豊田通商と近畿大学は9月10日、クロマグロ完全養殖事業での技術協力提携を締結したと発表した。
同時に、豊田通商は、長崎県五島市に、世界初の完全養殖種苗の中間育成会社「ツナドリーム五島」を設立した。
協業の内容は:
1.近畿大学からツナドリーム五島への完全養殖クロマグロ人工孵化種苗の提供
2.ツナドリーム五島でのクロマグロ種苗の中間育成に関する諸技術の指導
ツナドリーム五島は、長崎県五島福江島で、中間育成用の海上イケスを設置し、近畿大学から完全養殖クロマグロの人工孵化種苗及びクロマグロ種苗育成ノウハウの提供を受け、天然ヨコワの漁獲サイズにまで育成する。
従来型養殖
捕獲天然ヨコワ→(養殖)→出荷サイズ
・乱獲による天然資源減少の恐れ
・ヨコワ漁獲量が不安定→経営不安定
今回の完全養殖
近畿大学: 育成親魚→(産卵)→卵→(孵化・陸上育成)→稚魚(約6cm) ツナドリーム五島: 稚魚→(沖出し・中間育成)→ヨコワ(約25~30cm/500~700g) 養殖業者: 養殖ヨコワ→(養殖)→出荷サイズ
近畿大学は、1948年に和歌山県白浜町に水産研究所を開設、1970年からクロマグロの養殖に取り組んでいる。
1979年には天然稚魚から飼育した親魚が世界で初めて産卵し人工孵化・飼育に成功、2002年には人工飼育した親魚が産卵する世界初の完全養殖技術を達成した。
これまで、養殖したクロマグロの卵から人工ふ化させ、成魚まで育てることには成功していたが、卵を産むには至っていなかった。
2007年、国内の養殖業者へ人工孵化稚魚(ヨコワ)を約1,500尾出荷し、2009年にはその生産尾数を約40,000尾に拡大したが、さらに生産尾数を拡大していくには、学外のパートナーとの協力が不可欠と判断した。
豊田通商は、コア分野である自動車分野に加え、非自動車分野を強化することにより、バランスの取れた収益構造を目指している。
食料分野では、2008年には農業生産法人を立ち上げ国内農業生産事業へ参入したが、今回、クロマグロの完全養殖事業への参入を決断した。
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日本が大量に漁獲している太平洋のクロマグロは、産卵能力のある大きな魚が減るなど資源状況が悪化しているとの分析結果を三重大の勝川俊雄准教授らがまとめた。
大型の魚の乱獲が進んだ結果、3歳以下で成熟前の小さな魚や産卵前の魚が漁獲の対象になるという、悪循環が進んでいるとみられる。
日本は太平洋クロマグロの70%超を漁獲しており、うち約55%は巻き網。近年は、若い魚を漁獲していけすで育てる蓄養向けも増加傾向にある。
漁獲数でみると、0歳の魚が占める割合は、60年代は約60%だったが2000年以降は70%超に上昇、最近は0歳と1歳の魚を合わせると90%を超えていた。
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水産庁は本年5月、日本の漁獲量が7割を占める太平洋産クロマグロの資源管理指針を発表した。
ヨコワやメジマグロと呼ばれる稚魚を含め、未成魚の漁獲制限を強化し、産卵する親魚の資源量を安定させることが主な内容で、具体的な資源回復計画を2010年度中に策定、11年度からの実施を目指す。
中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の「北小委員会」が9月7日から福岡市で開かれ、日本近海を含む太平洋クロマグロの2011~12年の漁獲規制案をまとめて10日に閉幕した。
引き縄など沿岸の零細漁業を除き、3歳以下の若齢魚の規制を強化し、日本は漁獲量を2002~04年水準より3割減となる。
韓国は2割程度減らすことになるが、「国内での協議が必要」などとして勧告案を留保した。
WCPFCは12月の年次会合で採択を目指すが、韓国の動向が焦点となる。
参考 2010/3/20 ワシントン条約締約国会議、大西洋クロマグロ禁輸案を否決
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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