中国財務部は11月30日、来年春のシーズンの国内の肥料供給を確保するため、12月から肥料の輸出に110%の輸出税を課することを発表した。
新しい輸出税は一時的な増税の35%と特別関税75%からなる。
これまでは 7%(但し価格が 1トン2,300元を超える部分については100%)の輸出関税が課せられることになっていた。
これを110%とする。
今回の新しい関税の対象は、尿素、リン酸水素2アンモニウムとリン酸アンモニウム及びその混合物。
財政部は、今回の関税引き上げは、肥料輸出を抑制し、国内の肥料供給を確実にし、国内の農産品の急激な価格上昇を調整するためとしている。
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中国では消費者物価指数が上昇しているが、特に食品、農産品の値上がりが大きい。
このため、中国国務院は11月19日、高騰する物価の抑制に向け、農産物の増産や流通コストの低減など16項目からなる緊急対策を発表した。
2010/11/19 中国の消費者物価指数アップ
今回の肥料の輸出税は、農産物の増産のため、国内向け肥料を確保するもの。
中国では今秋から省エネルギー目標を達成するために電力を大量消費する企業向けの電力供給を制限している。
これまでは生産量減少による価格上昇を容認していたが、農作物の値上げを無視できないため、肥料会社などへの電力供給制限の解除に踏み切った。また、製糖会社への電力制限も解除する。
化学肥料の尿素の10~11月の国内生産量は前年同期比で約2割減り、価格が約3割上昇した。
農作物の総費用に占める肥料の比率は2割を占めるため、肥料会社への供給制限を中止する。
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肥料の3要素のうち、窒素を除くリン酸とカリウムは産地が偏在しており、上位3国のシェアが6割近い。
2009年の生産量、埋蔵量は以下の通り。(U.S. Geological Survey)
リン鉱石 | カリ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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リン鉱石の経済埋蔵量の過半がモロッコに集中。
塩化カリの経済埋蔵量の過半がカナダに集中。
米国はすでに1990年代後半からリン鉱石の輸出を徐々に止め始めたとされ、資源の囲い込みを図る動きが見える。
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BHP Billitonは8月18日にカナダのPotash Corporation of Saskatchewan Inc. に対し、1株130ドルでの全株のTOBを行うと発表した。
China Daily は、カリは中国にとって重要であるため、Sinochem子会社で、PotashCorp が22%を出資する中国の肥料輸入販売会社SinofertがBHPに対抗してPotashCorpの買収を図る可能性があると報じた。
最終的にはSinochemは対抗TOBを諦め、カナダ政府がBHPによる買収を拒否したため、BHPも11月15日、敵対的TOB提案の取り下げを発表した。
2010/8/23 BHP Billiton、カナダのPotashCorpに敵対的TOB
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我が国は、肥料原料のほとんどを海外に依存しているが、輸入国は限られている。
我が国の肥料原料及び肥料の輸入先を国別に見ると、
尿素は中国(51%)、マレーシア(39%)及びカタール(10%)、
りん鉱石は中国(38%)、ヨルダン(21%)、モロッコ(18%)及び南アフリカ(17%)、
塩化加里はカナダ(71%)及びロシア(16%)で大宗を占める。〔2008/7 農林水産省生産局〕
肥料原料の価格は最近上昇している。〔同上〕
中国の輸出税が110%になると、中国からの輸出は止まり、他のソースに集中するため、価格は更に上がる。
各国が戦略物品として囲い込みを始めた場合、価格の問題にとどまらず、レアアースの場合のようになる可能性も出てきた。
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