イタリア、国民投票で原発反対

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原子力発電再開の是非などを問うイタリアの国民投票は6月13日に締め切られ、成立条件の過半数を上回る投票率に達し成立した。国内投票分の開票で原発反対票が94.53%となり、同国の原発建設は将来的にも不可能になった。
原発を推進してきたベルルスコーニ首相は敗北を認め、「イタリアは原発にさよならを言わなければならないだろう」と述べた。

イタリアは1986年のチェルノブイリ事故をきっかけに原発に反対する世論が高まり、1987年行われた国民投票の結果、原発の建設や運転が禁止された。
1990年に原発を全廃し、現在、原発はゼロ。

その後、慢性的な電力不足を抱えながら、フランス、スイス、スロベニアなど隣国からの輸入で、かろうじて電力需要をまかなってきた。

ベルルスコーニ首相は脱原発政策を転換、2009年2月にフランスと協力協定を結び、イタリア国内で原子力発電所を4基建設し2020年までに運転を始めると発表した。

これに対し、再開に反対する野党などが署名を集め、国民投票の実施を求めて憲法裁判所に提訴、憲法裁判所は本年1月、原子力発電所の再開について、国民投票で是非を問うことを認める判決を下した。

その後に起こった福島原発事故が今回の結果に与えた影響は大きいと思われる。

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欧州各国の状況は以下の通り。なお、日本には現在54基ある。

フランス:59基 推進

原発による電力供給の比率が世界一の75.1%(日本は29%、アメリカ20%)という原発大国。
ドイツ、英国、イタリアなどの近隣諸国にも電気を輸出している。

英国:19基 推進

英国の公共放送TV Channel 4 の長編ドキュメンタリー「The Global Warming Swindle(地球温暖化詐欺)」では、炭鉱ストに怒ったサッチャーが原子力への移行を狙い、CO2温暖化仮説を利用したとしている。

政府は2008年、今後予測されるエネルギー需要を満たすため、2025年まで原発建設を推進する計画を発表した。
7カ所で原子炉12基を建設する。

ドイツ:17基 閉鎖へ

2002年に原子力法改正で脱原発を決定。
  脱原発期限は2021~23年

政府は2010年秋、原発全廃方針を転換し、原発延命に転じていたが、福島第一原発の事故を受け、本年3月に原発の運転を延長する政策を3カ月間凍結した。

2011年6月、2022年までにすべて閉鎖を閣議決定した。
 運転一時停止中の8基はそのまま閉鎖。うち1基は「予備機」として2013年まで温存
 残る9基は、2015年、17年、19年に1基ずつ、2021年に3基、22年に最後の3基を閉鎖する。
メルケル首相は、「フクシマが私の考えを変えた」と述べた。

なお、ドイツは原発停止で不足する電力を隣のフランスから輸入する。

スウェーデン:10基 廃止方針を修正

1980年に国民投票で世界初の脱原発を決めた。 
   2010年までに原子力発電所を段階的に廃止する。

2009年2月、政府が1980年の方針を修正。
  エネルギー構造の転換は今後も続けていく。
  既存の10基の原子炉の寿命が来た際に必要なら(代替不能なら)更新を認める。

スペイン:8基 維持

1983年に左派ゴンザレス政権が原発の建設凍結(モラトリアム)を宣言、9基の建設計画が凍結された。

政府は老朽化したガロナ原発を2013年に閉鎖することも決めている。
残り7基については2020年まで運転を続ける方針だが、コフレンテス原発の10年間延長で反対運動が起こっている。

ベルギー:7基 維持

1999年6月に連立政権が発足し、2003年1月には脱原子力法が成立した。
  運転中の7基が2015年から2025年にかけて順次閉鎖、新規建設も禁じた。

しかし、電力の安定供給への懸念、地球温暖化ガス削減目標の達成や代替エネルギー確保に伴う電気料金の高騰などにより、2009年10月に政府は2015年閉鎖予定のドール1、2号機、チアンジュ1号機の運転を条件つきで10年間延長することを発表した。

チェコ:6基 推進

国営電力CEZはテメリンに2基、南東部ドゥコバニー(Dukovany)で1基、スロバキアで最大2基を増設する計画で、原子力安全局は福島第1原発の事故を受けても、原発拡大計画の見直しを直ちには行わない方針を明らかにしている。

スイス:5基 閉鎖へ

脱原発法は、1979年、1984年、1990年の各国民投票ですべて否決されたが、1990年の国民投票で「今後10年間の新規原発建設凍結、原発の存続と効率的なエネルギー政策推進」が可決した。

福島原発事故後、ドイツに続き「脱原発」政策にかじを切った。
政府は5月25日、国内に5基ある原発を、寿命を迎える2034年までに廃炉とし、改修や新規建設はしないとの国家目標を決めた。

オランダ:1基 維持

1995年に政府が原発新設計画を無期延期、1997年には28年間運転した原発1基を閉鎖した。

残る1基は1994年に「30年運転後の2003年末に閉鎖する」と議会決定したが、高等行政裁判所が議会決定を違法と裁定、新政権が40年運転を認める方針を決めた。

政府は2005年9月、原発の寿命を60年に延長、2033年まで運転継続することを公式発表した。

政府は原発増設を進めているが、経済大臣は新原発建設には日本での事故を当然考慮にいれると述べた。

オーストリア:0 禁止

1971年には原発の導入を決定、翌年、同国初の原発が着工され、1976年にはさらに国内3カ所で原発が計画された。

しかし、1978年11月、完成していた原発1号機の稼動開始の可否を問う国民投票で、「反対」が過半数を獲得、稼動が見送られた。

1999年、連邦憲法に「オーストリアで核兵器を製造したり、保有したり、実験したり、輸送したりすることは許されない。原子力発電所を建設してはならず、建設した場合にはこれを稼動させてはならない」の項が盛り込まれた。

ポーランド:0 推進

政府は1980年代初期に、2000年完成を目標に原子力発電所の建設に踏み切った。

このあと1990年11月、議会が旧ソ連型炉の安全性に対する懸念や資金問題、住民の反対運動などを理由に「2010年まで原子力発電所を導入しない」ことを決定し、建設中の原発を解体・整地することを決めた。

政府は、2005年1月に、2021~2025年の運転開始を目指したポーランド初の原子力発電所の建設計画を了承した。

福島原発事故を受け、中道右派政権は、原発計画を中断しない方針を明らかにしているが、連立政権を組むポーランド農民党が、原発導入の是非を問う国民投票の実施を求めている。

 


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今回のイタリアの脱原発国民投票ですが、賛成派は投票棄権でよく、反対するには投票する必要がありました。なので実情は、反対が投票率の57%、賛成が43%です。ご参考までに。

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