台湾、中台経済協力枠組み協定(ECFA)を承認、9月発効へ

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台湾の立法院(国会)は8月17日夜、6月29日に中国と締結した中台経済協力枠組み協定(Economic Cooperation Framework AgreementECFA)を賛成多数で承認した。
中台双方は9月にも協定を同時発効させる見通しで、来年1月以降、双方の計806品目が段階的にゼロ関税となる。

中国の海峡両岸関係協会と台湾の海峡交流基金会は6月29日、重慶市で両岸経済協力枠組み合意(ECFA)と両岸知的財産権保護協力合意にそれぞれ調印し、文書を交換した。

「枠組み協定」とは正式な協定を結ぶ前にルールを定めるもので、正式な協定を結ぶまでの協議に時間がかかるため、実際の需要を考慮して、双方が最も切迫し、なおかつ双方のコンセンサスが得られている工業品項目の関税減免などについて部分的なものから関税の早期引き下げ(Early Harvest)を得る。

ECFAは序言、5章16条、5つの付属文書からなり、主な内容は経済、貿易、投資の各分野における双方の協力強化、貨物貿易とサービス貿易の一層の自由化促進、公平で透明かつ簡便な投資メカニズムと保障メカニズムの段階的構築、協力メカニズムの構築など。

主な内容は以下の通り。
1. 両岸の協力措置
  1) 実質多数の貨物貿易の関税及び非関税の障壁を逐次減少又は廃止する。
  2) 多数部門にわたるサービス貿易の制限的措置を逐次減少又は削除する。
  3) 投資の保護を提供し、相互投資を促進する。
  4) 貿易投資の利便性、産業交流及び協力を促進する。
2. 貿易と投資
  1) 貨物貿易
    貨物貿易協定に組み入れられた商品は「ゼロ関税商品」、「段階的に関税の引き下げをする商品」、「例外商品及びその他商品」の三種類に分かれている。如何なる片方も貨物貿易協定に規定された関税譲許の承諾に基づき、自主的に関税引き下げの加速化を実施してよい。
  2) サービス貿易
    制限的措置を減少又は廃止し、サービス貿易の奥行きと幅広さを拡大、サービス貿易における双方の協力を増進する。如何なる片方もサービス貿易協定に規定された開放承諾に基づき、自主的に制限的措置の開放を加速し、又は廃止してよい。
  3) 投資
    投資保障メカニズムを確立し、関連する投資規定の透明度を高め、投資制限を逐次減少し、投資の利便性を促進する。
3. 経済協力
    知的財産権の保護を強化し、金融、貿易、税関、電子ビジネスなどの分野における協力を促進し、中小企業同士の協力を推進、中小企業の競争力をレベルアップし、相手方における経済貿易団体の事務所等の機構設置を推進する。
4. 関税の早期引き下げ(Early Harvest)について
  1) 貨物貿易
    添付資料1に列記された商品に対し発効後6ヶ月以内に実施する。

中国側が石油化学製品(石油化学およびプラスチック原料を含む)、紡織、輸送機器(自動車部品を含む)、機械(工具機を含む)など539品目、138億4000万ドル相当、
台湾側が267品目の28億6000万ドル相当、
合計806品目、貿易額で計約167億ドル分の関税について、2011年から段階的に引下げ、2013年1月までにゼロ関税を実現することに合意した。

中国の対象製品の関税引き下げは以下の通り。

2009年関税率 1年目 2年目 3年目
0<X<5 0    
5.1<X<15 5 0  
15.1<X 10 5 0

(関税番号→製品名は http://www.customs.go.jp/yusyutu/2010/index.htm 参照)

中台間の自由貿易協定構想は、2008年総統選に当選した馬英九(国民党)が目玉の経済政策として掲げた。

馬英九政権は、発足直後から中国との経済関係拡大に積極的な姿勢を示し、三通(通商、通航、通郵)の実現、中国観光客への開放、中国資本の受け入れなどを推し進めた。

背景には、2010年にASEAN自由貿易地域(AFTA)で関税撤廃がなされる一方、台湾は他国とのFTA締結が困難な状況にあり、台湾経済の辺境化・孤立化に対する危機感があった。

中国とASEAN 10カ国は「中国-ASEAN包括的経済協力枠組み協定」を締結し、2010年から中国はASEAN 6カ国(インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ)と大部分の製品の関税の免税措置を実施し、さらに他ASEAN 4カ国(ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジア)も2015年にこれに続く予定。
 2009/10/27 中国・ASEAN自由貿易地域 来年スタート

2009年の台湾の中国向け輸出は857.2億ドル、輸入は205.1億ドルであった。

ASEANと中国が相互免税措置を実施した場合、台湾の輸出産業が大きな衝撃を受ける。
台湾の石油化学、機械製品の中国へ輸出される割合は43%および27%で、それぞれ平均6.5%、8.23%の高関税が課せられている。このままでは、台湾はASEAN製品との競争によって、約5.7万人および約32.7万人の就労者数がそれぞれ衝撃を受けることになる。

ECFA締結を統一への足がかりとしたい中国は、台湾の要求をことごとく受け入れて大幅に譲歩したため、中国国内に「譲歩しすぎた」との批判も出た。

中国台湾の18品目の農漁産品をアーリーハーベストに加えることに合意したが、台湾は中国大陸産の農産品の輸入品目の拡大を行わないことおよび中国大陸住民の労働者の来台就労を解禁しないことが確定、中国のほうがより多くの譲歩を強いられた形となっている。

台湾と競合する分野を多く抱える韓国企業は、「台湾企業の技術レベルは韓国とほぼ同じで、電子、機械部品などの韓国メーカーはいずれもシェアを奪われることを心配している。」
2009年の韓国の中国向け輸出は1,025.5億ドル、輸入は536.8億ドルであった。

中央日報は「最善の策は、早急に中韓自由貿易協定を締結し、影響を最小限に止めること」としている。
駐中国韓国大使は、来年から中韓自由貿易協定(FTA)の交渉が始まるとの見通しを示した。

丹羽宇一郎新駐中国大使は7月23日の会見で、中国が6月に台湾と経済協力枠組み協定を結んだことや、韓国も中国とのFTA締結に意欲を見せていることを指摘し、「日中のFTAを進めないと日本は沈没する」と懸念を表明。産官学共同研究が行われている日中韓のFTAについても、「協議を10年もやっているのに何もできていない」と不満を述べ、「市場を日本が見逃してはいけない」と強調した。



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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

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