日本赤十字社と田辺三菱製薬、血漿分画事業統合の検討開始

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田辺三菱製薬と日本赤十字社は6月17日、田辺三菱製薬の子会社血漿分画製剤の製造販売会社のベネシスと日本赤十字社のそれぞれの血漿分画事業部門を2012年4月1日を目途に統合する検討を開始することに合意した。

新法人は、献血者の善意に基づき無償で得られた血液を原料とした血液製剤の国内自給の達成という公益性の高い目標のために取り組む営利を目的としない法人とする。

血漿分画製剤の国内必要原料を一括して処理できる能力を持つ大規模
アルコール分画工場の新設を行い、効率的な生産体制によって血液製剤の国内製造における中核的役割を担うことを目指す。

血漿分画製剤は 、献血で得られた血漿成分をプールして、治療に有益なタンパク質を取り出し、高純度に精製したもので、以下のものがある。

 ・アルブミン製剤:
出血性ショック、熱傷、難治性ネフローゼ、低蛋白血症
     (血液中の水分などを血管内に保持、種々の物質を運搬)

 ・免疫グロブリン製剤:先天性無γ-グロブリン血症、川崎病
     (ウイルスなどの病原体の感染を予防、免疫機能調整)

 ・血液凝固因子製剤(第Ⅷ因子、
第Ⅸ因子、フィブリノゲン、アンチトロピンなど):出血の際の止血、血友病

これらの製造は、ハーバード大学のEdwin J. Cohn 教授が開発した低温エタノール分画法で行われる。
低温下でエタノー ル濃度、pH等を調整することにより血漿から、グロブリン、アルブミンなどの血漿タンパク質を次々に分離させていくもの。

   日本血液製剤協会資料 http://www.ketsukyo.or.jp/glossary/ka14.html

2003年7月施行の「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(血液法)では、基本理念の一つとして血液製剤の国内自給の確保と安定供給が定められている。

また世界保健機関は加盟国に対して国内自給の達成を目的とした国家的、効率的かつ持続可能な血液事業を求めている。

しかし、現状では、国内各メーカーの生産規模が海外競合メーカーに比べて小さく、製造コストを含め事業の効率化にも限界があることから、国内自給は達成されておらず、特にアルブミン製剤については58.7%で、国内製造が全く行われていない製剤もある。

このため、両社は事業統合により、スケールメリットを生かして生産および供給段階でのコストを低減し、事業の健全性を確保することによって、血液製剤の国内自給達成をめざす。

平成21年度薬価ベースでの両社の血漿分画製剤売上高の合計は約370億円となっている。

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ベネシスは、田辺製薬と合併前の三菱ウェルファーマが2002年10月に血漿分画製剤の製造部門を会社分割し、新設した。
(その後、R&D、営業企画・学術機能などを移管)

血液分画製剤事業の元はミドリ十字の事業である。

ミドリ十字は過去に、この事業で薬害エイズ事件、薬害肝炎事件を起こしている。

2008/1/24 資料 薬害エイズ事件

2008/1/16 薬害肝炎救済法 成立


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