オバマ大統領は6月16日、BP首脳陣と会談し、BPが原油流出事故の補償コストをカバーする200億ドルの基金の創設すること、200億ドルの資金は第三者機関の管理するエスクロー勘定に入金されることで合意した。
本ブログでは、今後、関係者の間で、損害の負担が問題になると述べた。
事故を起こした鉱区Mississippi Canyon 252の権益保有者は以下の通り。
BP Exploration and Production Inc. | 65.0% (Operator) |
Anadarko | 25.0% |
三井石油開発 | 10.0% |
2010/6/17 メキシコ湾石油流出事故の損害負担
米下院エネルギー・商業委員会小委員会は6月17日、原油流出事故に関し、BPのTony Hayward CEOを招き公聴会を開催した。公聴会は中断を挟みながら7時間超に及んだ。
同CEOは冒頭、「深いおわび」を表明したものの、後は議員の追及に「調査中だ」「知らない」などと繰り返した。
世界中で数百の掘削を行っており、本油田に関しては、事故が起こるまでは全く知らなかったとした。
同委員会の調査では、事故発生直前に技師が電子メールで「悪夢のような油井」と指摘していたことが判明。工期や工費を節約するために簡便な設計を採用した疑いが浮上した。
リグ関連サービスを提供する米ハリバートンからの「セントライザー」をほとんど使用していないとする警告を、BP幹部が「多分大丈夫だろう」として無視していたことが示された。
民主党のヘンリー・ワックスマン議員が、BPは最も極端なリスクを取り、コストや時間を省こうとしたことが事故につながったと非難した。
なお、共和党 のJoe Barton下院議員(テキサス州選出)が200億ドルの合意について、「shakedown=ゆすり」とし、「法的地位がなく、将来にとって恐ろしい前例になる」などと指摘、BP会長に謝罪した。
石油業界をバックとする同議員は、今後、これが前例になることを恐れる業界の懸念を代弁したとみられる。
これに対し、猛烈な反発が起こり、議員は発言を取り消し、謝罪した。
席上、Hayward CEO は米政府が「four responsible parties」を挙げていると述べた。
BPのほか、権益保有者のAnadarko と三井石油開発及び掘削作業担当のTransoceanとされる。
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Moody's は6月18日、25%の権益を保有するAnadarkoの長期債格付けをBa1 からBaa3 に落とし、更に引き下げの可能性があるとした。
これに対し、Anadarkoは懸念は分かるが、格下げは時期尚早であると反論、同日、以下の声明を発表した。
多くの証拠が、この悲劇が避けられたものであり、BPの無謀な決断と行動の直接の結果であることを、明白に示している。
最近の調査と議会の公聴会で明らかにされた事実、即ち、BPが安全を無視して作業し、いくつかの重要な警告のサインに気づかず、対応しなかったこと、にショックを受けている。
BPの行動は重大な過失、意図的な違法行為である。この鉱区の共同操業協定では、BPはオペレーターとして適切に、法や規則を遵守して、掘削を行う義務がある。
また、BPは重大な過失、意図的な違法行為による損害について、他の権益保有者に対し責任がある。連邦法の規則では、権益保有者は石油漏洩に対し責任を負うが、BPが全ての法的請求に対し支払いを続けることを求める。
なお(BPがさきに述べたように、)同社も、同油田から回収された油からの収入を寄付する。
これに対し、BPは19日に反論を発表した。
Anadarko の「重大な過失、意図的な違法行為」との主張に強く異議を唱え、責任回避の主張を認めない。
BP以外の権益保有者も石油漏洩から起こるコストと損害に対して責任がある。他の当事者が責任を果たすことを期待する。
最終的にいろいろの関係者の間でどのように損害を分担するかに関係なく、BPとしてはクリーンアップを行い、損害賠償を行っていく。
共同操業協定では、BPはオペレーターとして作業を行う責任を有するが、権益保有者は、石油漏洩のクリーンアップを含む作業のコストを権益比率で負担することとなっている。
更に全ての権益保有者は米連邦政府に対し、Oil Pollution Act of 1990の規定に基づき、他の関係者とともに、漏洩した石油の回収コストと被害について、連帯して責任を持つとの書類を提出している。
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話題
BPは6月18日、俳優のKevin Costnerが投資、開発してきた原油分離器V20を32台購入することを決めた。
Costnerの会社 Ocean Therapy Solutionsと契約したもので、1台約50万ドル。
汚染された海水を1台当たり1日21万ガロン吸い上げ、遠心分離の原理で99%近く原油と水に分離できるとしている。
Costnerはこの技術を17年にわたり開発を続け、彼自身の金を20百万ドル以上、投入したという。
目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
ワックスマン議員の「ゆすり」発言については、正直、少し同意しますよ。法的な裏づけもなく200億ドルの拠出を要請というのは…。じゃあ、なんで油濁法の賠償上限なんてものがあるんだ、という話です。法律の不備に対しては、政府が責任を負うのが筋でしょう。実際、今回の掘削プランは、「だいたいは」総務省のMMSが承認した通りなのに…。