中国の国家発展改革委員会(NDRC)は5月6日、Unileverが値上げの情報をむやみに流して消費者の値上げ観測をあおったとして、同社に200万元(約2500万円)の罰金を科したと発表した。
NDRCは、Unileverが「原料のコストアップのため、洗剤や石鹸の値上げをせざるを得ない」という情報をメディアに流し、これが報道されたため、パニック買いが起こったと批判、消費者の間でインフレ懸念を増強し、市場秩序を著しく歪めたとしている。
不安に駆られた消費者が日用品の買いだめに走り、スーパーなどで日用品が売り切れる騒ぎに発展した。
Unileverの売り上げは、この報道の後、通常レベルの100倍にもなったとされる。
NDRCでは、Unileverのシャンプー、スキンケア、洗剤がそれぞれ国内市場で12%、12.6%、15.2%のシェアを占めるため、事前に値上げの話をするのは、業界全体の値上げにつながるとみたと述べている。
NDRCはUnileverの行為が中国の価格法に違反すると判断し、このことは証拠で明らかであるとしている。
価格法での罰金の最高は300万元、悪質な場合は業務停止となる。
なお、NDRCでは、値上げ共謀の場合は更に厳しく罰するが、Unileverの場合は共謀の証拠はないとしている。
Unileverは当初、洗剤や石鹸など主要製品を4月から5~15%値上げする方針だったが、当局の調査が入った時点で撤回した。
同社は、「今後も中国で仕事をしていく企業として、中国の事情をよく考えて行動する」と述べ、NDRCと上海物価局の決定を受け入れるとの声明を発表した。「中国の法と規則及び当社のグローバル事業原則を遵守する」 としている。
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中国の消費者物価指数は本年3月に前年比5.4%アップし、過去32か月で最大のアップとなった。
中国共産党は7月に90周年を祝うが、物価安定を最優先課題としている。
中国政府はインフレを抑えるのに必死になっており、今回の措置は中国政府の姿勢の現れである。
NDRCの価格部門は4月中旬に、農薬、医薬、繊維、台所用品など、24の業界団体を呼び、メンバー企業に対して、計画している値上げを遅らせたり、止めたりするよう求めることを命じた。
中国のインスタントラーメン市場の過半を制する食品メーカー康師傅(Tingyi)は、過度な値上げをしないよう警告を受けた。
シンガポールのアグリビジネス企業Wilmar International や、スナックのメーカーの中国旺旺 (Want Want China)も値上げ中止を求められた。
中国の日用品市場はUnileverのほか、Procter & Gambleと地場系2社の合計4社が全体の8割のシェアを握っており、各社とも4月からの値上げを計画していたが、当局はUnileverのみを厳罰に処した。
NDRCでは「悪い慣行を打破し、新ルールをつくるため、厳しい罰則を科した。他の企業もこれを教訓にしてほしい」としている。
今回の措置で、消費財メーカーの間では、中国ではコストアップを消費者に転嫁できないのではとの懸念が高まっている。
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