丸善石油化学は7月6日、C5系石油樹脂と液状石油樹脂事業から撤退すると発表した。
3月11日の東日本大震災の影響を受けたもの。
同社では地震発生後、アルコールケトン製造装置で火災が発生した。
同時に停止した第3エチレン製造装置、芳香族製造装置の一部、酸化工チレン製造装置などは4月4日以降スタートしたが、アルコールケトン製造装置については復旧には最低でも1年間は必要と判明した。
このため、同社は復旧までの期間、同装置の製品のメチルエチルケトン(MEK)、セカンダリーブチルアルコール(SBA)、ジイソブチレン(DIB)の出荷を停止することとした。
同装置はC4留分のうちのブチレンを原料とする。
MEKは塗料溶剤、印刷インキ、接着剤等に用いられる。
2006年に能力を14万トンから17万トンに増強した。SBAは化学品原料、塗料溶剤等に用いられる。MEKはこれから製造される。
DIBはイソブチレンのニ量化により得られるC8オレフィンで、付加反応、オキソ反応等により数々の有用な誘導体を生じる。
印刷インキやタイヤ添加剤に使用される。(下記参照)
今回撤退するC5系石油樹脂と液状石油樹脂はC5留分を原料とするもので、アルコールケトン製造装置とは別の装置であるが、生産時の副産物の大量の油をこれまではアルコールケトン製造装置で使用していた。
アルコールケトン製造装置の停止の結果、コンビナートの燃料バランス復旧に数年間必要とし、C5系石油樹脂製造装置の再稼動の見通しが立たない状態にあるため、撤退することとした。
C5系石油樹脂(商品名:マルカレッツ) 横断歩道など交通用塗料の原料 年間販売量は約1万トン
液状石油樹脂(ポリイソペンタン;商品名マルカクリアー) 接着剤原料 年間販売量は約700トンいずれも輸入品などで代替しており供給に問題はない。
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丸善石油化学の停止中のアルコールケトン製造装置の製品のうち、ジイソブチレン(DIB)については、大手では世界で生産するのが同社を含め3社で、同社は能力5万トン強で最大である。
INEOS Oligomers
1961年にBayerとBPのJVのErdochemieが生産を開始。
その後、BPがBayerのErdochemie持分を買収、更にINEOSがBPの石化事業を買収した。TPC(旧称 Texas Petrochemicals)
同社は元々は1943年に米国政府が合成ゴム製造促進のためにつくったRubber Reserve Co.
その後、合成ゴム事業は各社に分離され、同社は現在はC4留分の専業会社となっている。
2006年にHuntsmanからMTBEとブタジェンのプラントを購入している。
2000年にDIBに進出した。
このDIBに出光興産が参入する。
中国のタイヤ生産の拡大などを背景に、今後世界需要が拡大するとみて、震災前から参入を計画していた。
溶剤を生産している徳山工場のプラントにタンクや配管を追加し、生産設備を整える。年9000トンを生産する計画で、2~3年内の能力倍増も検討している。
付記
JXエナジーは川崎のプロピレン製造装置で発生する物質を活用し、2006年からDIBを製造し、ガソリン添加剤として自家使用している。
能力は25~30千トン。
同社ではこれを外販することとした。
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