三井物産は8月17日、ベルギーの100%子会社Mitsui AgriScience International(MASI)を通じて、アイルランドの後発(特許切れ=post-patent)農薬製造・販売会社AgriGuard Holdings Ltd.の発行済株式100%を取得し、買収を完了したと発表した。
買収額は非公表だが、数十億円規模と見られる。
AgriGuardは、英国市場を中心に麦、菜種等の大型作物向けに後発農薬の製造・販売事業を展開している。
一方、 MASIは欧州における三井物産の農薬事業統括会社で、日系農薬メーカー製品を主力として、果樹・野菜などの高付加価値作物に使用される農薬(殺虫剤・殺菌剤)を主に販売している。
今回の買収により、AgriGuard が得意とする大型作物に使用される農薬(除草剤)を併せて提供できるようになり、こうした品揃えの一層の充実を機に、高付加価値作物市場ならびに大型作物市場への販売力を更に強化する。
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三井物産はこのほか、農薬分野で欧米で以下の買収を行っている。
同社では今回の買収により、欧米を中心に年間500億円規模の農薬事業を、3~5年で2倍の1000億円まで増やす方針。
1)米国 Certis USA, L.L.C. (生物農薬等の研究開発、生産、販売*)
旧称 Thermo Trilogy
2001年に親会社で大手計測機器メーカーのThermo Electronから買収
Bt剤分野で世界第二位のメーカーで、Bt剤の他、ニーム油、土壌線虫、フェロモンやウィルスを使用した天然農薬の製造・販売を行っている。
英国にフェロモン関連商品の製造・販売子会社AgriSenseを所有。
三井物産は従来より、果樹・野菜・花卉等の高付加価値作物を主たる対象とした農薬販売事業を欧州を中心に展開していたが、欧州では有機栽培面積の増加に伴い体系的かつ環境への影響の少ない病害虫防除を目指すIPM (Integrated Pest Management)が益々重要となって来ており、こうした動きに対応して、欧州のみならず米国も含めた全世界へのIPM展開を図るもの。
2)米国 Advan, LLC
2005年にCertis USA 50%、Sipcam Agro USA(イタリアの農薬大手 Sipcam-Oxon Groups子会社) 50%出資で設立。
両社の米国事業の販売部門のみを切り離して統合したもので、生物農薬と化学農薬の最適組み合わせを求める顧客の要望にこたえる体制をつくる。(Sipcamは殺菌剤などを販売)
製造や許認可、登録などの業務はそれぞれの製造部門で継続する。
3)欧州 Certis Europe B.V
上記のThermo Trilogy買収に伴い、2001年に欧州統括会社として、三井物産 70%、日本曹達 15%、Crompton 15% の出資で設立した。
Thermo Trilogyのフェロモン関連商品の英国子会社AgriSenseや、三井物産が1999年に買収した英国の天敵資材メーカーのBCM(Biological Crop Protection) などを傘下に置く。
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なお、三井物産は2002年に、アグロカネショウとの50/50JVのセルティスジャパンを設立した。
アグロカネショウは以前からBT農薬を手掛けていたが、生物農薬の登録取得・維持管理及び販売を目的にJVを設立したもの。
4)欧州 Spiess Urania Chemicals GmbH
同社はドイツの農薬メーカーで、銅を原料とした殺菌剤を自社製造するとともに、他社の除草剤、殺虫剤、殺菌剤、農業資材を販売。
1999年にUrania Agrochem GmbH と Spiess & Sohn GmbH & Co.が合併したもので、ドイツの大手銅精練会社Nord Deutsche Affinerie が60%、Spiess一族が40%保有していた。
Nord Deutsche Affinerieがコア事業への集中戦略で農薬事業の売却を決め、2003年に三井物産が80%を買収、2004年に残り20%を買収して100%子会社とした。
日米メーカーからの新規薬剤をSpiess Urania の販売網にも積極的に導入し、ドイツに於ける更なる販売基盤の強化を図ると共に、ポーランドやハンガリー等にも進出している。
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特許切れ農薬の世界第一位はイスラエルのMakhteshim Agan Industries で、第二位は豪州のNufarm Limited 。
本年4月に住友化学がNufarm Limitedの20%を取得、7月以降、農薬の相互販売を始めている。
2010/1/4 住友化学、豪州農薬メーカー Nufarm と包括的業務資本提携へ
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