中国国有化学大手の中国中化集団(Sinochem Group)は12月17日、Royal DSM の抗感染症薬事業(DSM Anti-Infectives)の50%を買収すると発表した。
買収額は負債引き継ぎなしベースで現金で 2億1000万ユーロ。
欧米の先進技術を導入して売上高を増やしたいSinochemと、中国大手との連携で高成長が見込める中国事業を伸ばしたいDSMの思惑が一致した。
DSM Anti-Infectivesは中国以外ではごく少数のペニシリンのメーカー。
DSMの事業は中国企業などとの競争で採算が悪化している。
このため、2004年に華北制薬集団有限責任公司(North China Pharmaceutical Group:NCPG)と戦略的パートナーシップを組む意向を明らかにし、その後、交渉を続けた。
2009年初めにはビタミンとペニシリンの分野でJVを設立する契約を締結した。内容は以下の通り。
・DSMはNCPGに10%程度の戦略的投資を行う。
・ビタミンCの製造JVと、ペニシリンの原体と中間体製造のJVを設立する。
DSMは前者に30%、後者(2つのJV)に51%を出資する。
・DSMの総投資額は約110百万米ドル。
NCPGはビタミンCとペニシリンの既存工場と、ペニシリンの中国の国内のマーケティングと販売組織を出す。
両社は認可取得など準備を進め、2009年下期に設立を予定。
両社は他の分野での協力も協議する。
しかし、2009年10月にこの計画は延期(事実上の中止)となった。
NCPGの株主の変動により、契約実行が遅れること、恐らくは目標期間中には実行できないだろうとの通知を得たもの。
このため、DSMはパートナーを変更した。
両社は近く香港に折半出資会社を設立し、DSMの世界の抗感染症薬事業を引き継ぐ。同事業の社員2000人も合弁会社に移籍する。
手続きは2011年前半までに完了する見通しで、取引は2011年1月1日に遡及する。
DSMは第4四半期に55百万ユーロの一時利益を計上する。
DSMの医薬部門はDSM Pharmaceutical Products とDSM Anti-Infectives から成る。
売上高は、 | ||||||
2009 | 2008 | |||||
DSM Pharmaceutical Products | 395百万ユーロ | 419百万ユーロ | ||||
DSM Anti-Infectives | 326 | 444 | ||||
合計 | 721 | 863 | ||||
となっている。 |
ーーー
Sinochemは国務院国有資産監督管理委員会の管理下の主要な国営企業の一つ。2009年の“Fortune Global 500”では170位にランクされている。
1950年設立で、農業資材、エネルギー、化学品、ファイナンス、不動産の5つのセグメントから成っている。
同社は2009年9月、28億豪ドルで豪州の農薬会社Nufarmを買収する非拘束契約を締結した。
しかし、Sinochemが値引きを要求したため、Nufarmは再提案を拒否した。
その後、住友化学がNufarmと包括的業務資本提携を行い、20%を出資した。
2009/10/6 Sinochem、豪州農薬会社Nufarmを買収へ 及び付記
Sinochemは本年5月、ノルウェーの国営石油会社Statoil ASAとの間で、ブラジル沖のPeregrino油田の権益の40%を対価 3,070百万ドルで買収することで合意したと発表した。
2010/5/28 中国中化集団、ブラジル油田に30億ドル出資
目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
コメントする