フランスの医薬品メーカー、Sanofi-aventis は8月29日、遺伝性疾患治療薬で世界最大手の米Genzymeに対する185億ドルの買収提案を公表した。
提案買収価格は1株当たり69ドルで、7月1日の株価に対して38%、噂の出た7月22日の前日までの1ヶ月平均に対し31%のプレミアムとなっている。2010年の同社の予想1株当たり利益の36倍になるとしている。
Sanofi-aventisでは必要な資金の手当ては出来ているとしている。
Sanofi-aventisは7月29日にGenzymeに対し非公開で買収を提案した。
しかし、協議に入れないため、Genzymeの株主に提案を説明するため公開したとしている。
買収を完了させるために「あらゆる選択肢を検討する」としており、敵対的買収も辞さない構えを示した。
Sanofi-AventisはHoechstと Rhone Poulenc が合併してできたAventisと、フランスのSanofi-Synthelaboが2004年に合併したもの。
(2006/3/6 「世界の医薬会社の構造改革」参照)
Sanofi-aventisは、売上高の約20%を占める製品が2013年までに特許権切れとなり、ジェネリックメーカーとの競争に直面するため、Genzyme買収に動いた。
Genzyme はMassachusetts州Cambridgeを本拠とするバイオ医薬メーカーで、希少な遺伝病、腎臓病、整形外科関係、癌、移植、免疫疾患、遺伝子診断などを扱っている。
Sanofi-aventisでは、統合により、Genzyme の新しい治療法への投資促進、既存市場での拡販、新規市場への進出が可能になるとしている。
報道によると、Genzyme は資産査定開始の条件として少なくとも1株75ドルの提示を求めている。一部の株主は1株80ドルへの提示価格引き上げを主張しているという。
Genzymeは8月29日に取締役会を開き、満場一致で拒否を決めた。
他方、Sanofi-aventisの取締役会は1株当たり最高70ドルの提案を支持しており、これを上回る買収価格を提示することに消極的で、ほかの標的を検討する可能性があると報じられている。
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Genzymeは1981年に設立された。設立以来、いくつかの分野で、これまで治療法のなかった病気の患者に対し、多くの画期的な治療法を開発した。2009年の売上高は45億ドル。
下記の幅広い分野で製品を開発している。
遺伝病:ゴーシェ病、ファブリー病など
心血管代謝症、腎臓
バイオサージェリー:バイオテクノロジーと外科療法を融合させた新しい治療概念
血液癌科
遺伝子診断
その他
ジェンザイム・ジャパンは、1987年に創立され、診断から治療までを1つのコンセプトに、バイオ医薬品、バイオサージェリー、血液領域、遺伝子診断事業の4つの事業を展開している。
バイオ医薬品:ライソゾーム病治療薬
ライソゾーム病は、細胞のライソゾーム内に存在する酵素の活性が遺伝的に欠損または低下しているため、その酵素によって分解されるべき糖や糖脂質などが分解されずに体内に蓄積し、その結果、進行性の臓器障害や骨格障害などを呈する難治性の疾患。ライソゾーム内には数十種類の酵素が存在し、その酵素の数だけ疾患があるといわれている。
バイオサージェリー
既存の外科的手法にバイオマテリアルや遺伝子治療、細胞治療を取り入れることにより、包括的な外科的治療を提案。
血液領域事業部
再生不良性貧血および造血幹細胞移植の治療薬として、免疫抑制剤「サイモグロブリン点滴静注用」を発売。
遺伝子診断
1992年に事業を発足、全国の医療機関から検査を受託している。
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