5月7日の記事で、54の原発のうち、稼働中22基、定期検査等での停止中21基、震災で停止中11基と伝えた。
2011/5/7 菅首相、浜岡原発の全炉の運転停止を要請
その後の状況は以下の通りで、稼働中は19基、停止中は35基である。
稼働中 22基→19基(22-5+2)
首相の要請を受けて浜岡④、⑤が停止した。
美浜③、川内①が定期検査入りした。
敦賀②が1次冷却水へ燃料漏れで5月7日に手動停止した。逆に、定期検査中の2基(泊③、大飯①)は法律的には定期検査の期間内だが、調整運転に入っており、定格出力で送電しているため、稼働中に振り替えた。
定期検査等での停止 21基→21基(21+5-2-3)
上記の追加停止分 5基
調整運転中で「稼働中」へ -2基
柏崎刈羽②③④は中越沖地震による停止のため、「震災で停止中」に。 -3基このうち、トラブル停止は志賀①(2月28日 手動停止)、敦賀②(上記)の2基。
震災で停止中 11基→14基
柏崎刈羽②③④ (中越沖地震による停止)
なお、東電は福島第一①~④の廃炉と⑦⑧の中止を決定した。
各原発の状況と、稼働中原発の今後の定期検査の時期は以下の通り。(*は調整運転中)検査月 一部修正
発電所名 | 電力会社 | 能力(万KW) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
稼働中 | 定期検査 | 定期検査 等で 停止中 |
震災で 停止中 |
廃炉 | 建設中 | 計画 | |||
2011 | 2012 | ||||||||
泊 | 北海道電力 | ②57.9 | 8月 | / | ①57.9 |
/ | / | / | / |
③91.2 * | / | ○ | |||||||
東通 | 東北電力 | / | / | / | ①110 | / | / | / | ②138.5 |
東京電力 | / | / | / | / | / | ①138.5 | ②138.5 | ||
女川 | 東北電力 | / | / | / | / | ①52.4 ②82.5 ③82.5 |
/ | // | // |
福島第一 | 東京電力 | ④78.4 ⑤78.4 ⑥110 |
①46.0 ②78.4 ③78.4 |
廃炉決定 | ⑦138 ⑧138 中止決定 | ||||
福島第二 | 東京電力 | / | / | / | / | ①110 ②110 ③110 ④110 |
/ | / | / |
東海 | 日本原子力発電 | / | / | / | / | ②110.0 | ①16 | / | / |
柏崎刈羽 | 東京電力 | ①110 | 8月 | / | / | 中越沖地震 ②110 ③110 ④110 |
/ | / | / |
⑤110 | / | 3月 | |||||||
⑥135.6 | / | 4月 | |||||||
⑦135.6 | 8月 | / | |||||||
浜岡 | 中部電力 | ③110 要請 ④113.7 ⑤138 |
①54 ②84 |
⑥138 | |||||
志賀 | 北陸電力 | / | / | / | ①54 (トラブル) ②135.8 |
/ | / | / | / |
敦賀 | 日本原子力発電 | / | / | / | ①35.7 ②116 (トラブル) |
/ | / | / | ③153.8 ④153.8 |
美浜 | 関西電力 | ②50 |
12月 | / | ①34 ③82.6 |
/ | / | / | / |
大飯 | 関西電力 | ①117.5* | / | ○ | ③118.0 | / | / | / | / |
②117.5 | 12月 | / | |||||||
④118.0 | 7月 | / | |||||||
高浜 | 関西電力 | ②82.6 | 11月 | / | ①82.6 | / | / | / | / |
③87.0 | / | 2月 | |||||||
④87.0 | 7月 | / | |||||||
島根 | 中国電力 | ②82.0 | / | 1月 | ①46.0 | / | / | 137.3 (2012/3予定) |
/ |
伊方 | 四国電力 | ①56.6 | 9月 | / | ③89.0 | / | / | / | / |
②56.6 | / | 1月 | |||||||
玄海 | 九州電力 | ①55.9 | 12月 | / | ②55.9 ③118.0 |
/ | / | / | / |
④118.0 | 12月 | / | |||||||
川内 | 九州電力 | ②89.0 | 9月 | / | ①89.0 | / | / | / | ③159 |
合計 | 19基 (調整運転 2を含む) |
12基 | 7基 | 21基 | 14基 |
付記 2011/10/4 玄海4号機自動停止
原子力発電所は、電気事業法に基づき、13か月ごとに原子炉を止めて定期検査を行う。
