トヨタ自動車は6月18日、中国でのストライキによって部品の供給が滞り、中国・天津市にある車の組み立て工場の操業を停止した。
操業を停止したのは天津一汽トヨタ自動車で、年産能力は42万台。
ストライキは機能部品・セーフティシステム製品・内外装部品を生産する部品メーカーの天津豊田合成で起こった。
従業員が賃上げを求めて17日にストを実施、18日もストが続いて、トヨタへの部品供給が停止した。
天津豊田合成は19日に従業員側と協議、全従業員約1800人を対象に賃金の2割アップに加え、暑熱や皆勤の手当充実などの条件で妥結した。日曜日の20日は休日を返上して生産の遅れを取り戻した。
トヨタ自動車は天津市の完成車工場の生産を6月21日に再開したことを明らかにした。
天津では同じくトヨタ向けのゴム製品を生産する「天津星光橡塑」でも6月15日にストが発生したが、会社側が要求の一部を受け入れたため、17日には通常の生産状況に回復し、トヨタへの影響は出なかった。
天津星光橡塑:
鬼怒川ゴム 7%
星光橡塑 42%(鬼怒川ゴム75.58%出資の台湾・中光橡膠の香港子会社)
豊田合成 51%
トヨタ天津が操業を再開した翌日の22日朝、今度は広州市の広汽トヨタ自動車が稼動を停止した。
広州市の南沙開発区にあるデンソーの子会社の「電装(広州南沙)」の工場で21日に待遇改善を求めるストライキが発生し、部品の供給が止まったため。
デンソーの部品工場は、トヨタやホンダの工場に燃料噴射装置を供給している。ホンダは「今のところ在庫で対応できているが、長期化すれば生産停止もあり得る」としている。
なお、広東省中山市にある日本プラストが85.1%出資する中山富拉司特工業でも6月17日にストが発生している。
同社は日産とホンダにハンドルやエアバッグを供給している。
また、ホンダ系の自動車部品メーカー高尾金属工業が出資する湖北省武漢市の武漢アイパック汽車配件でも17日から18日にかけてストが起きていた。
付記
ホンダは6月23日、広東省広州市の広汽本田汽車の黄埔工場が稼働を停止したことを明らかにした。
ニッパツの広州市にある部品工場で、22日夜にストが始まり、工場は23日朝から操業を停止、労使交渉が続いている。
この部品工場は自動車のサスペンション用コイルバネと走行性を保つスタビライザーを生産しており、ホンダでは部品不足で稼動を停止した。
ほかの日系メーカーの生産にも影響する恐れがある。
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今後も労働条件の改善要求は相次ぐものと思われる。
更に、既報の通り、中国は「所得倍増計画」を検討している。
2010/6/10 中国が「所得倍増」計画 (各社のストライキ状況も)
今後、中国での労務費アップは避けられないが、衣料などがベトナムなど低労務費国への移転を検討しているのに対し、自動車や家電は中国に膨大な投資をしている上、中国が世界最大の市場になりつつあるため、中国から他国に工場を移転することは難しい。
トヨタの張会長は、「労務費アップは自然の流れ」で、「中国進出は人件費が安いためではなく、顧客の近くがよいと思っているからだ」と述べ、現地生産を続ける考えを示した。
中国では下請け企業の従業員が同一労働・同一賃金を主張して、親会社並の労働条件を主張するケースが多い。
今後も労務費アップの要求は続くと思われ、下請けのストで自動車生産がストップする可能性がある。
カンバン方式を見直し、在庫を持つようにする必要があるかも分からない。
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トヨタの中国での完成車組み立て工場は以下の通り。
社名 | 天津一汽トヨタ自動車 | 四川一汽トヨタ自動車 | 広汽トヨタ自動車 | ||||
設立 | 2000年6月 | 2005年7月 (四川トヨタ自動車1998年11月) |
2004年9月 | ||||
出資比率 | 第一汽車集団 20% 天津一汽夏利自動車 30% トヨタ自動車 40% トヨタ自動車(中国)投資 10% |
第一汽車集団 50% トヨタ自動車 45% 豊田通商 5% |
広州汽車集団 50% トヨタ自動車 30.5% トヨタ自動車(中国)投資 19.5% | ||||
工場 | 第1工場 天津市西青区 |
第2工場 天津市経済 技術開発区 |
第3工場 (同左) |
成都工場 | 長春工場 (旧 長春一汽豊越汽車) |
広州市 | |
第1ライン | 第2ライン | ||||||
生産開始 | 2002/10 | 2005/3 | 2007/5 | 2000/12 | 2003/10 | 2006/5 | 2009/5 |
生産車種 | VIOS、 カローラ |
クラウン | 新型カローラ | コースター、 プリウス |
ランドクルーザー | カムリ、 ヤリス |
ハイランダー、 カムリハイブリッド |
生産能力 | 12万台 | 10万台 15万台(将来) |
20万台 | 1万3千台 | 1万台 | 20万台 | 16万台 |
なお、日産自動車の中国の活動拠点は以下の通り。
社名 | 東風汽車有限公司 | 鄭州日産汽車 | ||
設立 | 2003年 | 1993年 | ||
出資比率 | 日産自動車 50% 東風グルー プ 50% |
当初 日産自動車 30% 投資会社「中信汽車」 35% トラックメーカー 「鄭州軽型汽車」 35% ↓ 2005年 東風汽車有限公司 100% | ||
工場 | 湖北省 十堰市 |
湖北省 襄樊市 |
広東省 広州市 花都工業地区 |
河南省鄭州市 |
生産車種 | バス、 大型商用車、 中型商用車 |
ティアナ、 ライトトラック、 ミニバン |
ティーダ、 シルフィ、 リヴィナ、 キャシュカイ、 エクストレイル |
パラディン、 ピックアップ |
生産能力 | 10万台 | 36万台 →60万台(2012) |
8万台 2010年第二工場スタート +12万台 |
ホンダの四輪車製造工場は以下の通り。
社名 | 広汽本田汽車有限公司 | 本田汽車(中国)有限公司 | 東風本田汽車有限公司 | ||
出資比率 | ホンダ 50% 広州汽車 50% |
ホンダ 65% 広州汽車 25% 東風汽車 10% |
ホンダ 50% 東風汽車 50% | ||
工場 | 広州市 黄埔工場 |
広州市 増城工場 |
広州市 輸出専用工場 |
武漢市 第一工場 |
武漢市 第二工場 |
生産能力 | 24万台 | 12万台 | 5万台 | 24万台 | 0→6万台 (2012) |
目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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