富士フイルムは8月30日、国内で細胞再生医療材料事業を展開するジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)による40億円の第三者割当増資を引き受けると発表した。増資引き受け後は、同社株式の41%を保有することとなる。
再生医療は、人工臓器や移植による治療に代わり、失われた組織や臓器を再生させることが可能な、有望な治療法として注目されている。
自家細胞を用いた再生医療をさらに発展させるには三要素を最適に組み合わせながら進化させていく必要がある。
(1)分化・増殖して人の組織となる「細胞」
(2)細胞の分化・増殖を誘導する増殖因子などの「サイトカイン」(細胞から産生される蛋白質)
(3)細胞が正常に生育・増殖するために必要な「足場」(細胞外物質)
富士フイルムは、コラーゲンなどの高分子材料に関する知見やノウハウと、素材を微粒子化・多孔化する成型技術などを応用し、「足場」の素材に求められる生体適合性、生分解性、機械強度などの性能について研究を進め、遺伝子工学を応用して、生体適合性に優れるコラーゲンをモデルとしたリコンビナントペプチド(RCP)とその量産技術を開発した。
このRCPを「足場」材として、細胞と組み合わせた再生医療材料に展開を図るため、「細胞」/「サイトカイン」を用いた培養技術に秀でたJ-TECと強固な関係を結び、研究開発を加速させる目的で資本提携を行うことを決定した。
富士フイルムグループは、医療関連の事業を重要な成長分野として位置付け、「予防~診断~治療」の全領域をカバーする総合ヘルスケアカンパニーを目指した事業展開を進めている。
2010/2/22 富士フイルム 医薬品開発・販売に本格参入
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J-TECは日本における再生医療のパイオニアで、細胞培養に優れた独自の技術を保有し、自家培養表皮の製造販売承認を取得するなど、国内で細胞再生医療材料事業を実施する唯一のバイオベンチャー企業。
1999年 2月、株式会社ニデック(事業内容:眼科医療機器の開発・製造・販売、自家培養角膜の研究)が母体となり、INAX、富山化学工業ならびにセントラルキャピタル(現、三菱UFJキャピタル)と共同出資し、ティッシュ・エンジニアリングを技術ベースに再生医療を事業領域とする企業として愛知県蒲郡市に設立した。
J-TECは再生医療製品および関連製品の研究・開発、製造、販売を主要な事業目的として、薬事法の適用を受ける再生医療製品事業と、薬事法の適用を受けない研究開発支援事業を展開している。
(1)再生医療製品事業 | ||
: | ① | 自家培養表皮 |
正常な皮膚から増殖能力が優れた表皮細胞を取り出して人工的に培養し、皮膚のようにシート状にしたものを受傷部位に移植する培養表皮移植の技術 | ||
* 2007年10月、自家培養表皮(販売名:ジェイス)の製造承認を取得 | ||
* 2009年1月1日から保険適用 | ||
② | 自家培養軟骨 | |
軟骨組織はケガなどで一度損傷を受けると自然には治らない組織。 (軟骨組織には血管がなく、損傷を受けても、それを治すための細胞も、細胞を増やすための栄養も供給されないので、軟骨は自然治癒しない。) 軟骨細胞には増殖する能力があるため、患者の軟骨組織の一部を取り出し、軟骨細胞が増殖できるような環境を整えて作るのが自家培養軟骨。軟骨欠損に自家培養軟骨を移植することで修復が期待される。 | ||
* 2009年8月、製造承認申請 | ||
③ | 自家培養角膜上皮 | |
角膜のもととなる細胞は角膜輪部(瞳の周辺の部分)に存在し、ここから新しい角膜ができる。 角膜に重度の障害を受けた場合、わずかでも正常な輪部が残っていれば、その輪部組織から角膜上皮細胞を分離・培養することにより自家培養角膜上皮をつくり、これを移植する。 | ||
* 2003年イタリアのThe Veneto Eye Bank Foundationから技術導入 日本を含むアジア全域の国での当該ノウハウを独占的に使用し製造販売する権利 | ||
(2)研究開発支援事業 | ||
J-TECでは、医療用培養表皮や培養軟骨の開発で蓄積した高度な培養技術を応用して、研究用ヒト培養組織(ヒトの細胞を用いて体外で培養し、再構築させた組織)モデルを開発し、販売している。 ヒト組織に極めて近い構造を再現できるため、動物や単純な培養細胞の代替とな る種々の実験への適用が可能で、外用医薬品や化粧品の開発、皮膚を用いた各種研究に使用することができる。 | ||
・ | LabCyte EPI-MODEL(ラボサイト エピ・モデル) | |
ヒト正常表皮細胞を重層培養したヒト3次元培養表皮モデル (実験動物による皮膚刺激性試験の代替材料) | ||
・ | メラノサイト含有ヒト3次元培養表皮 LabCyte MELANO-MODEL( ラボサイト メラノ・モデル) | |
ヒ ト正常表皮細胞にメラノサイト(色素細胞)を加えて3次元培養したラボサイト メラノ・モデル。 (薬剤・UVなどの各種刺激により、培養中のメラノサイト増殖やメラニン産生誘導を確認できる) | ||
・ | ヒト3次元培養角膜上皮 LabCyte CORNEA-MODEL (ラボサイト 角膜モデル) | |
ヒト正常角膜上皮細胞を重層培養したヒト3次元培養角膜上皮モデル (化合物の眼刺激性試験に加えて、角膜上皮の分子生物学的解析に利用) | ||
* 2010年7月 発売開始 |
目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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