EUは5月14日、中国製の微塗工紙(Coated fine paper)に対し、ダンピング課税及び補助金相殺課税を行うと発表した。
欧州印刷用紙メーカー連合(CEPIFINE)の申請を受けて、2010年2月18日に反ダンピング調査を実施することを決定、その後4月17日に反補助金調査も開始していた。
中国政府がWTOルールで禁止されている低金利のローン、市価以下での土地供給、税優遇措置を供与しているというのが相殺課税の理由。
また、メーカーがEUでダンピングをしていることも明らかになったとしている。
相殺関税は4~12%、ダンピング税は8~35.1%となっている。中国製品に対する最初の相殺関税となる。
EUの印刷企業は、この決定は中国からのコート紙のコスト上昇をもたらすことから反対している。
ヨーロッパ国際政治経済研究センターでは「EUのやり方は法的根拠がない。中国のコート紙のEU市場におけるシェアは4%ほどで、EUの関連産業に損害を与えることはない」と指摘している。
中国商務部はこれに対して強い不満と断固たる反対を表明した。
また中国側はEUの今回の最終決定について詳細な検討と評価を行い、法律に基づいて相応の措置を取る権利を保留して、中国企業の合法的な権利を保護すると指摘した。
中国商務部は5月16日、公告19号を出し、EU原産のポテトスターチに対する反補助金調査でクロの仮決定を下したと発表した。
EU原産のポテトスターチについては、中国は2007年2月にダンピング課税を行い、2010年4月に業界からの適用期間延長申請を受けて再調査を開始した。更に2010年8月に反補助金調査を開始した。
ダンピングについては本年4月18日にクロの最終決定を行ったが、今回、合わせて反補助金でもクロの仮決定を行ったもの。
反補助金調査の結果発表は、EUの発表を受けて、当初予定を早めて行ったと見られている。
ダンピング税率は12.6~56.7%、相殺関税は7.70~11.19%となっている。
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これらの措置は微妙なタイミングで行われた。
EUのHerman Van Rompuy大統領は丁度、初の中国訪問中で、5月16日には北京の人民大会堂で中国の胡錦濤国家主席と会談した。
中国はギリシャ、ポルトガルのほかスペインなど経済危機にある国の国債を購入しており、大統領は「欧州の経済回復に大きな貢献をした」と謝意を伝えた。
中国はユーロ圏の周辺国国債を買い増す用意があることを示唆している。
大統領は声明で「EU経済は順調に回復しており、マクロ経済のファンダメンタルズは全般的に堅調であり、またユーロは世界の投資家が引き続き信頼できる強い通貨だと胡主席に伝えた」と述べた。
一方、胡主席は、EU域内企業の中国への一層の進出やハイテク製品輸出を促すとともに、EUが中国を市場経済国と認定するよう求めた。
「EUが積極的な政策を実施し、対中ハイテク製品の輸出を拡大し、中国市場の経済的地位を認め、中国企業がEU諸国で投資し、経営するチャンスを手に入れられるような環境をつくるよう求める。中欧の経済・貿易協力が新たなステップへと絶えず進展させていけるよう努めたい」と述べた。
市場経済国については 2006/2/27 EU、中国・ベトナムの革靴に反ダンピング税
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