国家発展改革委員会(NDRC)は4月12日、石炭化学産業を更に規制する通達(2011年635号)を発表した。
石炭化学にはいくつかの問題があり、規制が必要として、4つの点を挙げている。
1. 新規参入の規制
特にコークスとカーバイドへの新規参入が制限され、旧式設備の廃棄が求められる。
アンモニアとメタノールについては、特定地域では、新規の大規模設備の計画には、小規模プラントの停止が必要。
2. | 石炭原料の一定規模以下のプロジェクトの禁止 | |
Coal to Olefins | オレフィン年産50万トン以下のもの | |
Coal to Methanol | メタノール年産100万トン以下のもの | |
Coal to DME | DME年産100万トン以下のもの | |
Coal to Liquids | 液化燃料年産100万トン以下のもの | |
Coal to SNG | SNG(代替天然ガス)年産20億m3以下のもの | |
Coal to MEG | MEG年産20万トン以下のもの |
上記能力以上の計画も(地方政府でなく)NDRCによる承認を得る必要がある。
3.資源割り当ての強化、省エネと環境アセスメントの強化
4.行政責任の明確化
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中国では石油価格の高騰を受け、石炭液化計画や、石炭からのメタノール、オレフィン生産などの計画が相次いでいるが、NDRCは早くも2006年7月に石炭化学産業を規制する通達を発表している。
年間300万トン未満の石炭液化計画、年間100万トン未満の石炭からのメタノール又はDMT生産計画、年間60万トン未満の石炭からのオレフィン生産計画を承認しないとした。
更に2009年8月には新産業分野を含め過剰能力について懸念を表し、過剰能力や不必要なプロジェクトなどの問題について行政指導を進めることを決めた。
政府の4兆元の景気刺激策で新エネルギーや環境産業が重点投資分野に指定され、全国各地で投資が増えたためで、特に、石炭化学と、鉄鋼、セメント、板ガラス、ポリシリコン、風力発電分野で指導を強化するとした。
NDRCによると、2009年の規制で石炭化学の過度な拡大を抑えているが、地方政府によってはこれを無視し、勝手に事業を進めており、過度な無節操な拡大は石炭の需給を混乱させ、エネルギー消費抑制を困難にするとしている。
業界筋によると、石炭化学の技術の多くは未完成で、中国のほとんどの大規模計画は商業生産に入れていない。
公害問題と技術ハードルが問題で、いくつかのプラントは完成後もスタートアップが出来ないでいるという。
現在のところ、Coal-to-Methanolだけが相対的に成熟した技術で、オレフィンやMEGは操業が安定せず、品質問題も起こっている。
神華包頭石炭化学の年産60万トンのMethanol-to-Olefinsプラントは未だに商業生産に入れていないという。
2010/7/23 神華包頭石炭化学、秋に中国最初の石炭からのポリオレフィン生産をスタート
加えて、現在の中国の石炭化学は環境面のリスクを抱えており、中国の温室効果ガス削減目標を達成困難にしかねない。
NDRCの今回の通達は、これらを勘案したもので、最低能力を決めるとともに、地方政府の認可権を剥奪し、NDRCの認可を必要とするよう変更した。従来は一定規模以下のものは地方政府に認可権があった。
今回の通達は、石炭資源の効率的な使用と、メタノール過剰能力の抑制を狙っている。
中国のメタノールは、工場が能力の半分程度で稼働しているにもかかわらず、供給過剰となっている。今や石炭からのメタノール生産は赤字となっている。
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