三菱化学と旭化成、水島地区エチレンセンター統合の共同出資会社の設立

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三菱ケミカルホールディングスと旭化成は5月31日、三菱化学と旭化成ケミカルズの水島地区エチレンセンターの統合について発表した。

両社の水島地区におけるエチレンセンターを統合し、最適生産体制の確立と効率的な事業運営体制が必要と判断し、検討を進めてきたが、共同出資会社を設立して、水島地区の基礎石油化学原料事業を集約・統合することに合意したもの。

経営環境の変化に適時対応した基礎石油化学原料事業生産体制の最適化を実行するとともに、石油精製との連携も視野に入れた水島地区の強化にも鋭意取り組んでいく所存としている。

内容は以下の通り。

・共同出資会社:出資比率 50/50
・事業開始時期:2011年4月1日
・対象製品:エチレン、プロピレン、ベンゼン
       副産品C4、C5、水素、C9、ヘビーエンド等
       (エチレンプラントのみの統合で、誘導品は統合しない)
・事業内容:原材料及び用役の調達
       製造
       三菱化学、旭化成ケミカルズへの販売
       不足分の外部調達
       合理化、効率化計画の具体策立案と実行
・社名、代表者、資本金、企業形態等:未定

・最適化計画
 (1) 両社ともエチレンセンター生産設備のダウンサイジング
     エチレン需要3割減を前提とした設備対応(2012年までに実施)
      * 三菱化学はVCM停止で、2011/5定修時にエチレン 50万トン→38万トン
 (2) さらなるエチレン需要の縮小時にはエチレンセンターを1基に集約(需要動向にあわせて実施)
 (3) 設備のインテグレーションまで含めた留分バランスの最適化
 (4) 原料ナフサの調達、C3等不足留分の共同調達によるコストダウン
 (5) 用役、エネルギー関連のバランス最適化
 (6) インフラの相互活用による効率化

両社の水島のエチレンプラントは定修なし時の能力がいずれも50万トンとなっている。
(METI調査では三菱が496千トン、旭が504千トン)

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本件は2009年5月に日本経済新聞が報道し、同年6月2日に両社が以下の発表を行った。
    
1. 三菱化学と旭化成は、共同出資会社を設立し、両社の水島地区のエチレンセンター を一体運営する。
2. 3年以内を目処に、水島地区のエチレンセンターの最適化を図る。ただし、設備の統合形態については、現時点では未定であり、今後両社の顧客との関係も考慮しながら検討していく。
3. 両社の石油化学誘導品については、本検討の対象外とし、各社で最適な生産バランスを検討する。

2009/5/19  三菱化学と旭化成、水島でエチレン統合 

その後1年が経過して、ようやく発表されたが、具体的なことは決まっておらず、実施も20014月からとなっている。
設備も需要
3割減を前提にダウンサイジングするだけで、更に需要が減れば需要動向に合わせ1系列に集約するとしている。

日本経済新聞(5/30)は次のように報道している。

両社は昨年6月に交渉入りを発表したが、中国需要の急回復で統合を急ぐ必要性が薄れ、協議が一時中断するなど交渉が難航していた。

当初は今年
4月に事業統合し、3年後をメドに2基のうち1基を停止・廃棄する考えだったが、どちらの設備を止めるかで交渉が難航し、一時は破談の危機を迎えた。今回、設備能力削減については将来の需要をみて統合会社で柔軟に判断するとの方針に転換、1年遅れで合意にこぎ着けた。

千葉地区では出光興産と三井化学が本年4月1日に折半出資で「千葉ケミカル製造有限責任事業組合」(LLP)を設立し、両社のエチレンの運営統合を発表している。

2010/4/3  出光興産と三井化学、千葉のエチレン統合 

単なる運営統合だけでの合理化効果はしれており、抜本対策にはならない。
統合を通じて設備の停止・廃棄することが必要であるが、どちらを止めるのか、決定は難航すると思われる。

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設備廃棄で問題になるのは従業員対策である。

設備そのものは統合会社に移管するため、どちらを廃棄しても、損失を出資比率で負担するから同じである。
但し、従業員については、恐らく、統合会社に移籍せず、親会社からの出向、もしくは親会社が製造受託する形となる。
このため、廃棄する設備の元の会社が、その従業員の面倒をみる必要が出てくる。

エチレンの縮小は当然、誘導品の縮小にもつながるため(三菱化学はヴイテックの苛性ソーダとVCMプラントの停止を決めている)、そちらの従業員の問題もあり、どちらの設備を廃棄するかは大きな問題となる。

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三菱化学は2009年5月、ヴイテックが全製造設備を2011年3月末までには停止することを決定したと発表した。

カ性ソ-ダ VCM PVC
水島工場 180千トン  400千トン
四日市工場  100千トン
川崎工場 120千トン

但し、東亞合成の川崎工場内に位置する川崎の設備については、ヴイテックとしては停止するものの、その後については東亞合成が方向性を検討するとしていた。

2009/4/13 三菱化学、PSとPVC事業から撤退 

東亞合成とカネカは本年5月25日、東亞合成が2011年3月にヴイテックから川崎工場のPVC設備を引取り、カネカから年間70~100千トンの製造受託を行うと発表した。東亞合成自体は塩ビ樹脂事業から撤退する。

恐らく東亞合成としては従業員を他の事業に配置転換できないため、この形で雇用を継続するのが目的と思われる。
カネカとしては関東地区の需要家への供給のため、高砂の生産を落として、製造委託するものと思われる。

 

従業員問題がネックとなって、設備過剰状況が続き、業界全体の体力がますます弱まることとなる。



目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

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