ペトロチャイナ、ウルムチで大規模パラキシレンプラントを稼動

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ペトロチャイナ・ウルムチ石油化学は7月19日、新疆ウイグル自治区ウルムチで大規模パラキシレンプラントの稼動を開始した。

38億人民元を投じたもので、PX能力は年産93万トン、他にベンゼンを32万トン生産する。
UOP技術を採用、原料は同地にある同社の製油所から供給する。

本計画は2006年9月にNDRCの認可を得ており、当初は2008年に生産開始の予定であった。
当時、ウルムチ石油化学は年産150万トンのPTAを計画しており、PXはこれの原料として考えられた。

建設開始は当初計画の2006下期から2007年9月にずれ込み、スタートアップ予定も2009年3四半期となったが、これが更に遅れることとなった。

問題はPTA計画が棚上げとなったことである。
同社は
NDRCにPTA計画を申請したが、その後、建設費が少なくとも40億人民元(約500億円)かかることが判明し、ギブアップした。

このため、PXが完成しても、使い道がなくなった。

工場から最も近いPTAプラントは河南省洛陽で、1900kmも離れている。
新疆ウイグル自治区ウルムチは中国の西北端にあり、ロシア、カザフスタン、タジキスタン、蒙古、アフガニスタンなどに囲まれている。
主な輸送手段は鉄道かトラックである。ペトロチャイナでは「可燃性のPXを簡単に輸送は出来ない」としている。

完成してもPXの行き先がないため、ペトロチャイナは稼動を遅らせた。
これに対し、地方政府は地方経済の活性化と数百人の雇用の確保のため、早急な稼動を要請し、揉めていた。

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2009年7月5日夜、ウルムチ市で少数民族ウイグル族による大規模暴動が発生、漢族ら197人が死亡、1700人以上が負傷した。広東省の工場でウイグル族が漢族に襲われ死亡した乱闘事件への抗議デモが暴動に発展した。
新中国建国以来、当局が発生を認めた少数民族の暴動としては最大級の規模で、背景には漢族が主導権を握る統治システムへのウイグル族の不満にある。

当局は暴動再発への強い危機感から、約10カ月にわたって自治区でのインターネット閲覧制限などの情報管制を行った。

2010年に入り、中国政府は新疆ウイグル自治区の経済発展支援を強化し、住民の生活改善を急ぐ政策をとった。

胡錦濤主席は4月23日の会合で、「地域の永続的な安定を実現するため、新疆ウイグル自治区を経済的、社会的に発展させることが我々にとって戦略的意味を持つ大きな、緊急の仕事である」と述べた。

ペトロチャイナのPX工場の生産開始は中央政府と地方政府から要請されたものである。

同社では、PXは約10%を自治区内で販売、40%は中央アジア市場で、残り50%は中国内陸部で販売するとしている。

しかし、上記のペトロチャイナの過去の発言から考え、販売先を見つけたとは考え難く、政府に押し切られ、とりあえずスタートしたものと思われる。

なお、中国全体では、PXを2008年に340万トン、2009年に370万トン輸入している。

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ウルムチ石油化学の製油所能力は600万トンで、PX 7万トン、ベンゼン 1万トン、アンモニア 63万トン、尿素 110万トン、PTA 75千トンのプラントを持っている。
同社では製油所能力を1000万トンに拡張する計画を持っている。


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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

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