後発医薬品(ジェネリック)メーカー最大手、イスラエルのTeva Pharmaceutical は5月2日、米Cephalonを68億ドルで買収することで合意したと発表した。
2011年第3四半期にも取引が完了する見込み。
Cephalonは1987年にバイオテクノロジー会社としてスタート、世界のトップ10のバイオ医薬品会社に成長した。
Cephalonに対しては3月29日にValeant Pharmaceuticals が約57億ドルでの非友好的買収を発表した。
Cephalonの2010年の売上高は2,811百万ドル、Valeantは1,181百万米ドルで、成功すれば小が大を呑むかたち。
Valeant Pharmaceuticalsは2010年9月にカナダのBiovail Corporation が米国に本拠を置くValeant Pharmaceuticalsを33億ドルで買収、統合し、社名をValeant Pharmaceuticalsと改称したもの。
これに対しCephalonは4月5日、株主の利益に合わないとして、これを拒否し、株主には応じないよう推奨した。
提案価格は同社の価値を十分反映したものではないとした。
直後に、Teva がValeant の提案を上回る価格を提示し、Cephalonの取締役はこれを承認した。
Valeant 側はこれに対抗せず、買収提案を撤回した。
Tevaについては、2010年に米国のFDAが同社の売上高全体の21%を占める主力の多発性硬化症治療薬Copaxone について競合治療薬を承認したため、販売減少の懸念が広がっていた。
今回の買収により、売り上げの落ち込みを補完する。
Tevaは今回の買収のメリットとして、以下を挙げている。
・ 中枢神経系、癌、呼吸器系などの主分野を拡大し、疼痛管理などの新分野に進出
・ 販売面、R&D面の強化
・ 利益増
・ Mephaを加えることにより、成長著しい新興諸国での活動を強化
(2010年2月にCephalonはスイスのジェネリック医薬会社Mepha AG を約590百万ドルで買収した。)
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Teva Pharmaceutical は後発薬国内3位の大洋薬品工業の買収に向けて交渉していると報道された。
関係者によると、Tevaは大洋の創業家などから同社株の過半数を取得して経営権を握る意向を示しており、買収金額は、数百億円規模で交渉している模様(日経は400億円前後としている)。
大洋薬品工業は1930年に高山市に中野天栄堂として創業、1949年に中野薬品工業と改組、1972年に大洋グループの一員となり、大洋薬品工業と改称した。
豊富な品ぞろえに加え、新薬の受託生産も行うことで急成長してきた。
2010年3月期の売上高は469億円、営業利益59億円、当期利益26億円。昨年、調合ミスにより承認規格外の製品を製造、出荷したことで、岐阜県から薬事法に基づき9日間の業務停止命令を受け、混乱の責任をとって社長が交代した。
信用力の回復と規模拡大に向け、資本提携先を探している。
付記
Tevaは5月16日、大洋薬品の創業家などから株式の57%を460百万ドルで取得する契約を締結したと発表した。更に残る株式全部について買収するオファを行う。
Tevaは2005年に日本法人を設立し、2008年には中堅製薬会社の興和と後発薬の合弁会社の興和テバを設立している。
2008/9/26 ジェネリック医薬品の世界最大手、日本進出
Tevaは生産では大洋、販売は興和テバを中心にする戦略とみられる。
大洋、興和テバを含めると、Tevaグループの後発薬の売上高は日医工を上回り国内首位となる見通し。
ジェネリック医薬品メーカーの売上高 日医工 643億円 (2010/11) 沢井製薬 500億円 (2010/3) 大洋薬品 469億円 (2010/3) 東和薬品 390億円 (2010/3)
国内の後発薬市場は約8000億円。医薬品全体に占める後発薬の比率は数量ベースで2割程度で、5割以上の欧米に比べ普及が遅れている。
ジェネリック医薬品のシェア(2011/4/25 日本ジェネリック製薬協会発表)
2009年度 2010年度3Q 出荷数量 20.3% 23.1% 薬価ベース金額 8.5% 9.4%
厚生労働省は患者負担の軽減や医療費抑制を目的として普及を推進しており、今後、需要が増えることが予想される。
このため、有力企業が相次ぎ参入し、競争が激化している。また、海外のジェネリック医薬品メーカーも多数進出している。
2010/3/5 日本のジェネリック市場の動き
Sanofi Aventis は2010年5月、日本でジェネリック医薬品事業を展開するため、後発薬最大手の日医工に4.66%出資するとともに、Sanofi 51%、日医工49%出資で日医工サノフィ・アベンティスを設立することを発表した。
世界のgeneric医薬品メーカー大手は以下の通り。医薬品大手が含まれている。
シェアは日経推計 (2011/5/3)
企業 | 国 | 備考 | シェア (%) |
日本の活動 |
Teva Pharmaceutical | イスラエル | 米国 Barr Pharmaceuticals を買収 ドイツRatiopharmを買収 |
12.0 | 興和テバ |
Sandoz | ドイツ | Novartis のgeneric 部門 | 6.3 | サンド |
Mylan | アメリカ | ドイツMerck のgeneric部門買収 インド Matrix Laboratories を買収 |
4.0 | マイラン製薬 |
Watson Pharmaceuticals | アメリカ | Andrx を買収 | 1.7 | |
Greenstone | アメリカ | Pfizerのgeneric 部門 | ファイザー | |
Apotex | カナダ | |||
Stada Arzneimittel | ドイツ | |||
Winthrop | 英国 | Sanofi-Aventis のgeneric 部門 | ||
Bayer | ドイツ | |||
Actavis Group | アイスランド | 米 Amide Pharmaceutical を買収 米 Alpharmaを買収 (AlpharmaはCoxを含む Hoechstのgeneric部門を買収) |
あすかActavis製薬 | |
Dr. Reddy's Laboratories | インド | |||
Ranbaxy Laboratories | インド | 第一三共が買収 | ||
Sanofi Aventis | フランス | 日医工サノフィ・アベンティス |
目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
いわゆるメガファーマのジェネリックはブランドジェネリック事業ではないでしょうか。
ブランドジェネリックも含めると、AbbottのインドPiramal社のブランドジェネリック部門やベルギーのSolvayの医薬部門等(ジェネリック中心)を買収し、統合して、Established Pharmaceuticalsとして、年商US$5.0Bを見込んでいるようです(インドでは1位の製薬会社になるそうです)。
http://phx.corporate-ir.net/External.File?item=UGFyZW50SUQ9NDE4MTk3fENoaWxkSUQ9NDMxMDY1fFR5cGU9MQ==&t=1
テバの様な純粋?ジェネリックとメガファーマのブランドジェネリックとの競合も興味深そうです。
情報有難うございます。
AbbottのSolvay医薬品買収の記事にインドの件を追加しました。
2009/10/2 Abbott、Solvayの医薬品事業を買収
http://www.knak.jp/blog/2009-10-1.htm#abbott-solvay