の評価に関する記述だ。
「ヒマラヤの氷河が2035年に消失する」「アフリカの穀物収穫が2020年に半減する」といった危機感を煽る内容で、対策の緊急性を訴えるため、各所で引用され、紹介されてきた。
しかし、環境団体の文書を参考にするなど、IPCCが報告書作成の際の基準としていた、科学的な審査を経た論文に基づくものではなかった。
欧米では問題が表面化して温暖化の科学予測に不信が広がり、対策を巡る議論も停滞している。
日本も、鳩山政権が温室効果ガスの排出量を2020年までに1990年比で25%削減する目標を掲げているが、ただでさえ厳しすぎると言われている。不満が一層広がりはしないか。
欧米では、危機感を煽るのではなく、率直に論議する動きが出ている。この10年、温室効果ガスは増える一方なのに気温は上がっていない矛盾を、温暖化問題で主導的な英国の研究者が公的に認めたのはその例だ。参考にしたい。
毎日新聞記者は「クライメートゲート事件はたいしたことのない事件であり報道する価値がないと判断した」と回答したとしてブログで「論外」と揶揄されているが、同紙は5月7日の紙面で『疑惑 冷静に対処を』としてこれをとりあげた。
討論会については
「期待はずれだった。・・・専門家は自説を述べることに終始し、改善策について建設的な議論は乏しかった」とし、
「温暖化は政治、経済、社会に影響を与え、報告書の作成には日本人も中核でかかわった。『議論した』だけで終わらせず、再発防止策を提言して欲しい」としている。但し、報道しなかったことに対し、次の言い訳をしている。
「この疑惑は、報道の扱いが難しい問題だった。理由は発覚した時期にある。09年12月の京都議定書後の温暖化対策を決める国際交渉の直前だった。実は気温データの信頼性は10年近く論争があり、大げさに取り上げるのは何者かに利用されることにならないかと感じた。データ操作以外にも『ヒマラヤ氷河が2035年に消失』は『2035年に5分の1に縮小』の誤りだったが、3000ページに及ぶ報告書のごく一部だ。ミスをどこまで重大視するのかは難しい。」欧米では有力紙も地方紙も大々的に取り上げている。
「取り上げるのは何者かに利用されることにならないかと感じた」とするが、論争があるなかで、これを取り上げないのは、温暖化論を利することとなる。
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槌田敦・元名城大学教授は4月22日、学術会議に対し、「人為的CO2温暖化説」対「温暖化自然原因説」の学術討論会開催を申し入れた。
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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