定期検査期間は、標準的には約3ヶ月程度となっている。
現在稼働中の原発19基のうち、年内に12基が定期検査に入る予定で、残りも2012年中に定期検査に入る。
本来、定期検査後の再開には地元の了承は必要ないが、福島の事故を受け、各電力会社は地元の理解を優先している。
地元の了解を得られない場合、2012年5月に日本の原発は全て停止する。
日本経済新聞 2011/6/8
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福島原発で原発安全神話は壊れた。
原子力安全委員会の班目春樹委員長は6月9日の衆院復興特別委員会で、福島第一原子力発電所の事故について「まさに人災である」と述べ、これまでの国の原子力行政や東京電力の対応に落ち度があったと認め、「津波が想定を超えたからといって、第2、第3の防護手段がなければいけない。実際にそういう手段を講じていなかった」と反省の弁を述べた。
津波対策の設計ミス(予備電源と給水ポンプを屋上に設置すべきであった)であり、原子炉の耐震性には問題なかったとの説がある。
池田信夫ブログ
「東日本大震災は世界史上にもまれな大地震だったが、福島第一原発の最大加速度は448ガルと新耐震基準の想定内だった。1号機は1967年に建設されて老朽化した原子炉だったが緊急停止し、配管の破断も起こらなかった。だから前にも書いたように、今度の事故で日本の原子炉本体の耐震性はむしろ証明されたのだ。」
しかし、津波以前に原子炉が破損したとの推測も多数ある。
電源が喪失した場合でも原子炉内に7~8時間は注水を続けられる冷却機能を原発に備えているとされていたが、1号機では非常用復水器が停止、3号機の高圧注水系も地震でパイプが破損した可能性が大きいとされる。
なお、非常用発電機が水につかり全電源を失ったのは設計ミスではなく、竜巻やハリケーンに備えて非常用発電機を地下に置く「米国式設計」をそのまま採用したためであることが分かった。
1号機はGEなど米国企業が「フル・ターン・キー」で工事を仕切った。国産メーカーの役割が増した2号機以降の設計も、ほぼ1号機を踏襲したという。「米側の仕様書通りに造らないと安全を保証しないと言われ、言われるままに造った」とされる。
浜岡原発で中部電力が津波対策の柱に位置付ける砂丘について、中部電力が、東海地震時の津波にどの程度えぐられ耐えられるのか、具体的な検証をしていないことが分かった。中電土木建築部幹部が中日新聞に「どの程度砂丘が削られるか計算はしていない」と証言した。中部電力ホームページでは以下の説明をしている。
津波に対する安全性
痕跡高などの文献調査や数値シミュレーションの結果、敷地付近の津波の高さは、満潮を考慮しても、最大でT.P.+6m程度です。
これに対して、敷地の高さは津波の高さ以上のT.P.+6~8mであり、津波に対する安全性を確保しています。
さらに、敷地前面には、高さがT.P.+10~15m、幅が約60~80mの砂丘が存在してます。また、安全上重要な施設を収容している原子炉建屋などの出入口の扉は防水構造にしています。
これらのことから、浜岡原子力発電所は、津波に対する安全性を十分に確保しています。
原子力安全・保安院は6月9日、電源が多重化されていないため外部電源が喪失すると復旧に時間がかかる原子力関連6施設を報告した。
対象となった施設は敦賀原発、四国電力の伊方原発1、2号機、東北電力の東通原発、Jパワーの大間原発、日本原燃の六ケ所再処理施設、日本原子力研究開発機構の東海再処理施設で、それぞれ1カ所の変電所から送電線を引くため、地震などで変電所が長期停電すると早期に復旧できない恐れがある。
このような状況下で原発の稼働という決断を自治体に押しつけるのには無理がある。
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関西電力は6月10日、企業や家庭にピーク時(7月1日から9月22日の平日9時から20時までの間)、最大消費電力を前年比15%削減するよう要請すると発表した。合わせて要請期間中は東京電力などへの電力融通をやめることも表明した。
これに対し、大阪府の橋下徹知事は、関電の姿勢を激しく批判。「根拠が分からず納得できない。東京でも15%一律削減なんてない中で、なぜ関西だけが、そこまでやらなきゃいけないのか。『原子力発電所が必要でしょう』という議論に持っていかせるためのブラフとしか、今のところ見えない」と述べた。
目次、項目別目次
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各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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