出光興産は5月10日、東証二部上場の農薬会社SDSバイオテックに対するTOBと資本業務提携を発表した。
SDSバイオテックを連結子会社とすることを目的とするもので、筆頭株主のMH キャピタルパートナーズⅡLPからは、所有全株(持株率 53.39%)についてTOBに応じるとの合意を得ている。
TOB価格は、普通株式1株につき960 円、新株予約権1個につき1円となっており、53.39%分は40億円となる。
TOBには上限を設定していないが、出光興産では上場廃止を企図したものではないことから、安定株主の取引先等12 社(持株率 27.22%)に対し、TOBに応募せず、継続して保有するよう要請した。
他の株主: 昭和電工 14.51% 大塚アグリテクノ 2.56% みずほ銀行 2.11% 日本農薬 2.11% フマキラー 2.11% 丸善薬品産業 2.11%
TOBが成立した場合、出光とSDSは、相互の利益拡大及び企業価値向上を目的として、以下の業務提携を行う。
(ⅰ)天然系農薬等大型新規剤の共同開発
(ⅱ)出光アグリ向けの商品開発及び販売
(ⅲ)アジアを中心とした世界市場への共同展開
(ⅳ)SDSの大型剤買収案件の出光による支援
(ⅴ)出光の欧米を中心とした世界市場における生物農薬事業拡大に向けたSDSによる支援
出光アグリは出光興産と東海物産が、両社の保有する農業・緑化資材、栽培資材・栽培施設などを共同で販売するため、出光60%、東海40%で2011年4月1日に設立した。
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SDSバイオテックは、1968年に昭和電工とDiamond ShamrockのJVとして設立された昭和ダイヤモンド化学を前身とする。
1983年、昭和電工とDiamond Shamrock は農薬・動物薬事業における全世界での提携を発表した。
米国に50/50JVのSDS Biotechを設立し、Diamond Shamrockの農薬・動物薬事業を引き継いだ。
昭和ダイヤモンド化学はSDSバイオテックと改称し、昭電から農薬事業を譲受けた。
(SDSはShowa Denkoと、Diamond Shamrockから取った。)
その後、Diamond Shamrock は化学品部門の売却を余儀なくされたため、昭電は1985年にSDS Biotech 持株を売却し、SDSバイオテックを100%子会社にした。
SDS Biotechはその後、一時、石原産業が買収してISK Biosciences と改称したが、現在はSyngenta の1部門となっている。
日本のSDSバイオテックは、一時、昭電とSandoz(その後SandozとCiba Geigyの合併によりNovartis)の50/50JV となったが、1998年にNovartis が資本を引き上げ、昭電100%に戻った。
2005年に昭和電工はSDS バイオテックをMBOの手法で分離・独立させ、「みずほキャピタルパートナーズ」が運営するMH キャピタルパートナーズⅡLPが83.1%、昭和電工が14.9%とした。
2008年にジャスダック証券取引所、2009年12月に東京証券取引所第二部に上場した。
2006/12/12 SDS バイオテックとSDS Biotech
同社は、研究開発型の農薬原体メーカーとして、防除効果に優れ、安全性が高く環境に配慮した製品の開発を続け、現在では特に水稲除草剤、野菜・果樹向け汎用殺菌剤の分野に強みを有し、売上高の約3割は東南アジアを中心とした海外となっている。
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出光興産は2010年4月に、“長期ビジョン2015”と“第3次連結中期経営計画”を発表し、
①「基盤事業」における競争力強化・海外成長市場への事業拡大、
②「資源事業」における生産規模拡大・探鉱開発強化、
③「高機能材事業」における環境配慮型商品の開発強化・グローバル展開による事業拡大
の3つを基本戦略とした。
同社の「高機能材事業」の一つであるアグリバイオ事業の農業分野においては、微生物応用技術をコア技術として、各種生物農薬の開発、販売に注力している。
しかし、アグリバイオ事業の推進のためには、生物農薬のコア技術に加え、これを補完する化学農薬(特に除草剤)の品揃えも充実させていくことが必要であると考え、今回、SDSを子会社とすることとした。
同社では今後、生物農薬分野における世界のトップメーカーを目指して、アライアンスやM&Aにも取り組みながら、さらなるグローバル展開を図るとしている。
農業分野:微生物防除剤(殺虫剤、殺菌剤)/土壌改良材
使用している微生物:VA菌、アゾ菌・根粒菌、納豆菌(バチルス菌)
緑化分野:環境・緑化関連資材(芝生用除草剤、液体微量要素複合肥料、フェロモン誘引剤など)
畜産分野:畜産関連資材
ヘルスケア分野:γ-リノレン酸(化粧品用)
世界で唯一、微生物を用いた発酵法で生産
目次、項目別目次
https://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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