Eastman Chemical は6月22日、Sterling Chemicalsを現金1億ドルで買収する契約を締結したと発表した。
Sterling はTexas City のBPのプラント(PX及びMXプラント)に隣接し、酢酸と可塑剤のプラントを持っている。
酢酸は年産能力58万トンで、全量をBPに供給している。
可塑剤は全量をBASFに供給していた。しかしBASFは2010年末で購入契約を終結させた。このため、現在は休止中。
Eastman ではSterling の現在休止中の可塑剤設備を再稼働し、Eastman168などを含む非フタル酸系可塑剤を製造する計画で、非フタル酸系可塑剤の需要の伸びに対応する。
フタル酸エステル系可塑剤は各国で規制されている。
米国では、
DEHP、DBP、BBPはおもちゃと育児用品に使用禁止
DINP、DIDP、DNOPは子供の口に含まれる可能性があるおしゃぶりと育児用品に使用禁止
おもちゃは12 歳以下
育児用品は3 歳以下の子供を意図した製品DEHP:フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、 DBP :フタル酸ジブチル、BBP :フタル酸ブチルベンジル
DINP :フタル酸ジイソノニル、DIDP :フタル酸ジイソデシル 、 DNOP:フタル酸ジノルマルオクチル
付記
Eastman Chemical は9月1日、ブラジルの可塑剤メーカーのScandiflex do Brasil S.A. Indústrias Químicasを買収したと発表した。
ラテンアメリカでの非フタル酸系可塑剤の需要増大に対応する。
同社はまた、EstoniaのKohtla-Järve工場で可塑剤Benzoflexの11千トン増設を発表。更にChestertown, MDとKingsport, TNでのBenzoflex及び高分子可塑剤Admex の合計9千トンの増設計画も発表した。
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Sterling はMonsanto のTexas Cityの工場を買収し、運営するため、1986年に設立された。
工場では、スチレンモノマー、アクリロニトリル、酢酸、可塑剤、ターシャリブチルアミン、シアン化ナトリウムの6製品を生産していた。
Sterling は1992年に Tenneco Canadaからパルプケミカル部門を買収した。パルプの漂白剤の塩素酸ナトリウムの工場をカナダに4つ所有している。
同社はその後、ジョージア州Valdostaに年産11万トンの塩素酸ナトリウム工場を建設した。
更に、豪州New South Walesでの工場建設を発表した。(実現せず)
しかし、同社は経営が悪化、2001年7月にChapter 11を申請した。
同社は再建のため、カナダとValdostaの塩素酸ナトリウム工場を売却した。
カナダはCanexus (旧称 Nexen Chemicals)に、Valdosta工場はErco Worldwideに売却。
アクリロニトリル事業については赤字が続き、2005年に撤退した。
ターシャリブチルアミンはMonsantoのゴムの生産に使用されていたが、1995年にMonsantoから分離したSolutia とAkzo Nobelが両社のゴム薬品事業を統合して、50/50JVのFlexsysを設立した際に、Solutiaがこの事業を買い戻した。
(その後、2007年にSolutiaがAkzo持分を買収し、現在はSolutiaの100%子会社となっている。)
スチレンモノマープラント(775千トン)は2007年のINEOS NOVA発足に当たり、NOVA Chemicalsがスチレンモノマーの独占権を取得したが、米国のスチレン過剰対策として、同年10月にプラントを買い取ったうえで、停止した。
シアン化ナトリウムについては全量をDuPontに供給していたが、2005年に契約を打ち切り、停止した。
この結果、現在は酢酸と可塑剤だけで、可塑剤は停止している。
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