メキシコ湾原油流出事故の状況

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メキシコ湾原油流出事故の現場では8月3日にキャップからの掘削泥水の注入を終え、異常が見られないため、5日9時にキャップからのセメントの注入を始め、午後2時に終了した。

この時点では、8月中旬に井戸の底部にリリーフ井戸からセメントを流し込み(Bottom kill)、井戸を上下から封鎖する予定であった。

2010/8/6  メキシコ湾油井封鎖作業の状況

しかし、流出事故対策本部のアレン本部長は8月19日の会見で、Bottom kill が予定より数週間遅れ、9月上旬以降になるとの見通しを明らかにした。
圧力テストのほか、油井の上部に設置されていたが、故障して原油やガスの噴出を防げなかったBOP(噴出防止装置)を取り外して交換し、事故原因の究明に役立てる作業などを行うため。

BOPを取り外して交換する作業は荒天のため8月30日に中断した。
(BOPとそれを引上げるための1マイルのライザーは455トンもあり、揺れると危険)

9月2日、BOPの上につけたキャップを取り除き、BOPにライザーを取り付けた。
9月3日の夜
<p>HTML clipboard</p>、古いBOPを外して、新しいBOPを据え付け、4日夜、古いBOPを船上に引き上げた。

今週にもリリーフ井戸からセメントを流しこんでBottom killを行うが、新しいBOPの据付で圧力の変化に対応できる。
(井戸に約1,000バレルの原油が閉じ込められていると見られるが、下部をセメントで封鎖すると、下からの圧力で上部のセメントのプラグが壊れ、原油が流出する可能性があった。)

アレン本部長は、井戸からの原油流出の危険はなくなったと述べた。
7月15日にBOPにキャップを取り付け、ラムを閉めて原油流出を止めた以降、原油は流出していない。

引上げたBOPは重要証拠となっており、政府の調査員が分解してトラブルの原因を調べる。

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9月2日、メキシコ湾で別の石油施設の爆発事故があった。

石油施設はMariner EnergyのVermilion 380で、ルイジアナ州バーミリオン湾の南約145km、BPの爆発現場の西方約320kmに位置し、水深104メートルの油井を通じて原油を生産しているが、爆発当時は整備のため閉鎖されていた。
作業中の13人は全員無事救出され、原油流出も確認されていない。

このリグの生産量は原油が日量約1400バレル、天然ガスが約920万立方フィート。

米国の独立系石油会社Apache Corporationは本年4月にMariner Energyを約27億ドル(プラス12億ドルの負債引継ぎ)で買収すると発表している。

2010/7/22  BP、北米とエジプトの石油資産をアパッチに売却 参照

オバマ政権は500フィート(150メートル)を超える海底油田掘削を11月30日まで禁止しようとしており、現在これをめぐり訴訟が起きている。同州の知事はメキシコ湾での石油掘削再開を連邦政府に要求している。

今回の事故は規制対象外だが、事故により規制が拡大する可能性もある。

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BPは原油流出事故の補償コストをカバーする200億ドルの基金Gulf Coast Claims Facility (GCCF)を創設、当初の予定を早め、8月9日に最初の30億ドルを払い込んだ。

これまで個人や企業に対する補償支払いはBPが行っていたが、8月23日からは基金が行う。政府に対する補償支払いは従来どおりBPが行う。

BPは9月3日、原油流出事故に絡む費用負担額が約80億ドルに達したと発表した。
6月末時点での負担額は29億ドルだったが、油井の封じ込め作業などの費用がかさんだことで、負担額は2カ月間に2倍以上に膨らんだ。

負担額には、原油の回収費用や油井を封じ込めるための一連の作業費、地元州への賠償費用などが含まれる。

 


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