米国最大の化学品のディストリビューターのAshlandは6月3日、特殊化学品とパーソナルケア製品などのメーカーのInternational Specialty Products (ISP)を買収すると発表した。
買収金額は約32億ドルで、全額現金で支払う。
ISPは1942年にIG Ferbenから独立したGeneral Aniline & Filma(GAF)の化学品子会社GAF Chemicals Corporationであったが、1991年に株式公開し、現在の社名となった。当初、GAFが80%を保有していたが、その後、GAF株主に分配し、現在は無関係。
米国ニュージャージー州 Wayneに本拠を置き、米国に9工場、ドイツに1工場を擁し、さらにベルギーに新工場の整備を計画中。
500品目以上のスペシャルティケミカル製品を、世界70カ国を越える営業拠点から90カ国に展開する販売ネット を通じて販売している。
2011年3月度決算では売上高は約16億ドル、EBITDA(支払利息・税金・償却前利益)は約3億6000万ドル。
ISPの扱い製品は以下の通り。
Personal Care ヘアケア(各種スタイリング剤、毛髪保護剤等)
スキンケア(サンスクリーン剤、懸濁剤、乳化剤、防腐剤、保湿剤、増粘剤等)Pharmaceuticals 製剤化原料としてPVP(ポリビニルピロリドン)・PVPP・PVPコポリマーなどを全世界に供給 Foods & Beverages 料清澄安定剤のPOLYCLAR、アルギン酸、Hydrocollids類、食品向け製剤品 Industrial Chemicals ポリマー(エマルジョン、塗料、インク用分散安定剤、各種コーティング用ポリマー)
溶剤(各種反応溶剤、剥離剤、工業洗浄剤、ノニオン界面活性剤、エレクトロニック溶剤)
モノマー(UV/EB硬化用ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニルエーテル)
中間体(各種化学合成原料としてのアセチレン付加誘導体)
アドバンスドマテリアル(カルボニル鉄還元パウダー/CIP)
エラストマー(スチレンブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム)
工業用バイオサイド(防腐剤、防黴剤、防藻剤)Agriculture 各種ポリマー・溶剤・中間体・乳化剤・アジュバント(フォーミュレーションサポート) Fine Chemicals 光学活性医療中間体や各種写真薬などの受託生産
Ashlandはこの買収により、機能材料事業に水溶性ポリマーやその他の先進技術を、食品・飲料、エネルギー、コーティング、固着剤、水処理等の事業を補完する添加剤を確保する。
Ashland の会長兼CEOの James J. O’Brienは、「今回の取引によって、当社は個人医療や製薬などの高利益率かつ高成長で、景気循環の影響を受けにくい世界市場における当社の市場ポジションを大幅に拡大することができる。この取引によって、当社はスキン、ヘア、オーラルのケアなど魅力的な成長分野でプレゼンスを広げることになる。さらに、われわれは当社の最も利益率の高い機能性原料ビジネスの規模を2倍以上にすることを期待している」と語った。
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Ashland は2008年7月、約33億ドルでHercules を買収する契約を締結したと発表した。
Ashland では両社の合併により、3つのコア事業が出来ると述べている。
・specialty additives and ingredients
Hercules のwood rosin 製品(Aqualon) は接着剤、ペイント、食品、医薬品、化粧品等広く使用されている。
統合により、この事業からEBITDAの1/3が産み出される。
・paper and water technologies
両社事業の統合により売上高20億ドルのグローバルなpaper and water technologies 事業が誕生
・specialty resins
Ashland の得意分野で、Ashland の商事部門と自動車用品部門(Valvoline) が補完する。
2008/7/14 Ashland がHercules を買収
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このところ、スペシャルティ分野での買収が相次いでいる。
昨年12月にBASFがCognisを買収した。
2010/6/24 BASF、 特殊化学品メーカーのCognisを買収
Cognisについては、潤滑油メーカーのLubrizolも買収に意欲を持ち、交渉をしていた。
LubrizolはAdditives部門とAdvanced Materials部門を持つが、後者ではEngineered polymersに加え、Consumer Specialtiesを扱っており、ローションやシャンプーなどのパーソナルケア製品の増粘剤の最大のメーカーでもある。
同社はパーソナルケア分野での拡大を目指している。
そのLubrizol をWarren Buffettが率いるBerkshire Hathawayが本年3月に97億ドルで買収した。
Warren Buffettは、Lubrizol はいくつかの分野でグローバルリーダーであり、我々が組むのにふさわしいとし、現在の経営陣に対し、これまで通りやって欲しいとだけ指示した。
昨年12月には、Royal DSM はDSM Elastomers をLANXESSに売却することで合意した。
2010/12/20 LANXESS、DSM Elastomersを買収
本年4月にSolvayがRhodiaの株式100%の友好的買収オファーを行った。
2011/4/12 Solvay、Rhodiaを友好的買収
なお、Lanxessがベルギーに本拠を置くアルキルアミンとその誘導品のメーカーのTamincoを株主の CVC Capital Partnersから14億ドルで買収する交渉をしていると報じられている。
同社の社名は "The AMINe COmpany" から採っている。
2003年10月に投資会社AlpInvestがメイン株主となって、ベルギーの製薬会社UCBから分社化した。
2007年7月、CVC Capital Partners がAlpInvestから買収した。経営陣が25%を出資している。
昨年10月に三菱ガス化学は中国のメチルアミン誘導品子会社の50%をTamincoに譲渡し共同経営していくことで合意したと発表した。
2010/10/30 三菱ガス化学、中国のメチルアミン事業でTamincoと提携
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