三井物産とダウ、合弁でテキサスで電解事業

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三井物産とダウは7月1日、両社が折半出資でテキサス州フリーポートで電解事業を行う合弁事業の設立に関する合弁契約書を締結した。

三井物産は約1.4億ドルを出資するとともに、プロジェクトファイナンスの活用に向け関係各社と協議中。

生産能力は苛性ソーダ約88万トン、塩素約80万トンで、2013年央に生産開始の予定。

製品は両社が半分ずつ引取るが、三井物産は塩素についてはダウにEDCへの加工を委託し、EDCを主にアジアで販売、苛性ソーダはダウを通じて米国内を中心に販売する。

三井物産は2009年4月に、塩事業、アルカリ事業、塩化ビニール原料事業、塩化ビニール樹脂事業、ウレタン原料事業を統合し、当該事業チェーン全体を川上から川下まで統括するクロールアルカリ事業部を発足させた。

同社はEDCをはじめとする塩素を原料とした商品群の販売を世界規模で展開しているが、本合弁事業を通じ、ダウとの関係を深化し、同社が強みを持つ商品の製造事業に参入するという意義があり、戦略的提携の一環として位置付けられる。

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今回の計画はダウが2008年1月に発表したダウ単独のChlorine 7 ”計画に代わるものである。
当初は2011年のスタートを目指すとしていたが、経済情勢の悪化で延期されていた。

ダウは信越化学と提携し、シンテックの原料VCMは全量ダウが供給していたが、シンテックは2004年12月にルイジアナ州で塩素45万トン、VCM75万トン、PVC60万トンの工場建設を発表(1期は2008年10月に稼動、2期は本年後半に完成予定)、更に 2007年5月には、テキサス州で電解工場(塩素50万トン)とVCM工場(825千トン)を建設する許可申請を同州環境庁に提出した。

2007/6/1  シンテック、テキサス州にVCM工場の建設許可を申請 

ダウは2004年11月に、テキサス工場のEDCプラント1系列を2005年末までに停止し、VCMの生産も縮小すると発表、これにより、両社の関係が薄まりつつあるとの見方がなされた。 

しかし、ダウは20081月に、テキサス州フリーポートでクロルアルカリ設備(Chlorine 7 ”)の建設を開始すると発表、同時に30年以上の需要家であるシンテックとのVCMの長期供給契約の更新を発表した。

Andrew N. Liveris 会長兼CEOは、「この供給契約は新投資の操業を保証するもので、JVの形はとっていないものの、シンテックはクロルアルカリ事業での戦略的パートナーである」とし、実質的にAsset- light 戦略であるとした。シンテックはテキサスの電化・VCM計画を無期延期とした。

2008/1/31  ダウ、テキサスでのクロルアルカリ設備新設、シンテックとのVCM供給契約更新を発表 

旭化成ケミカルズは20082、ダウからテキサス州 Freeport 工場向けにイオン交換膜法食塩電解の大型設備を受注したと発表している。受注金額は約70億円。

ダウのChlorine 7 ”計画は2011年のスタートを目指すとしていたが、20092月にダウは経済情勢の悪化で延期すると発表した。

20081月の上記発表時点では、ダウは「シンテックは戦略的パートナー」としていたが、本年に入り、ダウと信越の姿勢に変化が見られた。

信越化学は20104月、Shintechがルイジアナ州PlaquemineVCMの第2工場の建設工事を開始したと発表した。
第2工場の生産能力は、
VCM 80万トン、カ性ソーダ 53万トンで、投資金額は約1000億円、2011年の完成を目指している。第2工場が稼動すると、VCM能力は160万トンとなり、Shintechのテキサス州の工場も含めたPVCの全生産能力264万トンの60%を自給することとなる。

ダウのCEOAndrew Liveris20102 に、塩素/EDC /VCMついてもAsset Light戦略を検討する意向を明らかにした。
同氏は「信越とのパートナーシップは2011年には明らかに終了する」とし、「クロルアルカリは資本集約的事業で、ダウの大規模設備は有利であり、PVC業界とのパートナーシップも探求する。塩素でもAsset Light戦略を行う積もりだ」と述べた。

2010/4/6  信越化学、米国でVCM増強 

Andrew Liveris信越とのパートナーシップは2011年には明らかに終了する」という発言の意味は不明だが、ダウがシンテック向けを前提に単独で実施しようとしたChlorine 7 ”を、三井物産を相手にしたAsset Light戦略に切り替えたこととなる。

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ダウは中東と中国でのクロルアルカリの投資計画を発表している。

中東ではダウはサウジアラムコとの間で、サウジのラスタヌラに世界最大級の石油化学コンプレックスを建設する覚書を締結したが、これにはワールドスケールの電解設備と、VCM、ポリウレタン、エポキシレジンなどが含まれている。

       2007/5/15  アラムコとダウ、世界最大級の石油化学コンプレックス建設

中国では中国の国有石炭最大手・神華集団との間で、陜西省楡林市にワールドスケールのCoal-to-Chemicals コンプレックスを建設するための詳細FS実施の契約を締結した。
計画では "clean coal" technologies を使用し、石炭からメタノール、メタノールからエチレンとプロピレンを生産するが、電解設備も建設し、苛性ソーダ、VCM、有機塩素等を生産する。

       2007/5/21 ダウの海外進出  

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シンテックはダウとの間で共存共栄体制を取り、これがシンテックの高収益の要因の一つとされた。
シンテックはPVC、ダウは塩素ーVCMに特化し、VCM価格にはPVC市況を反映させるものと言われている。

シンテックの塩素ーVCM進出により、両社の関係が薄まったものと思われる。

金川会長は著書の「毎日が自分との戦い」のなかで、原料進出について、述べている。

(シンテックが1996年に原料一貫工場を計画した際に、環境を理由に反対運動が起こったこと、ダウが原料供給を増やす計画を立てたことで、一貫生産を見送ったが、)
こうした経緯を元ダウ社長でシンテック取締役を務められたブランチ氏に話すと、憮然とした表情で一言「ノー・フューチャー」(未来がない)。私は「エッ?」と言ったきり、言葉に詰まってしまった。同氏は、そろそろ独自に原料をつくらないと、シンテックには将来性はないと言いたかったのだろう。

一貫生産にこぎ着けるまでの過程では、ブランチさんの「ノー・フューチャー」が心の大きな支えとなった。

一貫生産は信越化学の戦略であるが、ダウとの共存共栄体制が切れるのは惜しい気もする。


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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

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