Siam Cement、PTT Chemical 持株を売却

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Siam Cement は12月8日、同社の持つPTT Chemicalの株式 20.02%のうち、15.6%を約11億米ドルで売却することを明らかにした。
売却資金を国内外の自社のコア事業の拡張と買収に充てる。
なお、残りの
4.42%は持ち続ける。

過去の経緯から出資をしているが、PTT Chemicalは実質、国有石油ガス会社のPTTの会社であり、Siam Cement はマイナリティ株主で経営に参加していないため、売却を決めた。

PTT Chemicalは2005年12月に、タイのオレフィンメーカー、National Petrochemical Corp. (NPC) Thai Olefins (TOC)が合併して誕生した。

NPCとTOCには国有石油ガス会社のPTTSiam Cement が、それぞれ出資していた。

当初、Siam Cement グループは石化誘導品だけでオレフィンは持っておらず、オレフィンメーカーの両社に出資した。
その後、最後発として
Rayong Olefins を設立し、オレフィンにも進出した。
このため、
Siam CementグループはPTT Chemicalの株主ではあるが、オレフィンから誘導品まで、PTT Chemicalと競合関係にある。

タイにはこのほか、IRPC Public Company (当初名 Thai Petrochemical Industry:TPI)がオレフィンを製造している

合併はPTTの方針によるもので、PTTが株式の50.03%を保有し、同社の連結子会社となった。
現在の
PTT出資比率は49.16%だが、第三位株主は2.81%のHMC Polymersであり、実質的にPTTの子会社である。

両社の出資関係は以下の通り。 

  NPC TOC 合併
 →
PTT Chemical
当初 現在
PTT  38%  49%    50.03%  49.16%
Siam Cement 35% 7%    21.79%  20.02%→売却15.6%
      保有
4.42%

PTT Chemical国有石油ガス会社PTTの石油化学部門として、自らエチレンやPEの設備を持つとともに、PTTの元子会社を傘下に持っている。

100%子会社
社名 製品 能力
 千トン
 
Bangkok Polyethylene HDPE    250  
PTT Polyethylene エチレン    1,000  
LDPE 300
LLDPE 400
Thai Styrenics PS       90 三菱化学のHMT Polystyrene
のプラント買収
TOC Glycol EO          85  
MEG 423
Thai Ethanolamines Ethanolamine  50  
Thai Oleochemicals Methyl ester      200  
Fatty alcohol 100
Glycerin 31
Thai Fatty Alcohol Fatty alcohol 100  
 
関連会社
  出資比率 JV相手 製品  能力
 千トン
 
Thai Ethoxylate 50% Cognis Fatty alcohol ethoxylate  50  
PTT Phenol 30% PTT 40%
Aromatics (Thailand) 30%
Phenol 200  
Aceton 124  
BPA 150 三菱化学技術
Vinythai 20% Solvay 49.99%
PTT Chemical 24.98%
Charoen Pokphand 11.87%
ソーダ 266  
VCM 400
PVC 280
Epichlorohydrin 100 菜種油→バイオディーゼルの
副生グリセリンを原料
HMC Polymers 0 PTT 40%
LyondellBasell
Bangkok Bank
PP 455 2006年にPTT本体が出資

Siam Cement も石油化学で傘下に下記の子会社やJVを持ち、多くの分野で競合している。  

  製品 能力
 千トン
 
子会社
   Rayong Olefins エチレン 800  
プロピレン 400
Thai Polyethylene LDPE  100  
LLDPE 120
HDPE 580
Thai Polypropylene PP 320  
ダウとのJV
  Siam Polyethylene LLDPE 300  
Siam Polystyrene PS 150  
Siam Styrene Monomer SM 320  
Siam Synthetic Latex      
Pacific Plastics (Thailand) Polyether Polyol 25 2007/11 ダウ100%
Synthetic Latex 20
三井化学とのJV
  Siam Mitsui PTA PTA 1,400 三井 49%、Siam 49%
Grand Siam Composites PPコンパウンド 84 三井 48.2%、Siam 46.2%
Thai PET Resin PET Resin 100 三井 40%、東レ 40%、Siam 20%
その他JV
  Thai MMA MMAモノマー 90
(+90)
三菱レイヨン50.01%
Siam 46%
ブチルメタクリレート 10
Thai MFC     日本カーバイド
海外JV(Indonesia)
  PT. TPC Indo Plastic & Chemicals
(
旧称 Siam Maspion Polymers)
    Siam TPC 100%
Thai Plastic & Chemicals 40% / Siam Cement 60%
  新第一塩ビが技術輸出
関係会社
  Thai Plastic & Chemicals VCM 545 Siam 44.24 %
PVC 540
Paste PVC 35

ダウ2008年6月、サイアムセメントとの合弁会社のSCG-Dow がタイで過酸化水素法PO工場の建設に着手したと発表した。生産能力は年産39万トンと世界規模。同時にプロピレングリコールも生産する。稼動開始は2011年の予定。
過酸化水素(HP)は、ダウとソルベイが設立する合弁会社が、隣接地に新工場を建設する。

  2008/6/16 Dow、タイで過酸化水素法PO工場建設

なお、ダウは2006年10月、タイでサイアムセメントとのナフサクラッカーJV計画を進めると発表した。
11億ドルを投じてRayongに新しいナフサクラッカーを建設するもので、能力はエチレン90万トン、プロピレン80万トン。
サイアムが
67%、ダウは33%出資する。2010年稼動を目指すとしていた。

しかし、その後、本件についての発表はない。

   2006/10/24 ダウ、アジア進出を促進

PTT Chemical Group と株主のSiam Cement のグループとの競合状況は以下の通り。

  エチレン

  エチレン プロピレン
TOC 915 360
NPC 461 127
PTT Chemical 1,376 487
512
PTT Polyethylene 1,000  
PTT Chemical Group 2,376 512
     
Rayong Olefins 800 400
Siam Cement Group 800 400

  合成樹脂  

  LDPE LLDPE HDPE/
LLDPE
HDPE PP PS
PTT Chemical (NPC       250
(+50)
   
BPE (Bangkok Polyethylene)        250
(+250)
   
PTT Polyethylene 300 400        
HMC Polymers         455  
Thai Styrenics           90
PTT Chemical Group  300  400   500
(+300)
455 90
             
Thai Polyethylene 100   120 580    
Siam Polyethylene   300        
Thai Polypropylene         320  
Siam Polystyrene            150
Siam Cement Group 100 300 120 580  320 150

参考  

   2006/6/8  タイの石油化学の現状
   2006/10/6  タイで年産100万トンエチレン建設


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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