カスピ海の天然ガス、黒海経由で輸出へ

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ルーマニア、アゼルバイジャン、グルジアの3国は本年4月、覚書を締結、均等出資でAzerbaijan-Georgia-Romania Interconnector (AGRI)を設立し、カスピ海の天然ガスをLNGにして黒海経由でEUに送る計画のFSを行うことで合意した。

その後、ハンガリーがこれに参加することとなり、913-14日に4カ国の首脳が集まり、AGRI LNG Companyの設立を決めた。ハンガリー参加後は出資比率は25%ずつとなる。今後、トルクメニスタンなどの参加の可能性もある。

AGRI LNG Companyはルーマニア企業として設立される。
当面の出資は、
ルーマニアの国営 Romgaz、グルジア国営の Georgian Oil and Gas Corporation (GOGC)、アゼルバイジャン国営のState Oil Company of Azerbaijan Republic (SOCAR)

今後6ヵ月で事業化調査を進める。ガス供給量は年80億m3の計画で、建設には4年掛かり、建設総額は予備的に45億~120億ユーロと見込まれている。

計画内容は以下の通り。

1) アゼルバイジャンのカスピ海沿岸のシャーデニス鉱区などの天然ガスを既存のパイプラインでグルジアを経由、黒海東岸のKuleviのアゼルバイジャン所有の石油ターミナルに送付。(既存のガスパイプラインを補強、Kuleviまで短距離を延長)

Kuleviはアゼルバイジャン所有の石油輸出基地で、扱い能力は年20百万トン、鉄道やタンク、2つの桟橋を持つ。

   
2) Kuleviで天然ガスを液化。

液化能力は25m3でスタート、第二段階で80m3に上げる。
最終的には
200m3を目指す。

   
3) LNGをタンカーでルーマニアConstanta港に輸送。(小さなLNGタンカーでシャトル輸送)
   
4) Constanta港でLNGを再びガス化し、ルーマニアのパイプラインに乗せ、一部はルーマニアで消費する。
   
5) ルーマニアArad とハンガリーSzegedの短距離をパイプラインで接続してハンガリーのパイプラン網に乗せ、同国やオーストリアで消費、更にはEU諸国に輸出する。

アゼルバイジヤンなどガスピ海周辺のガス産出国はロシアが中心だった供給先を欧州に広げ、価格交渉力を高める。

アゼルバイジャンやトルクメニスタンなどカスピ海諸国はすでに欧州向けのNabucco Pipelineによるガス供給計画を検討している。これに並行してLNG輸出を進め、輸送手段を多様化する。

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Nabucco計画はカスピ海地域の天然ガスをトルコ、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー経由でオーストリアまで輸送する延長3300kmのガスパイプラインプロジェクトで、ロシアの天然ガス依存度を減らしたいEUが主導している。

2005年にオーストリアのOMV、ハンガリーのMOL、ルーマニアのTransgaz、ブルガリアのBulgargazとトルコのBotasが各16.67%出資のJVNabucco Gaspipeline International を設立した。

2011年建設開始、2014年操業開始の予定で、トルコ、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、オーストリアに年間310億m3の天然ガスを送付する。建設費は当初は50億ユーロの予定であったが、79億ユーロに上昇している。

本年6月、トルコとアゼルバイジャンがアゼルバイジャン産天然ガスの供給をトルコが受けることで覚書に署名した。
アゼルバイジャンのカスピ海沖で
のシャーデニス天然ガス田の第2期開発で生産するガスを、トルコが欧州など他国へ再輸出する権利を持つことを明記した。

シャーデニスの第2期開発は2016年に年間160億立方メートル規模のガス産出が見込まれ、ロシアは全量を買い取ると手を挙げていた。
アゼルバイジャンはロシアの影響力拡大を警戒、欧米の後押しもあってトルコへのガス供給を決めた。

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これに対し、ロシアは天然ガスをウクライナやベラルーシを通るパイプラインでEU各国に供給しているが、両国とは紛争を起こしている。

2007/1/10 ロシア・ベラルーシ 石油抗争

このため、ロシアは2つの欧州向けの天然ガスパイプラインを計画している。

一つはノルド・ストリームで、サンクトペテルブルク北方のビポルクから独北東部グライフスバルトまで、バルト海海底約1200キロを結び、年間最大550億立方メートルの天然ガスを供給する。

2005年9月、ガスプロムとドイツの電力会社E.On、及びBASFの関連会社の3社が契約文書に調印した。
Gazprom 51%
Eon 24.5%BASF子会社Wintershall 24.5%の出資で、現在建設中。

もう一つがSouth Streamで、ロシアと中央アジアの天然ガスを黒海海底パイプライン(900km)でブルガリアまで運び、複数経路でイタリア、オーストリアに輸送するもの。

2008年にGazpromとENIが均等出資でSouth Stream AGを設立した。
2015年の稼動を目指し、当初は年間310億m3、最終630億m3の輸送を計画している。
ブルガリア、ハンガリー、セルビア、ギリシャと政府間協定締結済み。

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このほか、トルコとギリシャ、イタリアを結ぶITGI Interconnector Turkey-Greece- Italy)も検討されている。
アゼルバイジャン等の天然ガスをアドリア海横断のパイプラインでイタリアまで輸送するもの。

トルコーギリシャ間はトルコのBotasとギリシャのDEPAが、ギリシャーイタリア間はイタリアのEdisonとギリシャのDEPAが契約を締結している。 

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上記のうち、ノルドストリームはシベリアの天然ガスであるが、他は全て、中央アジアの天然ガスを狙ったもので、量的にも全てが実現することはなく、計画実現に向けた競争は一段と激しさを増す。

また、天然ガス価格は低迷しており、供給過剰感も強く、事業採算に合うかどうかという問題もある。


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

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