中国の国家発展改革委員会(NDRC)は4月25日、新しい「産業構造改革ガイドライン2011」(産業結構調整指導目録2011)を発表した。本年6月から適用される。
(中国語) http://big5.gov.cn/gate/big5/www.gov.cn/gzdt/att/att/site1/20110426/001e3741a2cc0f20bacd01.pdf
ガイドラインには、「推進」、「制限」、「廃止」の3つのカテゴリーがあり、2005年のガイドラインを見直した。
産業構造を改革し、省エネと排出物削減の達成を狙う。
小規模プラントを段階的に廃止し、エネルギーと資源の効率的な使用を図る。
「制限」の場合、新設の承認を得るのは難しいと思われる。
「廃止」は既存設備の順次停止、廃止。
石油化学分野の内容は以下の通り。
ガイドライン2011 | 注 | ||
品目 | 対象能力 | ||
推進 | Syngas to MEG | 年産20万トン以上 | 技術開発要 |
直接酸化法PO | 15万トン以上 | 技術開発要 | |
併産法PO | 20万トン以上 | 技術開発要 | |
イオン交換法ビスフェノールA | 10万トン以上 | 技術開発要 | |
ホスゲン不使用のPC | 6万トン以上 | ||
制限 | 製油所 | 年産1000万トン未満 | 2005年は800万トン未満 |
接触分解装置 | 150万トン未満 | 2005年は50万トン未満 | |
エチレン(ナフサクラッカー) | 80万トン未満 | ||
アクリロニトリル | 13万トン未満 | 2005年ンは10万トン未満 | |
PTA | 100万トン未満 | 2005年は22.5万トン未満 | |
MEG | 20万トン未満 | ||
SM | 20万トン未満 | オフガス原料のエチルベンゼンは除く | |
酢酸 | 30万トン未満 | ||
メタノール | 100万トン未満 | 自家使用目的は除く | |
PE | 10万トン未満 | ||
PP | 7万トン未満 | ||
アセチレン法PVC | 全ての新規計画 | ||
エチレン法PVC | 30万トン未満 | ||
PS | 10万トン未満 | ||
ABS | 20万トン未満 | 連続塊状重合プロセスを除く | |
廃止 | 製油所 | 年産200万トン未満 | 2005年は100万トン |
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新しい「産業構造改革ガイドライン2011」(産業結構調整指導目録2011)の「制限」される品目にアセチレン法PVC(全ての新規計画)が入っているのが注目される。「制限」品目は、今後の新設の承認を得るのが極めて難しいと思われる。
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アセチレン法では、生石灰とコークスからカーバイドを製造し、カーバイドからアセチレンを製造し、アセチレンと塩酸を反応させ、VCMを製造する。
アセチレンと塩酸の反応過程で塩化水銀を触媒として使用する。
中国政府は水銀法電解は禁止したが、同じく水銀を使用するアセチレン法塩ビはこれまで禁止していない。
これは、中国が大量に輸入をせざるを得ない石油を原料とする(エチレン法)のではなく、中国に大量にある石灰石と石炭(コークス)を原料としたいためである。
中国工業情報化部(MIIT)によると、2009年末時点で中国に104のPVCメーカーがあり、能力合計は1481万トン、うち、カーバイド法メーカーは94で、能力全体の76.5%を占める。カーバイド法の生産量は580万トンで、生産量合計の63.4%を占める。
国連環境計画(UNEP)によると、2005年ベースの中国のカーバイド法VCMでの水銀使用量は700~800トンにものぼる。
(中国全体の水銀使用量は1425~1845トン、中国を除く東アジア、東南アジア全体の水銀使用量は452~608トン)
中国では水銀による事故が多発しており、工業情報化部は、UNEPの動きも踏まえ、2010年5月31日付で通達261号「カーバイド法塩ビ業界水銀汚染総合防止管理通達」を出した。
水銀による事故防止対策が目的だが、今後、水銀条約の発効により水銀の輸入が出来なくなることへの対策も含んでいる。
カーバイド法PVC業界の水銀の管理を強化し、水銀汚染を防止するもので、 | |
・ | 2012年までに低水銀触媒の使用を50%にし、塩化水銀の使用量を25%減らし、使用済み水銀触媒の回収をリーズナブルなレベルで行う塩酸深度脱吸技術普及率を50%以上とする |
・ | 2015年までに低水銀触媒の使用を100%にして、使用量を50%減らし、使用済み水銀触媒を100%回収する |
というもので、対策等を詳細に述べている。 |
2011/1/18 水銀条約とPVC
今回は初めて、アセチレン法PVCの新設の禁止を打ち出した。
しかし、既存のアセチレン法PVCについては禁止の対象となっていない。
小規模で環境汚染の問題を抱える設備については今後、規制が行われると思われるが、大規模設備については今後も操業を認めると思われる。
また、ダウと神華集団が計画している大規模石炭化学計画では、石炭→メタノール→オレフィンを原料とするPVC50万トンの新設を含んでいる。
アセチレン法が石炭ベースのエチレン法PVCに代わる可能性もある。
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各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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