3月5日、第11期全国人民代表大会(全人代)第4回会議が開幕、国務院の温家宝総理による政府活動報告の聴取、第12次五カ年計画綱要草案、年度計画報告・予算報告の審査が行われた。
温家宝総理は政府活動報告で以下のように述べた。
1)第11次五カ年計画(2006--2010)期の総括
中国の発展の中でも極めて非凡な5年間であった。
この5年間、中国の社会生産力、総合的国力は大きく向上した。
国際金融危機に効果的に対応し、経済の安定した比較的速い発展を保ち、第11次五カ年計画の主要目標と任務を完成させ、国民経済は新たなステップを踏み出した。
・ GDPは39兆8千億元に達し、年平均成長率は11.2%に達した。 ・ 財政収入は3兆1600億元から8兆3100億元に増加した。 ・ 有人宇宙飛行、月探査プロジェクト、スーパーコンピュータなどの最先端技術も重大な飛躍を遂げた。 ・ 国防と軍隊の現代化建設も重大な成果をあげた。 ・ 都市部の新規就業者数は5771万人、移転した農民労働者は4500万人に達した。 ・ 都市住民の一人あたり可処分所得と農村住民の一人あたり純収入は年平均でそれぞれ9.7%、8.9%増加した。 ・ 昨年、対外貿易総額は2兆9700億ドルに達し、開放型経済のレベルが急速に高まった。 ・ 北京オリンピック、上海万博の開催で成功を収め、中華民族の長年の夢を実現した。
2) 第12次五カ年計画期の主要目標
①経済発展
・ 経済発展方式の転換と経済構造の調整を加速させ、中国の特色ある新型工業化の道を堅持し、情報化と工業化の融合を推進し、製造業を改造・高度化し、戦略性 新興産業を育成し、発展させる。 ・ サービス業の発展を加速し、サービス業の増加値が国内総生産(GDP)に占める割合を4ポイント高める。 ・ 都市化を積極的かつ穏当に推進し、都市化率を47.5%から51.5%にまで高め、都市化の質と水準を絶えず高める。 ・ 現代農業の発展に力を入れ、社会主義新農村建設を加速する。 ・ 地域発展の全体戦略と主体機能区戦略をしっかりと実施し、基本的な公共サービスの均等化を少しずつ実現する。 ・ 都市・農村間、地域間の良い相互作用を促進し、第1次、第2次、第3次産業の調和の取れた発展を促進する。
②生活改善
・ 人々の生活を全面的に改善する。 ・ 雇用増加を経済社会発展の優先目標とし、5年間で都市部の新規就業者が4500万人に達することを目指す。 ・ 住民所得の増加 と経済発展、労働報酬の増加と労働生産率の向上を同時に推し進め、
住民所得が国民所得配分に占める割合を少しずつ高め、労働報酬が第1次分配に占める割合を高め、合理的な所得分配構造を形成する。・ 都市住民の一人あたり可処分所得と農村住民の一人あたり純収入の年平均成長率がそれぞれ7%以上に達することを目指す。 ・ 貧困扶助の基準を高め、貧困人口を減少させる。
社会保障制度の整備を加速し、保障水準を高め、都市・農村を全面的にカバーする基本年金、基本医療保障制度を実現する。・ 都市・農村の3つの基本医療保険の加入率を高め、安定させ、政策の範囲内の医療保険金支払水準を70%以上に引き上げ、都市における保障性住宅のカバー率を20%前後に引き上げる。 ・ 基本的国策である計画出産を堅持し、平均寿命を1歳引き上げる。
③政府自身の改革を強化
・ 政府自身の改革を絶えず強化する。 ・ 政府は国民に対して責任を持ち、国民のために利益をはかり、国民による監督を受けなければならない。 ・ 国民による国と社会的事務の法に基づく管理、経済と文化事業の法に基づく管理を幅広く動員・組織しなければならない。 ・ 法による治国という基本的戦略を堅持し、人々の利益を守る法律整備を強め、法による行政を推進しなければならない。 ・ 科学的・民主的な政策決定を行い、政策の決定・執 行・監督が相互に制約し合い、協調し合うメカニズムを打ちたて、
権力の正しい行使を確保しなければならない。・ 権力が過度に集中し、制約を受けない状況を制 度上から打開し、腐敗の処罰・予防を断固として行わなければならない。 ・ 人々の民主的権利と合法的権益を保障し、社会の公平・正義を守らなければならない。
新5カ年計画の概要は以下の通り。(日本経済新聞)
成長率目標 : ・7.0%(前回は7.5%)
・2015年のGDPを2010年比で1.4倍に格差是正 : ・課税最低限の引き上げ
・住民の純収入の伸び 7%超
・収入が多すぎる業種の賃金規制生活改善 : ・都市部の新規就業者数を4500万人増
・今年は低価格住宅1000万戸新築産業構造転換 : ・サービス業の比率4ポイント上げ
・戦略的な新興産業育成(下記)
7分野のGDPに占める割合を現在の約3%から8%に高める。環境対策 : ・非化石エネルギー比率を11.4%に引き上げ
・エネルギー消費量、単位GDP比16%削減
(前5カ年計画では20%削減)政治改革 : ・権力の過度な集中をチェックできるよう是正
・ネット管理強化国力増強 : ・研究開発費、GDP比2.2%に
・教育水準引き上げ・海洋戦略を策定 「海洋権益を守る」
*「戦略的新興産業」の指定
①省エネ・環境保護 : 先進的な環境保護、資源リサイクルの産業化 ②次世代情報技術 : 次世代携帯電話網・インターネット網の構築
液晶パネルなどの産業基地の建設③バイオテクノロジー : 遺伝子データベースの構築 ④先端レベルの設備製造 : 新型国産航空機、ヘリコプターなどの産業化推進
高速鉄道などの発展促進⑤新エネルギー : 次世代原子力発電設備、大型風力発電機、
高効率の太陽光・太陽熱発電などの産業基地の建設⑥新素材 : 炭素繊維、超電導材料、高性能レアアース材料、
ナノテク材料などの研究開発・産業化⑦新エネルギー車 : ハイブリッド車、電気自動車の研究開発、大規模な商業化
2010/6/10 中国が「戦略的新興産業計画」をとりまとめ
本年度予算のポイントは以下の通り。
財政支出 10兆元(前年比11.9%増)
歳入 8兆9700億元(8%増)
財政赤字 GDPの2%(2010年は2.8%)
積極的財政政策を維持
都市部と農村の所得改善、消費者需要の拡大、低所得層向け住宅事業や
省エネ、環境保護関連のインフラ支出に重点
(住宅関連支出は9.6%増の2580億元)
今年は8%の経済成長を目指し、物価の上昇を「断固として」抑制
物価上昇が低所得者層の人々の普通の生活に影響を与えることを容認できない
今年通年のインフレ率を4%に抑える目標
目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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