BPは1月14日、ロシアのRosneftとの間でグローバルな戦略的提携で合意したと発表した。
Rosneft(ロスネフチ)はロシアの石油会社で、ロシア政府が75.16%を所有、残りは公開されているが、国有財産管理庁に管理されており、実質的にロシアの国営企業である。
サハリン、シベリア、Timan-Pechora行政区、そしてチェチェンを含む南ロシアで石油と天然ガスを生産している。
生産量は原油換算で日量240万バレル。
Rosneft はBPの株式5%を購入、見返りにBPはRosneftの株式 9.5%を購入する。
BPがRosneftに発行する株式の価値は現在の株価で約78億ドルになる。両社は持ち合いを長期の、戦略的なものとみている。
(契約上は2年間は売却できず、その後も売却に制限がついている。)
両社はロシアの北極海大陸棚にある3つの鉱区(EPNZ 1,2,3)を共同で開発する。2010年にRosneftが権利を取得したもので、South Kara Seaの125千km2にわたるもの。英国北部の北海油田と同程度の広さで、同規模の石油産出量が期待できるという。
付記 その後の情報では、Rosneftは開発JVの2/3を所有するが、開発コストの最初の20億ドルはBPが負担する。
BPはメキシコ湾の原油流出事故後に、補償資金の確保のため多くの既存油田の権益売却を進めているが、その一方で、未開発油田の大きいロシアでの事業拡大を目指す。
両社はまた、ロシアに北極圏技術センターを設立し、ロシアや海外の研究所や大学と協力して、北極海の大陸棚から石油を安全に採掘するための技術を開発する。安全性、環境との調和、緊急漏えい対策などのBPの経験と知見を基にする。
両社はKara Sea以外のロシアの北極圏の石油開発についての技術的研究も実施する。
両社は今回、ドイツのRuhr Oel GmbHの50/50株主となるが、これ以外にも国際的な協力関係を探る。
Ruhr Oel は BPとベネズエラ国営石油会社PdVSA のJVであった。
(1983年に当時のVeba Oel AG とPdVSA のJVとして設立され、その後、Degussa がVeba を買収したが、2002年にDegussa 親会社のE.On がVeba をBP に売却した。)Rosneft は2010年10月にPDVSAの50%持分を16億ドルで買収する契約を締結した。
手続きが完了すれば、Ruhr OelはBPとRosneftの50/50JVとなる。Ruhr Oel は Gelsenkirchenに製油所と石化コンプレックスを持ち、BPのドイツ子会社のBP Refining & Petrochemicalsが運営を受託している。
他に、石油精製会社MiROの 24%、Bayernoil の25%、PCK Schwedt の37.5%を保有している。
Ruhr Oel の石油精製能力の持分は合計で年2320万トンで、ドイツの精製能力の20%を占める。
BPとRosneft は2006年1月にロシアの北極圏を評価する共同研究を行っている。
両社はサハリン4とサハリン5プロジェクトを共同で開発中。
2006/6/6 「新・国家エネルギー戦略」発表 後半に記載
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RosneftはSinopec とも提携している。
両社は2006 年11 月に戦略的枠組み協定に調印し、TNK-BP (Tyumen OilとBPの合弁)からUdmurtneft(沿ヴォルガ地域)油田を買収、共同経営を開始した。
Sinopec はRosneft からサハリン3の一部 Veninsky oil project の25.1%の権益を取得している。(残り74.9%はRosneft)
なお、Sinopecが最近、開発がうまくいかないとして技術者を引上げたとの情報がある。
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BPはロシアでは50/50JVのTNK-BPを持っている。
2008/9/9 BP、ロシアの石油JV 経営問題でロシア側に譲歩
付記
Alfa Access Renova を構成する4人の新興財閥が1月27日、BPとRosneftとの取引がTNK-BPを除外しているのは、BPとTNK-BPの株主協定に違反するとしてロンドンの高等法院(High Court)に訴えた。 TNK-BP はロシアで3番目に大きい石油会社で、BPとAlfa Access Renova group が50%ずつ所有している。(付記 正しくは一般株主が5%で、BPとAlfa Access Renova group が45%ずつ。) BPとRosneft の交渉を直ちに取りやめることを求めており、本件をやめろというのではなく、BPがロシアではTNK-BPを通して活動することを求めている。 4人は株主契約がそうなっていると主張している。 これに対しBPは、Rosneftとの取引はTNK-BPの契約に違反しないと主張している。 BP内部では、TNK-BPは北極海での作業に必要な海上掘削の経験がないことを指摘している。
Alfa Access Renova は下記の3社の連合。
Alfa Group
ロシアの新興財閥で、ロシア最大の金融産業コングロマリットのひとつ。
Mikhail Fridman と German Khan が50%ずつ保有。
Access Industries
ロシア生まれの Len Blavatnik が設立し所有する米国の投資会社で、Basellを買収した。
Renova Holding
ロシアの長者番付では第5位のViktor Feliksovich Vekselberg (SUALの大株主)のベンチャーキャピタル。
4人は特に、詳細を伝えられなかったことに不満を表明している。
Putin首相と腹心のIgor Sechin副首相がバックアップする取引への公然とした挑戦であるとして注目されている。
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2月1日、裁判所は調停での問題解決を命じた。それまで交渉は中断する。
BPは同日、調停にかけることを発表した。
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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