経産省、東日本大震災の火災事故でコスモ石油に行政処分

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経済産業省原子力安全・保安院は6月30日、コスモ石油に対し、千葉製油所の高圧ガス保安法に基づく完成検査及び保安検査に係わる認定を取り消す行政処分を行ったと発表した。

東日本大震災で発生した千葉製油所(千葉県市原市)の火災をめぐり、緊急時の安全確保基準に違反していたと判断した。

311 1547分頃 LPGタンク付近で火災を確認、全装置停止
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21日 10時10分   鎮火確認

処分理由は以下の通り。
①今回の事故で重症1名、軽傷5名の負傷者を出したほか、製油所外への部材飛散、製油所外での火災を引き起こした。
②千葉県知事から事故が発生したLPG出荷設備の使用停止命令を受けた
③同LPG出荷設備で、高圧ガス保安法で設置を義務付けられている緊急遮断弁3基をピンで「開」状態で固定していた。

また、調査過程で、千葉製油所での高圧ガス保安法の手続き不備、千葉製油所と四日市製油所での技術上の基準の遵守不履行が判明したため、厳重注意を行い、再発防止策の策定を指示した。
①千葉製油所でプロパンガス貯槽として許可を受けていた2基に、許可を受けずにブタンガスの貯蔵を行っていた。
②千葉と四日市で、「緊急遮断弁」を「開」状態で固定していた。

さらに、高圧ガス保安法で緊急遮断弁の設置を義務付けられている事業者に対し、注意喚起を行った。

完成検査及び保安検査に係わる認定取消により、コスモ石油千葉製油所は自ら法定検査(完成検査・保安検査)を行うことが出来ず、知事の検査を受ける必要がある。
また、法律に定められた要件を満足していると認められた設備については、最高5年の連続運転が可能となっているが、取消により、保安検査を年1回受けることが必要となる。(毎年、約1ヶ月の操業停止、定期修理の実施が必要となる)

同工場は今後2年間は認定を受けることが出来ない。

 

(参考)高圧ガス保安法に基づく完成検査及び保安検査に係る認定について

  完成検査 保安検査
原則 コンビナート等の高圧ガス製造事業者は、その製造設備について、補修等の変更工事を行う際には、都道府県知事の許可を得るとともに、完了時に都道府県知事が行う完成検査を受けなければならない。
(高圧ガス保安法第20条第3項本文)
高圧ガス製造事業者は、その製造設備について、都道府県知事が行う保安検査を年1回受けなければならない。
(同法第35条第1項本文)
認定 自ら変更工事に係る完成検査を行うことができる者として、経済産業大臣が認定を行った者(認定完成検査実施者)については、自ら完成検査を行い、その記録を都道府県知事に届け出れば、都道府県知事による完成検査を受けなくても良い。
(同法第20条第3項第2号)
自ら保安検査を行うことができる者として、経済産業大臣が認定を行った者(認定保安検査実施者)については、自ら保安検査を行い、その記録を都道府県知事に届け出れば、都道府県知事による保安検査を受けなくても良い。
(同法第35条第1項第2号)
1997年4月、要件を満足していると認められた設備については、
最高5年の連続運転が可能となった。
取消 「高圧ガスによる災害が発生したとき」、「認定基準に該当していないと認められるとき」等は、経済産業大臣は、認定を取り消すことができる。(同法第39条の12第1項)
認定取消し後2年間は、再び認定を受けることができない。(同法第39条の6第1項第5号)

ーーー

最近では2008年2月に、三菱化学の鹿島事業所の事故で完成検査及び保安検査に係る認定を取り消す行政処分が行われた。

 2008/2/15 三菱化学鹿島事業所の事故で行政処分

2003年6月以降、認定保安検査実施者等の認定を受けた事業所において、法令に定められた検査が適正に行われていなかった事例が続けて報告された。経済産業省は認定保安検査実施者等の認定を受けていた全ての事業所に対し、保安検査の実施状況等を報告するよう指示、同年9月8日までに提出された各事業者からの報告について調査を行い、合計で6社、11事業所が認定を取り消された。

東ソー/四日市事業所
新日本石油精製/麻里布製油所・大阪製油所
三井化学/大阪工場
日本ゼオン/徳山工場・水島工場
協和油化/四日市工場・千葉工場
旭化成ケミカルズ/水島製造所B地区・同C地区・川崎製造所


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