テルモは3月7日、輸血関連事業分野の世界的大手企業の米国の医療機器メーカーのCaridianBCTの100%の株式を購入する契約を締結したと発表した。同社に全額出資するスウェーデンの大手医療機器メーカー、Gambro ABから取得する。
買収額は2,625百万米ドルで、手元資金(700億円弱)と銀行借り入れで賄う。同社はこれまで無借金経営を続けてきた。
テルモは1960年代に輸血関連事業に参入して以来、血液バッグを中心に国内ばかりでなく海外市場にまで事業を拡大し、グローバルで業界第5位の地位を獲得している。
同業界は、先進国では高齢化に伴うがん患者の増加、新興国では経済発展による医療水準の向上が、世界的な輸血需要の増加を促進、グローバルに力強い成長が期待される。
こうした中で、テルモは世界で存在感のある企業を目指し、「10年以内に売上高1兆円」の実現に向けた重点成長戦略のひとつとして、輸血関連事業の拡大を掲げ、更なる事業拡大を狙っている。
CaridianBCTは、採血から治療システムに至る幅広い領域での高い技術力とグローバルな販売網を生かして、今後とも高成長が期待される企業で、テルモは、買収により売上高1兆円へ向けた成長戦略を大きく前進させることが可能となるとしている。
テルモは本買収の意義を以下の通りとしている。
(1) 世界でトップの地位を確立
テルモの2009年の輸血関連事業の売上高は240億円で世界5位だが、買収により約700億円とトップになる。
CaridianBCTの持つ高付加価値の成分採血システムなどが加わり、世界中の広範な輸血需要に対応。
地域的には米国・欧州・中南米での事業基盤を強化血液関連機器メーカー売上高(2010年度見通し)
両社の地域別売上高(単位:百万ドル)
欧州 米大陸 日本 他 合計 CaridianBCT 170 260 20 80 530 テルモ 50 40 105 95 290 合計 220 300 125 175 820
(2) 持続的な高成長事業の獲得
CaridianBCTの主力事業である成分採血システムによる血小板採取の技術は、世界で高い評価を得ている。
(主に抗がん剤投与や放射線照射などのがん治療によって起こる血小板減少の際に輸血)CaridianBCTはイノベーション重視の企業で、自動製剤システムや病原体低減システムのような新 しい課題に対応した医療技術を有している。
(3) グローバル成長エンジンの新たな柱
本件買収により、輸血関連事業の売上構成比は現在の8%から18%になり、テルモの成長を支える新たな柱となる。
テルモの新宅祐太郎社長は記者会見で「心臓カテーテル(医療細管)以外の新たな成長エンジンになる」と強調した。
テルモのカテーテル事業は2009年度の売上高が1300億円で、全売上高の4割を占める。
世界のカテーテル市場では2位のグループを形成しており、米Johnson & Johnson、米Abott Laboratoriesの首位陣を追っている。テルモの2010年3月期のセグメント別業績は以下の通り。(億円)
売上高 営業損益 ホスピタル商品群 1,498 336 心臓・血管領域 1,358 387 輸血関連 239 34 ヘルスケア 64 4 全社 - -129 合計 3,160 633
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
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