オリンパスは12月7日、米国に新会社Olympus Biotechを設立し、Stryker Biotechが保有する骨形成タンパク質「Osteogenic Protein-1:OP-1」に関わる開発・製造・販売のうち骨領域に関わる資産を購入すると発表した。
オリンパスは従来より、下記の通り、様々な再生医療の研究開発やビジネスに取り組んでいるが、今回の新会社の設立および「OP-1」の資産購入は、これを、より本格的に、グローバルに展開するもの。
Stryker Biotechは、骨形成タンパク質(BMP)の一つの骨形成因子「OP-1」を開発し、グローバルに事業を展開している。
FDAよりHumanitarian Device Exemptions (HDE) を取得し、長間骨骨折用ならびに腰椎固定用に「OP-1」が使用されている。また、欧州、豪州やカナダでも、販売承認を得て販売を行っている。
「OP-1」は、「骨伝導能」(骨内に埋入し骨が結合して一体となる機能:人工骨にもある)と、人工骨には備わっておらず自家骨と同様の「骨誘導能」(骨がない筋肉内などに埋入したとき、骨が形成される機能)とを備えており、整形外科分野における骨補填材市場を大きく成長させていくと期待されている。
今回、設立するOlympus Biotechでは、Stryker Biotechの骨領域の「OP-1」関連の資産を取得し、オリンパスグループが既に所有する生体材料や再生医療関連技術との組み合わせによる最適化を行い、「OP-1」関連製品の販売拡大と適用拡大を目指す。
さらに、科研製薬との提携による欧米におけるbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)の創傷治癒ビジネスや、既に生体材料ビジネスを展開するオリンパステルモバイオマテリアル社とのシナジーを追求しながら、更なる整形外科および再生医療の発展に貢献していくとしている。
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Stryker Biotechは1936年にミシガン州の整形外科医Dr. Homer Strykerが、医療器具が患者のニーズに合っていないと考え、体の向きが変えられるようにベッドを回転させ"Turning Frame"を考案、1941年に会社を設立した。
2009年の売上高は67.23億ドルで、世界の12大医療技術会社の1つになった。
成形外科分野(人工膝関節、人工股関節、人工肩関節など)が56億ドルで83%を占める。
日本には日本ストライカーがある。
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オリンパスの事業は多岐にわたる。
オリンパスは1999年から生体に吸収されながら自らの骨に置換する独自の特性を持つβ-TCPを材料とした「骨補填材オスフェリオン」を販売したが、2002年11月に培養骨・多検体自動細胞培養装置の販売を行い、骨の再生医療事業に参入した。
2004年にこれら生体材料事業、再生医療事業および関連製品の研究開発、製造、販売に特化した100%子会社「オリンパスバイオマテリアルを設立した。
同社は2005年に住友大阪セメントが製造し、住友製薬が販売する骨補填材の事業部門を譲り受けた。
オリンパスとテルモは2007年に、生体材料と再生医療を事業とするオリンパスバイオマテリアルにテルモのコラーゲン事業を統合し、生体材料事業を展開することで合意し、オリンパスバイオマテリアルにテルモが33.4%出資し、オリンパステルモ バイオマテリアルに改称した。
現在、骨補填材「オスフェリオン」や「ボーンセラム」、人工皮膚「テルダーミス真皮欠損用グラフト」などを整形外科市場に提供している。
オリンパスと科研製薬は2009年11月、線維芽細胞成長因子「bFGF」(細胞の増殖や分化の調節を行っている蛋白質の一種)について、創傷治癒分野の欧米での開発・製造・販売権に関するライセンス契約を締結した。
科研製薬は遺伝子組み換え技術で製造したbFGFを用いて、再生医療医薬品の研究開発を進めており、2001年に世界初のヒトbFGF製剤「フィブラストスプレー」を発売、歯科領域ではサンスターにこの権利を導出している。
オリンパスは、科研製薬のデータや技術を活用し創傷治癒分野で製品化を目指す。
オリンパスは2005年12月に米国でCytori Therapeuticsとの50/50JVのOlympus-Cytori, Inc.を設立、再生医療向けの新装置である脂肪由来細胞群分離装置の開発に着手した。
オリンパスが培ってきた医療機器開発・製造技術と、Cytoriが持つ“脂肪組織から細胞を抽出する技術”を融合させ、次世代の脂肪由来細胞群分離装置の早期開発・製造、及び適用領域におけるアプリケーションの確立を含めた“脂肪由来細胞群を用いた再生医療のビジネス化”を加速することを目的としている。
オリンパスは2006年8月、Cytori から約1,100万ドル相当の株式を追加取得した。
Cytori 本体への投資を拡大することにより、JVの役割である次世代の脂肪由来細胞群分離装置の早期開発・製造にとどまらず、オリンパスが上記装置を販売することも視野に入れた“脂肪由来細胞群を用いた再生医療のビジネス化”を加速する。なお、アステラス製薬は12月8日、Cytori Therapeuticsとの間で体性幹細胞の難病治療への応用可能性を評価するために、戦略的株式投資契約を締結したと発表した。
アステラス製薬は、新たに発行されるCytori の普通株式約143万株を現金10百万ドルで取得、同社技術を肝臓疾患の治療目的に使用するための全世界を対象とした研究・開発・商業化に関する提携に対する第一契約権(期間:2年)などを取得する。
両社は最先端の再生医薬領域で提携する可能性を今後探っていく。
参考 | 2010/2/22 | 富士フイルム 医薬品開発・販売に本格参入 | |
2010/9/3 | 富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと資本提携 | ||
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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