イラクのHussein al-Shahristani 石油相は6月26日、4つの新製油所の建設計画を明らかにした。
それぞれ50億ドル程度の建設費で、合計は200億ドル強に達する。
新製油所の建設により、現在の能力の日量55万バレルに対し、74万バレルを追加する。
イラクは現在、北部のBaiji、南部のBasra、バグダッドの南のDora に製油所を持ち、合計能力は55万バレル。
ガソリン1,200万リットル、ディーゼル1,500万リットル、灯油 900万リットル、大量の発電用燃料油を生産している。
新設するのはイラク中央のKarbala (14万バレル)、北部のKirkuk (15万バレル)、南部のNasiriyah(30万バレル)とMaysan(15万バレル)の合計74万バレル。
イラク中央のKarbala を最優先し、製品を北部、南部に輸送、その後に3製油所を建設する。
3製油所の生産量は当初は内需を上回り輸出されるが、そのうち内需が増加するとみている。
イラク石油省は6月下旬に外国企業を対象とする説明会を開催、日本からは日揮が参加した。近く国際入札を実施する。
外資になんら制限をつけず、真のパートナーを求めるとしている。
全額外資でもよく、イラクとのJVでもよい。
イラク議会は2007年に全額外資の製油所を認める法律を通している。
免税措置や土地の供給、輸送費などを勘案すれば、原料の原油価格は国際価格と比較して5%のディスカウントとなるとしている。
イラクは現在の原油採掘量日量250万バレルを6年間で1,200万バレルに増やす計画を持ち、新油田の開発を各国の石油会社に順次解放している。
権益は与えず、生産量に応じ報酬を支払うもので、高い目標・安い報酬にも係らず、世界の石油会社が応札した。
2009/12/14 イラクの石油第二次入札で石油資源開発が落札
石油相は、「6年後には原油の最大の生産国、輸出国になるだけでなく、精製製品の大輸出国になる」としている。
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上記の4製油所のうち、Nasiriyah製油所は日本連合(新日本石油/国際石油開発帝石/日揮)がNasiriyah油田の開発権を得る条件として提案してきたものである。
イラク政府は2009年6月に第一次解放対象の国際入札を行った。
2009/11/12 イラク、第一次油田開放で進展
イラク政府は、第一次開放とは別枠で、日量数十万バレルの生産が見込まれる有望油田のNasiriyah油田の交渉を日本連合及びEniと行った。
日本連合は開発権の確保のため、発電所や製油所建設も含め1兆円規模の投資と技術支援、人材育成などを提案したとされる。日本政府も国際協力銀行などを通じて全面的に支援した。
対抗していたEniはイラクの第一次入札でOccidental Petroleum及び韓国ガス公社(KOGAS)と組んでZubair油田を落札し、調印した。同社はこれに注力するため、Nasiriyah油田は放棄する意向で、日本連合に権利が与えられるのは確実とみられた。
ところが報道によると、新日本石油の代表が交渉のために2009年11月初めにバグダッドに到着したが、空港から出て石油省に行くのを拒否したとされる。
石油相は、「多忙のためオフィスを離れて外で交渉する訳には行かない。多くの石油会社が石油省で交渉をしているのに、石油省に来ないというのは分からない。新日本石油のやり方は不可解である」と述べた。
その後、交渉が行われないまま、本年3月には石油省の局長が、「新日石側との交渉は、最終合意に達せずに終了した」と断言、マリキ首相も「外国石油会社との契約はこれ以上交わさないよう閣議で石油相に伝えた」と発言した。
今回、入札にNasiriyah製油所が含まれたのは、Nasiriyah油田と込みで提案していた日本連合案が捨てられたことを意味する。
ほぼ確実といわれた案が、バグダッドに行きながら、安全上の理由で石油省に行かなかったことで壊れたとすると、残念至極である。
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