浜岡原発について

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浜岡原発については 2011/4/19 「浜岡原発を止めよ」で問題点を述べた。

石橋・神戸大学名誉教授は岩波書店の雑誌「科学」1997年10月号で、こう述べている。

発生が懸念されるM8級東海巨大地震の想定震源断層面の真上、静岡県御前崎のやや西に、中部電力浜岡原子力発電所がある。

原発を直撃する地震動は、原子炉のS2(安全のための余裕を加えた基準地震動)を超える恐れが強い。

地震時に浜岡は1m以上隆起すると考えられるが、それに伴って地盤が傾動・変形・破壊すれば原発には致命的だろう。

津波に関して中部電力は、最大の水位上昇がおこっても敷地の地盤高(海抜6m以上)を越えることはないというが、1605年東海・南海巨大津波地震のような断層運動が併発すれば、それを越える大津波もありうる。

これに対し、同原発を運営する中部電力は、ホームページで以下の説明をしている。

  浜岡原子力発電所の基礎岩盤=相良(さがら)層

浜岡原子力発電所の安全上重要な施設は相良層という岩盤に直接支持されています。
相良層は、新第三紀中新世後期から鮮新世前期(今から概ね数百万年から1千万年前)に堆積した泥岩・砂岩の互層で、軟岩に分類されますが、原子炉建屋の基 礎岩盤として地震時にも十分な強度を有していることを確認しています。

  地盤の隆起に対する安全性

海域で発生するプレート境界地震では、地殻変動は広い範囲に及ぶため、傾斜は非常になだらかなものとなるとされています。
浜岡原子力発電所の敷地周辺においては、東海地震に伴い、
1m程度隆起することが想定されますが、敷地に生じる傾斜は非常になだらかで、また、敷地内には地震に伴って動くような断層は存在しません。
したがって、地震に伴う地殻変動に対しても、原子炉施設に影響を及ぼすような傾斜や地盤の変位・変形が生じることはありません。

  耐震設計の基本的な考え方

浜岡原子力発電所の敷地周辺は、過去に安政東海地震(M8.4)などのプレート境界型の巨大地震による揺れを経験しており、下図のaおよびbの領域に M8.4の地震を想定して設計をおこなっています。更に余裕を持たせ、これと同じaおよびbの領域に、これを上回るM8.5の地震を考慮して設計をおこなっているため、安政東海地震よりも規模の小さいM8.0の想定東海地震(図のaの領域)に対して十分安全性は確保されています。

注)上記では限界的な地震をM8.5としている。
   東日本大震災について気象庁はマグニチュード(M)を「8.8」から「9.0」に修正した。

1960年5月22日 チリ地震- M 9.5
2004年12月26日 スマトラ島沖地震 - インドネシア、アチェ(スマトラ島) - M 9.3
1964年3月28日 アラスカ地震 - M 9.2
1957年3月9日 アリューシャン諸島で地震 - M 9.1
1952年11月4日 カムチャッカ地震 - M 9.0

  東北電力は、女川原発1~3号機原子炉建屋で地震の揺れが耐震設計の基準値を上回ったと発表。

  津波に対する安全性

痕跡高などの文献調査や数値シミュレーションの結果、敷地付近の津波の高さは、満潮を考慮しても、最大でT.P.+6m程度です。
これに対して、敷地の高さは津波の高さ以上のT.P.+6~8mであり、津波に対する安全性を確保しています。
さらに、敷地前面には、高さがT.P.+10~15m、幅が約60~80mの砂丘が存在してます。また、安全上重要な施設を収容している原子炉建屋などの出入口の扉は防水構造にしています。
これらのことから、浜岡原子力発電所は、津波に対する安全性を十分に確保しています。

ーーー

中部電力は今回の原発の被災状況を踏まえた浜岡原子力発電所の緊急安全対策について、経済産業大臣からの指示に基づきとりまとめ、4月20日、原子力安全・保安院へ報告書を提出した。

この中には砂丘と原子炉建屋の間に15メートルの防波壁を設置することが含まれている。(当初案は12メートル)
4月5日に地盤調査を開始、完成は2013年度中となっている。

同社は知事に対し、遠州灘は遠浅のため、東海、東南海、南海地震が同時に起きた場合でも津波は8メートル以内で収まるとの想定を示しつつ、福島第1原発を襲った津波は15メートル程度だったと説明し、理解を求めた。

注 東京電力はこれまでホームページに、以下の通り、原子力発電所の「津波への対策」を載せていた。
(4月13日に削除した。)

津波への対策

原子力発電所では、敷地周辺で過去に発生した津波の記録を十分調査するとともに、過去最大の津波を上回る、地震学的に想定される最大級の津波を数値シミュレーションにより評価し、重要施設の安全性を確認しています。また、発電所敷地の高さに余裕を持たせるなどの様々な安全対策を講じています。

海江田経済産業相は3月29日の参院予算委で、福島第一原発の設置許可時に想定していた津波が 3.122メートルだったが、実際の津波は14メートル程度だったと説明した。

女川町を襲った津波は17メートルクラスだったとする調査結果がある。
敷地標高が14.8メートルの女川原発も2号機の原子炉建屋の地下3階が浸水した。

付記
東京電力は2006年の米国での原子力工学の国際会議で、福島第一原発に、設計の想定を超える津波が来る確率を「50年以内に約10%」と予測し、発表していた。
今後50年以内にこの想定を超える確率が約10%あり、10メートルを超える確率も約1%弱としていた。

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浜岡原発については、2002年4月に市民団体が運転差し止めの仮停止申請を申し立て、翌03年7月、訴訟に踏み切った。2007年10月静岡地裁は、「中電の想定する東海地震は科学的根拠に基づいており、運転によって原告らの生命、身体が侵害される具体的危険性は認められない」と原告の請求を棄却した。

斑目春樹原子力安全委員長は、浜岡原発訴訟の中部電力側の証人として証言、複数の非常用発電機が起動しない可能性を問われ、以下の通り答えた。

「非常用ディーゼルが二台同時に壊れて、いろいろな問題が起こるためには、そのほかにもあれも起こる、これも起こる、あれも起こる、これも起こると、仮定の上に何個も重ねて初めて大事故に至るわけです。[・・・]何でもかんでも、これも可能性ちょっとある、これはちょっと可能性がある、そういうものを全部組み合わせていったら、ものなんて絶対造れません。だからどっかでは割り切るんです。」

事故後の3月22日の参院予算委員会で社民党の福島瑞穂党首がこの発言を追及したのに対し、班目氏は「割り切らなければ(原発の)設計ができないことは事実。割り切り方が正しくなかったことも、十分反省している」と述べた。

現在、東京高裁で係争中。


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