双日は11月24日、豪州のLynas Corporation との間で、レアアースの日本向け供給、およびLynas のレアアース拡張プロジェクトに関して、戦略的提携を締結することに基本合意したと発表した。
Lynas のレアアース開発プロジェクト(西オーストラリア州Mt. Weldでの鉱山開発、 およびマレーシアでの分離精錬)は、2011年第3四半期より操業を開始する予定。
両社は、以前よりLynasのレアアースの日本向け取引の可能性を協議しており、その過程において、Lynasは今後のレアアース需要増大に対応するため、本プロジェクトの拡張プロジェクト(投資総額:2億5千万米ドル)を前倒しすることを決定した。
今後、双日を日本における販売代理店とし、同鉱山の操業後10年に亘り日本の需要家のニーズに適合するレアアースについて年間約9,000トン以上の長期供給契約の締結に向けた交渉を行うとともに、日本でのレアアースの最終需要家の開拓を目的した共同マーケティングの実施、ならびにファイナンス組成などについても検討を進める。
また、今後、本プロジェクトの開発に関して、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)への金融支援の要請を行う予定。
官民合わせた日本グループの投融資額は最大2億5000万ドルになる見通し。
双日では、今回の交渉は権益の取得を含んでいないが、将来的に権益取得のためにLynasの一部株式を取得することもオプションの1つとしている。
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Lynasは、1983年にYilgangi Gold NLとして設立され、1985年にLynas Gold NLに改称し、西オーストラリア州Pilbara地域で金探鉱を行っていたが、2001年6月、金プロジェクトを売却し、社名をLynas Corporation に変更、2002年5月にMt.Weld 鉱床の権益100%を取得し、同鉱床の探鉱開発に集中していった。
Mt.Weld 鉱の鉱物資源量は、770万t、酸化レアアース品位12%となっている。
(精測鉱物資源量120万t :品位15.7%、概測鉱物資源量500万t :品位11.8%、予測鉱物資源量150万t :品位9.9%)
同社は2011年後半から西オーストラリア州Mt.Weld でレアアースを生産する。
当初は年1万1000トン生産する計画だったが、2012年末からは生産量を2万2000トンに倍増する方針を決めた。
Mt.Weld レアアース鉱床からレアアース鉱物(モナザイト等)を採掘、西オーストラリア州南部のEsperance 港からマレーシアへ海上輸送、分離・精製し、更に最終消費者の要求にあったレアアース製品とした後、米国・欧州・日本などへ販売する。
同社はMt.Weld プロジェクトのコスト削減のため、中国山東省にレアアース分離プラントの建設を計画した。
しかし、2006年に入って、レアアース産業に対する生産抑制、輸出制限、増価税リベート見直し、環境規制など中国政府による締め付けが強くなったことから、同社は中国でのレアアース分離プラント建設を断念し、マレーシア東海岸のPahang 州 Kuantan のGebeng Industrial Area にプラントを建設することとした。
2010/10/5 レアアース、米・豪・カザフなど生産拡大
同社の会長は11月23日の株主総会で、計画について詳細に説明している。
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Lynasは95百万ドルの開発資金の供給契約を結んでいたヘッジファンドが金融危機と資源価格の暴落の影響などにより資金供給を拒否したため、2009年2月にMt Weld 鉱の開発計画の中断を発表した。
豪、マレーシア、日本などの政府系機関や需要家などに支援を要請したが、当時は日本の需要家も支援に慎重で、万策尽きて、中国に依存することとなり、2009年春に、中国の国有非鉄大手、中国有色鉱業集団から252百万豪ドルの出資(マジョリティ)を受け入れることを決めた。
しかし、豪州のForeign Investment Review Boardが2009年9月に、中国有色鉱業の出資を50%未満、取締役を50%未満にするよう要求、有色鉱業はこれを拒否し、撤退した。
2009/5/16 中国、レアアースでも豪州に進出
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Lynasは本年10月にワシントンDCのRare Metals Summit III でレアメタルの需給と価格予想について発表している。
2014年の供給量は、米国のMountain Pass鉱山の再開とMount Weldのスタートで現在より55千トン増加するとみている。
但し、中国のシェアは67%を占める。(単位:レアアース酸化物・トン)
2010年 | 2014年 予想 | ||
中国 | 内蒙古自治区 Baotou Steel Rare Earth High-Tech |
55,000 | 60,000 |
四川省 Jiangxi Copper |
10,000 | 20,000 | |
イオン吸着粘土層 (南部地区) |
35,000 | 30,000 | |
リサイクル | 3,300 | 4,000 | |
合計 | 103,300 | 114,000 | |
米 | Mountain Pass | 3,000 | 20,000 |
豪 | Mount Weld (Lynas) | 22,000 | |
インド | 3,000 | 12,000 | |
ロシア | 4,000 | ||
リサイクル | 1,500 | 1,800 | |
中国以外合計 | 11,500 | 55,800 | |
総合計 | 114,800 | 169,800 |
需給と価格推移
1992年に鄧小平が「中東には石油があり、中国にはレアアースがある」と述べた。
1992-99年に中国各地で生産が始まり、安値で市場を支配した。
米のMountain Passは1998年に生産を停止。
2000-06年では中国で600のメーカーが競い、環境投資は全くなし。
2007年に入り、環境規制による停止、環境費用や労務費のアップ、需給逼迫で価格アップ。
2009年に需要は減少したが、政府の関与で価格急上昇。
今後の予想については、同社は、供給は増えるが需要も増え、環境コスト等も上昇するため、価格は40~60$の高値で推移するとみている。
2000-2006年の時代の安値は二度とないとしている。
目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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