ロシア、北極圏開発で姿勢転換、協調姿勢に

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豊富な資源が眠る北極圏で、強硬に自国の領有権を主張してきたロシアが最近、関係国との協調姿勢に転じている。
 

ロシアとノルウェーは9月15日、北極圏のバレンツ海と北極海で40年にわたり争ってきた大陸棚の境界を画定し、同地域での天然ガスや石油など資源探査・採掘、漁場資源開発でも協力する条約に署名した。(4月27日に基本合意)

約17万5000平方キロの係争海域を2等分する。

ロシアは2016年をめどにバレンツ海でShtokmanガス田の生産開始を計画しているが、現時点で氷の下に埋蔵されている資源の採掘技術を持たないため、北極圏の資源開発の経験があるノルウェーの資源大手Statoil などの技術が欠かせないといわれる。

メドベージェフ大統領は会見で、ノルウェーとの共同資源開発に期待を示した。

 

 

 

 

 

 

 

 


ロシアは2004年10月、ソ連時代から係争してきた中国との東部国境画定にあたり、国境の川の島をほぼ2等分することで最終解決しており、今回も同様の手法を採用した。

アルグン川のボリショイ島(中国名:阿巴該図島)は中露両国に分割。
アムール川とウスリー川の合流点のタラバーロフ島(中国名:銀龍島)の全域と大ウスリー島(中国名:黒瞎子島)の西半分は中国に、大ウスリー島の東部はロシアに帰属。

なお、1969年3月2日、極東のウスリー川の中州・ダマンスキー島(珍宝島)で、ソ連側の警備兵と中国人民解放軍兵士による衝突が起こった。これについては1991年中ソ国境協定が結ばれ、双方が管理下にあると主張してきたダマンスキー島は中国に帰属することが合意されている。

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ロシアのプーチン首相は9月23日、モスクワで開いた北極圏に関する国際会議で演説し、関係各国と平和的にエネルギー開発を進める考えを示した。

首相は以下のように述べた。
・北極圏での資源を巡る争奪戦の懸念があるとの予測があるが、全く根拠がない。
・領有権問題は話し合いや国際法に基づき解決できる。
・各国の主張が異なる権益は、最終的に国連が管理するだろう。
・外資の導入を歓迎する。

ロシアは2007年に潜水艇で北極点の海底を探査し、国旗を打ち立てるなど、同地域での権益拡大に乗り出していた。

1994年に発効した国連海洋法条約は、自国沿岸から2002カイリまでを排他的経済水域(EEZ)として資源開発ができると規定している。
それを超える海底では自国領の大陸棚から地形・地質的につながることを証明し、国連の「大陸棚限界に関する委員会」の認定を受ければ開発が可能となる。

ロシアは北極海の海底山脈
Lomonosov Ridge(下の地図の茶色の太線:ロシア領としては北極①から③まで)など120万平方キロ(斜線部分)を自国につながる大陸棚として申請している。

北極圏にはこれまで、地球上の未発見資源の4分の1が埋蔵されているとされてきたが、厳しい気候と厚い氷が開発の障害になってきたため、大きな領有権問題になっていなかった。
ところが地球温暖化により夏季の氷が減ったことで開発熱が高まった。

参考 2010/9/1  北極海横断航路で初輸送

     地図はBBC News (August 2, 2007)

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但し、北方領土問題については別のようだ。

中国訪問中のロシアのメドベージェフ大統領は9月27日、胡錦濤国家主席と北京で会談、第二次世界大戦終結65周年を記念する共同声明を作成、9月28日発表した。

声明は「日本の中国侵入」に言及しつつ「歴史の歪曲を断固非難する」との文言を盛り込んだ。

中ロは第二次大戦の歴史を改竄し、ナチスや軍国主義分子およびその共犯者を美化し、解放者の顔に泥を塗る企みを断固非難する。国連憲章およびその他の国際文書によってすでに第二次世界大戦への定論が打ち出されており、その改竄は許されない。

メドベージェフ大統領は9月26日、旅順港を訪れ、日露戦争や第二次大戦で旧日本軍と戦った兵士の墓地に献花した。中露の元兵士らと面会して「歴史をねじ曲げようとする勢力がいるため、真実を主張しなければならない」と訴えた。

メドベージェフ大統領は9月29日、北方領土を含むクリル(千島)列島について、「わが国の重要な地域だ」と述べ、北方領土を必ず訪問すると明言した。
大統領は29日にサハリン本島から国後、択捉両島を訪れる計画であった。
日本側は「両国関係を著しく損なう」として外交ルートなどを通じてロシア側に警告していた。

 


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