韓国のKolonは先月、DuPontが米国の需要家にKolonのアラミドを購入しないよう、圧力をかけているとして、連邦裁判所に訴えた。
韓国の公正取引委員会は、韓国でKolonに対する独禁法違反行為がないかどうか、韓国DuPont の調査を開始した。
公取委では資料を収集している段階であるとしている。
アラミド繊維はDuPont(日本では東レ・デュポン)と帝人が世界の市場を二分しており、両社はアラミドペーパーで折半出資の合弁会社デュポン帝人アドバンスドペーパーを設立している。
Kolonは1979年にアラミドの基礎研究を開始、1994年に完成させ、2005年末から商業生産を開始した。
3社の状況は以下の通り。
パラ系アラミド | メタ系アラミド | 2009年生産量 (新聞情報) | ||
poly-p-phenylene- terephthalamide |
左に ジアミノフェニレン- テラフタルアミドを共重合 |
poly-m-phenylene- isophthalamide | ||
DuPont | Kevlar® | Nomex® | 28,000 t | |
帝人 | Twaron® (オランダで生産) |
テクノーラ® |
コーネックス® |
25,000 t |
Kolon | Heracron® | 2,000 t (5,000tに 増設計画) |
Twaronについて:
Courtauldsの繊維部門Enkaが開発した。
DuPontとの特許紛争があったが、1988年に和解している。1987年に住友化学とEnkaが日本アラミドを設立した。
1998年にAkzoNobel がCourtauldsを買収、EnkaとCourtauldsの繊維、化学部門を統合してAcordisを設立した。
(Acordissは1999年にCVC Capitalが買収)2001年に帝人がAcordisのアラミド事業を買収(日本アラミドも)。
ーーー
DuPontはKolonが同社の技術を盗用していると主張してきた。
DuPontは2007年に、同社を2006年初めに退職し、その後Kolonのために Aramid Fiber Systems LLCを設立した技術者の行動に疑念を持ち、FBIと商務省に懸念を伝え、共同で調査を続けた。
DuPontは2009年2月にKolonを商業秘密盗用で訴えた。
「KolonはDuPont技術を密かに取得するため執拗に活動してきた。そのために以前のDuPontの従業員(複数)を採用し、また採用しようとしてきた」とし、「Kolonの製品のこの3年間の著しい改良はDuPont技術を違法に使用した結果である」と主張した。
問題の技術者は秘密情報を自宅のパソコンに入れており、これをKolonに渡したとされる。
逮捕された技術者は2009年12月に罪を認め、本年3月に懲役18ヶ月の判決を受けた。
これに対し、KolonはDuPont技術の盗用を否定、自社技術で生産していると反論している。
ーーー
Kolon グループは1957年に Korean Nylon を設立した。1969年にはKorean Polyester を設立した。
1981年にそれぞれが改称していた Kolon (Nylon) Industries とKolon (Polyester) Industries が合併して Kolon Industries となった。
別途、Kolon グループは1976年にKolon Chemical を設立した。石油樹脂からスタートし、SAP、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂に拡大した。中国の蘇州にフェノール樹脂のJVを持っている。
2007年6月、Kolon Industries と合併した。
現在、Kolon Industries はChemical Material 部門で繊維、産業資材(aramidを含む)、フィルム、エレクトロニック資材、エンプラを、Performance Material 部門で石油樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂を扱っている。
Kolon は高吸水性樹脂(SAP)では世界の6番目のメーカーであったが、2008年6月にLG Chem に売却した。
2008/6/30 韓国LG Chem、高吸水性樹脂に進出
目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
コメントする