日本の丹羽宇一郎・駐中国大使が中国政府の実施しているレアアースの輸出制限について、協調して緩和を要請するよう米国、英国、ドイツ、フランス、韓国など主要国の駐中国大使に呼びかけたと報じられた。
中国商務省の姚堅報道官は10月15日、「レアアースの採掘、加工、輸出に対する中国の管理措置は国際ルールとWTOの規則に合致するものだ。中国は希土類金属の輸出を封鎖手段にしない」と述べた。
「中国で、これまでのレアアースの採掘と利用が規範化されていなかったため、大きな環境問題を引き起こした。
最近、国内の法律と法規に基いて、レアアース産業に対する必要な管理と制限を行った。
その目的は環境保全や持続可能な発展を実現させることにある。」
「中国はレアアースの輸出を封鎖手段にせず、協力や発展、共栄の中でレアアース資源における互恵協力を実現させることを希望する。また、国際協力を通じてこの再生不可能な資源を管理していきたい」と述べた。
温家宝総理は先のヨーロッパ訪問で、「中国はレアアースに対する管理を強化する必要があるが、世界の需要を考慮し、レアアースを駆け引きの手段とはしない」と明確に宣言した。
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10月19日付のChina Daily は商務部担当者の発言として、中国が来年のレアアース輸出枠を最大30%削減すると報じた。
このままの生産が続けば、(ネオジムやジスプロシウムといった)中重希土類は15~20年で枯渇する恐れがあるとしている。
輸出許可枠
2009 2010 削減率 上期 25千トン 22千トン 下期 25千トン 8千トン 7割 年間 50千トン 30千トン 4割
付記
米ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は10月19日、中国がハイテク製品の製造にとって重要なレアアースの禁輸を米国や欧州にも拡大している、と報じた。
商務部対外貿易司の王受文司長は20日、「中国は米日欧向けのレアアースの輸出を止めていない。来年の輸出枠については現在検討中だ」とコメントした。
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最近の中国紙はこの問題を頻繁に取り上げている。主な主張は以下の通り。
・ | 悔やまれる「白菜と同じ値段」のレアアース |
中国のレアアースの可採埋蔵量は全世界の43%を占め、世界第一位である。 中国は1972年にレアアースの多段抽出理論及び新たな加工技術の研究を開始した。 しかし、埋蔵量と分離技術が最も進んだ中国には、レアアースの価格決定権がない。 密輸、外国による買い溜め、国内採掘権の混乱などが、中国のレアアース価格決定権の部分的な喪失を招いた。 特許権により私営企業のレアアース採掘を制限することを考えなかったため、レアアース業界における悪い競争が引き起こされた。 過去10数年間には、中国のレアアース酸化物の価格は1トンあたり数千元、1キロあたり数元程度で、「白菜と同じ値段」とも言われていた。
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・ | レアアースの備蓄戦略は必須 |
中国のレアアースは、採掘量は多いが、中国の利用率は低い。
2008年の採掘速度でいけば、中央鉱床・東鉱床は25年以内に掘り尽くしてしまう。 この時、米国は世界第一位のレアアース大国となり、レアアースの価格が100倍、1000倍にも高騰する可能性がある。
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・ | レアアース業界の発展には規範化と管理が必要 |
レアアースは再生不可能な希少資源で、先端技術や国防技術の原材料としては欠かせないもの。中国は世界の30%のレアアース埋蔵量で、世界の90%以上の需要に応じており、これを長期的に継続するのは難しい。 中国のレアアースは長年、低価格で輸出され、早い時期から数多くの環境問題を引き起こしており、レアアース産業の早急な規範化が求められている。 中国政府はレアアースの持続可能な発展を維持するため、レアアースの生産と輸出の管理強化に踏み切ったが、目的は環境保護や持続可能な発展を実現することにあり、中国の発展に対する責任であると同時に、世界の発展に対する責任でもある。 | |
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・ | 大畠章宏・経済産業相は最近、中国の日本向けのレアアース輸出について「正常な水準にまで戻っていない」と語ったが、これまでのような大量かつ無秩序な、廉価での輸出を指すのであれば、そのような「正常な水準」に戻ることは二度とないだろう。 |
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