化学プラントが集中するタイ東部のRayong県Map Ta Phut工業団地で地元住民と環境保護団体が、昨年来凍結されていた事業のほとんどの再開が認められたのに抗議するため、9月30日に抗議集会を開く見通しとなった。
工業団地の封鎖を図る可能性があり、同工業団地を管轄するタイ工業団地公社は警戒態勢を最高レベルに引き上げた。
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タイ中央行政裁判所は2009年9月、同国東部のRayong県Map Ta Phut地区で計画されている石油化学などの76事業について、違憲の訴えの最終判決を下すまで一時凍結するようタイ政府に命じた。
2007年の憲法改正で、従来の環境影響アセスメント(EIA)に加え、健康影響アセスメント(HIA)と公聴会が必要とされるようになったが、政府がHIAを見る独立機関を設置していないため、HIAは実施しておらず、同地区の住民と環境保護団体がPTTなどの事業が憲法の要件を満たしていないとして行政裁に建設中止を求めていた。
急激な重工業化にともない同地区と近隣一帯で、住民たちは十数年前から大気や水汚染による環境・健康被害を訴えてきた。1990年代末には悪臭騒ぎで学校が避難・休校となり(数年後に移転)、「マプタプット公害問題」が全国でも知られるようになった。
タイ政府は10月2日、凍結命令の取り消しを最高行政裁に求めたが、タイの最高行政裁判所は12月2日、76計画のうち11計画(後に更に1計画)のみ、環境上の問題がないとして建設を認めたが、残り64計画については政府指名の委員会による調査の間、凍結されることとなった。
三菱レイヨンは12月16日、この影響で、建設中のタイMMAのMMAモノマー増設工事(第二系列 9万トン)を一時凍結したと発表した。
2009/12/4 タイ最高行政裁判所、マプタプットの石化計画などの凍結を継続
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政府は2010年8月31日に開いた閣議で、国家環境委員会(委員長・アピシット首相)がまとめた天然資源環境省通達を承認した。
現行憲法が定めるHIAおよびEIA、地域住民への公聴会、独立機関による審査を必要とするプロジェクトの要件を明確に定めた法令が初めて規定されることになった。
その中で、「環境に影響を与えかねない事業」のリストを作成し、次の11事業を審査の対象とすることとした。
(1)海の埋め立て(48ヘクタール以上)
(2)鉱山
(3)工業団地、工業用地開発
(4)石油化学の上流・中流事業
(5)精錬、鍛造
(6)放射性物質の製造、廃棄
(7)廃棄物処理
(8)空港(滑走路3000メートル以上)
(9)港湾
(10)ダム、貯水池(貯水量1億立方メートル以上、もしくは面積15平方キロ以上)
(11)発電所
リスト内に各業種で環境アセスメントが必要となる事業の内容、規模などが規定されている。
中央行政裁は9月2日、一連の施策により「違憲」状態は解消されたとして、「11事業以外は再開可能」との判断を示した。
Map Ta Phut 地区で凍結されていた64件のうち、日系企業8件を含む62件が再開を認められる。
新日本製鉄や住友商事ら日本側71.5%、タイ側28.5%出資のブリキメーカー、Siam Tinplateは9月16日、操業再開許可を受け取った。
政府は9月17日までに61の事業に続行を許可する文書を送付した。
実際には中央行政裁はこれまでに64件のうちの15件の再開を承認しており、49件が残っていた。
(中央行政裁は本年5月に、旭化成/PTT/丸紅のPTT Asahi Chemical のアクリロニトリルとACH法MMA計画及びPTT Chemical子会社Thai Ethanolamines の計画の再開を承認している。)付記
宇部興産は建設を進めていたナイロン6樹脂の増設新設備(5万t/年)を本年10月より段階的に商業生産を開始すると発表した。
この設備は、行政訴訟に伴い一時停止対象となっていたが、タイ中央行政裁判所が事業再開を認めたことを受け、当初計画より1年遅れての操業開始となった。
環境に悪影響があるとして凍結が継続されるのは次の2件。
・PTT Chemical の子会社TOC Glycol.のEO、EG 計画
・Siam Cement GroupのThai Plastic & Chemical のVCM計画
PTT Chemical 自身のHDPE(50,000t)、子会社Bangkok Polyethylene のHDPE(250,000t)、JVのエタノールアミン(50,000t)などは操業が認められた。
(石化事業で上記2件のみが凍結された理由は不明)
今後、上記の2件は新たに設けられた環境面の審査に進む。
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NGOと地域住民は政府が規定した「有害産業活動11業種」に反発し、リストの見直しを要求、対応によっては工業団地への妨害活動に踏み切ると発表した。
規制業種リストは政府の作業部会が住民らと話し合って決めた段階では18業種が対象だったが、このうち7業種を政府が勝手にリストから外し、住民側が不満を強めている。
マプタプット問題の解決に取り組むアナン元首相も、「解決委員会では18業種を提案していた。どのような理由で11業種にしぼられたのか詳しい説明を求めたい」とし、「プロジェクト再開で公害問題が悪化した場合、政府は被害の全責任を負うべき」と訴えている。
大手環境団体も、「NGOや有識者の意見を聞くこともなく、公聴会も実施されずに規定されたリストには納得がいかない。住民との摩擦が悪化するばかり」とし、アピシット首相にリストの早急な見直しと差し替えを求めた。
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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