WikiLeaksが発表した、米のサウジ大使館員からワシントンへの秘密公電のなかに、サウジが石油埋蔵量を大幅に水増ししているというものがあった。
2月16日付の毎日新聞の「水説」では、「サウジの水増し疑惑」と題し、「日本ではあまり報道されていないようだが、大問題だと思う」としている。
英国のGuardian紙が詳細に伝えている。
2007年12月10日付の公電には以下の記載がある。
11月10日に元Saudi Aramco のExecutive VP(開発・生産担当)Dr. Sadad al-Husseini と面談。
彼によると、Aramcoは増産可能量を過大に発表しており、2009年までに12.5百万b/dの能力にするという公表された目標は達成できない。
“peak-oil”説には同意しないが、世界の生産量は5-10年で頭打ちとなり、15年ほど続いて、その後減少に転ずる。現在の高価格は市場のゆがみではなく、世界の需要が供給に追いついた現実を表したものである、としている。
11月20日の面談では、Dr. al-Husseini は以下の通り述べた。
Aramcoは10年以内に12百万b/dは達成できるが、2009年までに目標の12.5百万b/d達成は無理である。12百万b/dも一定期間だけで、それも多額の投資が必要である。
問題は2つある。一つは埋蔵量がそれほどないこと。
12月1日のシンポジウムで現在のAramcoのSenior VPのAbdallah al-Saifは、Aramcoの埋蔵量は7160億バレル(うち51%は採掘可能)で、20年のうちに、埋蔵量は9000億バレルとなり、技術改革で70%は採掘可能となろうとしているが、Dr. al-Husseiniはこの分析に同意せず、Aramcoの埋蔵量は3000億バレルほど過大表示されているとする。
確認埋蔵量は3600億バレルで、この半分まで採掘すると、生産量は徐々に減少する。これまでに1160億バレルが採掘されており、50%までにはあと640億バレルしかない。12百万b/dで続けると、あと14年である。その後は15年ほどはその水準でいけるが、そのあとは生産は減少する。
もう一つは技術者不足、製油所能力の不足、インフラ問題、油田管理の問題である。
7か月後の公電では、サウジは最早、原油価格を長期的に引き下げる力はないとしている。
2009年10月の公電では、サウジの電力需要の増大により、原油輸出は抑えられるとしている。また、計画の遅れや事故も問題としている。
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これに対し、Dr. Sadad al-Husseiniは以下の通り反論した。(同じくGuardian紙が報道)
・WikiLeaksに書かれている大使館員との面談というのは、立ち話で、不正確な話も含んでおり、報告では更に誤りが増えている。
・Saudi Aramcoの埋蔵量は根拠のある正確なものであり、これに疑問を呈したことはない。
Saudi Aramcoの埋蔵量は2600億バレルであり、埋蔵量が3000億バレルも過大などというのはあり得ない。
・その際、大使館員は、サウジの公表している埋蔵量は採掘不能の原油や未発見の油田を入れて3倍以上とすべきだと述べた。
これに対して、Saudi Aramcoのやり方が正しいと主張した。
・Saudi Aramcoは多額の投資をして増産を行い、2009年末には生産能力は既に12.5百万b/dになっている。
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Dr. Sadad al-Husseiniの説明は理にかなっているようだ。
BPの発表した統計では2009年末のサウジの石油埋蔵量は2646億バレルとなっている。
サウジの銀行のアナリストは、Saudi Aramcoが埋蔵量を水増しする理由はないとする。
Aramcoは自分の金で採掘しており、外部資本を入れるために偽装する必要はない。
その場合、大使館員の報告は、単なる聞き間違いか、わざと誤りの報告をしたのか?
また、逆に大使館員の側が、埋蔵量を増やすべきだと述べたとされる。
大使館員がわざと誤りの報告をしたとすると、その意図は何なのであろうか?
米国側はWikiLeaksの発表したものについては、なんらのコメントもしていない。
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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