信越化学、シリコーンで中国進出

| コメント(0)

信越化学工業は6月28日、シリコーンの工場を中国に建設すると発表した。

同社100%出資の「信越有機硅(南通)公司」を設立する。<p>HTML clipboard</p>「有機硅」は「シリコーン」)
江蘇省南通市経済技術開発区にある工業団地に約15万平方メートルの工場用地を確保済みで、2011年末完成をめどに成形用シリコーンゴム、RTVゴムなど年産25,000トンのゴム系製品の工場を建設する。投資金額は約85億円で、年100億円の売り上げを見込む。
今後、順次製品群を拡大していき、最終的には全ての製品群の製造を行う予定。

原料モノマーは、当面タイのAsia Silicones Monomer(GE社と50:50合弁会社)から手当てするほか、日本や海外他メーカーから調達する。

2001年2月、信越化学はGE/東芝グループと50/50出資のシリコーンモノマーの製造会社Asia Silicones Monomer Limitedをタイに設立した。
能力は年間約7万トン(シロキサンベース)アジア最大の単独シリコーン製造工場である。

GEと東芝はシリコーン事業から撤退し、事業をApollo ManagementMomentive Performance Materials に売却したが、GE(東芝持分はGEが買収)このJVについては売却せず、株主のままとなっている。

2006/9/21 GE、シリコーン事業を売却

信越化学は1953年に日本で初めてシリコーンを事業化し、現在まで国内トップシェアを有している。さらに、アメリカ、台湾、韓国、タイなど海外にも生産・販売拠点を有して、世界市場においても優れた品質と多彩な機能で高い評価を得ている。

中国の需要が大きく伸張し、今後も高い成長が見込めることから、現地生産に踏み切り、中国市場におけるシリコーン事業の拡大を目指すこととした。

信越化学にとり、この投資が中国では初の大型投資となる。

同社は2002年に信越化学 90%出資(残り10%は米国のTOPCO International)で浙江信越精細化工有限公司を設立し、浙江省嘉善県の工業団地に工場を建設、シリコーンの二次製品である一部のエマルジョン製品、一液型RTVゴムなどを中心に生産している。投資金額は工場用地を含め約4億円であった。

また、2003年には「信越有机硅国際貿易(上海)有限公司」を設立、シリコーン製品の販売市場拡大を図ってきた。

ほかに子会社の信越ポリマーが、1993年には蘇州に現地法人を設立してキーパッドの生産を開始、その後、生産体制を拡張し、コネクター、ロールの生産にも着手、2004年には深センに塩ビコンパウンド工場を稼動させている。

<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>これらは小規模の投資で、信越化学はこれまで、カントリー・リスクを考え、中国への大型投資を避けてきた。

金川社長は中国進出については、こう述べている。(2005/6/12 TV朝日 「トップに迫る」)

「中国はね、市場としてはこれからの10年、圧倒的に伸びるでしょうね。 非常に魅力的な市場です。
我々は製品の輸出には中国に大変お世話になっていて、たくさん輸出しています。
ただし、投資とは別のことなのです。
中国の場合は カントリーリスクというと語弊があるかもしれないが、例えば我々の商品の基礎中の基礎の原料である石油とか電力を、政府が一番コントロールしている。
我々が下流、ダウンストリームでいくら努力して、事業を成功させても、上流で押さえられたらそれで一発で終わり。
つまり、我々の経営努力ではできないものがあるところではやってはいけない、というのが私の考え方。
経営努力で克服できるものは経営努力で克服するが、できないものはやらない。」

---

同社は1967年にニカラグアで、信越化学 33.75%、三井物産 11.25%、現地(ソモサ大統領系) 55%出資で、塩ビ会社Polimeros Centroamericanos S.A. (POLICASA) を設立した。中米共同市場を対象にPVC 年産 5千トン、同コンパウンド 6千トンを生産するもので、1970年にスタートした。

同社は中米でも一、二を争う高収益企業に成長したが、1979年の革命勃発(ソモサ大統領は亡命、のち暗殺される)で撤退を余儀なくされた。

「この経験は、事業を進めるときにカントリー・リスクは絶対に避けねばならないことを私に教えてくれた」
(金川社長 「毎日が自分との戦い」)

注)本年1月、ニカラグア政府は金川社長(民間外交推進協会=FEC 会長)に対し、FEC会長としての両国関係の長期安定的拡大への貢献と、過去のPOLICASAへの貢献で、「ホセ・デ・マルコレタ勲章」を授与した。

<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>しかし今回、中国政府の関与は変わっておらず、最近は人件費アップや為替の変動などもあり、中国のリスクはあるものの、中国市場の重要性を勘案すれば、現地生産が不可欠と判断した。

5月の社長交代のインタビューで、森・次期社長は以下の通り述べている。

「金川社長は中国に対する取り組みについて、今まではカントリーリスクということで、大型の投資は控え、中小のモノをやり、営業を活発にというやり方だったが、これから中産階級が消費需要が増大してくることを見込んで、積極的に出ようということを昨年暮れに社内に宣告された。それを早く実現していきたい。

中国だけでなくて、今、新興国のGDP伸びは高い比率を示している。期待も高く、当社も相当出ていますけども、現地需要開拓を目指すというのは当然ですが、現地生産も目指して積極的に検討していく。」

 

信越化学では6月29日の定時株主総会終了後の取締役会で、金川社長が会長に、森副社長が社長に就任する。


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


コメントする

月別 アーカイブ