三井物産は6月30日、子会社Mitsui E&P Texas LPを通じ、米国SM Energy Companyのテキサス州Eagle Ford シェール地区の権益の12.5%を取得し、開発に参加する契約を締結したと発表した。
取得対象は以下の権益の12.5%
(1)持分面積約160km2のイーグルフォード・シェール層
(2)上記(1)エリアに加え約30km2の合計持分面積190km2のピアサル・シェール層(イーグルフォード・シェールの下に位置)
なお、同鉱区のオペレーターはAnadarko Petroleumである。
対価は約6.8億ドルでSM Energyの将来開発費を肩代わり負担する。
三井持分は、ピーク時生産量が原油換算で日量2万バレルで、生産期間は約30年間、開発総費用は約12億ドル。
付記
三井物産は2012年11月2日、追加開発を発表した。
同社持分の概要は以下の通り。
当初計画 改正 ーク時生産量 原油換算 日量約2万バレル 原油換算 日量約2万4千~3万バレル 開発総費用 約12億米ドル 18億米ドル 生産期間 約30年間 約30年間
三井とSM Energyは今後同エリアを対象として新規権益を共同取得していくことでも合意した。
三井物産にとって、これはMarcellus Shaleに次ぐ米国のシェール開発の第2弾となる。
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米国ではシェールガス開発がブームとなっている。
Obama大統領も、天然ガス(シェールガス)の可能性は膨大だと述べた。
米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は発表の都度、国内のシェールガスの供給量を増やしており、投資家も業界も明るい未来を繰り返している。
日本の各社も下記の通り、これに出資している。
しかし、6月26日付のNew York Timesが"Behind Veneer, Doubt on Future of Natural Gas"という記事で、EIA内部から提供された職員のe-mail を公表し、多くの職員がシェールガスの将来に疑念を抱いていることを明らかにし、問題となっている。
この記事を受けて連邦議会の議員が6月28日に、SECやEIA、会計検査院などに対し、天然ガス業界が長期的な収益性や埋蔵量などを正確に投資家に伝えているかどうかを調査するよう要求した。
シェールガスの採掘、特に水圧破砕(hydrofracking)技術について、環境面、採算面での懸念が増大している。
各州でも情報を要求する動きが強まった。
New York Timesがコピーを入手したe-mailでのEIAの職員の発言は以下の通り。
・シェール産業は失敗するだろう。
・恐らく多くの企業が破産するだろう。
・産出量に関する業界の予測は誇張されている。
・井戸がいつまで生産できるかや、土地ブームの時に払った高いリース料、シェールガス掘削の予測不可能性への懸念
・収益性の誇張(ベストな井戸の実績や、過大に楽観的なモデルの使用)
・成功した井戸の例がすべてに当て嵌まると誤解。
・EIAは業界と結びつきがある外部のコンサルタントの調査に依存している。
・EIAの上部が外部のコンサルタントに依存し過ぎ、不完全な、たびたび非現実的なデータを使っている
EIAではデータはシェールガスが国内の天然ガスの供給の重要なソースになったことを示しているとして、これらの批判を否定した。
しかし、非常に多くの職員(なかにはかなり上位の職員も)がシェールガスの経済性に疑いを示している。
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シェールガスの環境問題については、2011/3/31のTime Magazineが"Could Shale Gas Power the World?"という記事を載せている。
水圧破砕(fracking)では大量の水と薬剤を投入するが、これが地下水を汚染するとの懸念がある。
(一つの井戸で19百万リットルの水と、その0.5%の薬剤を投入する)
しかし、 Marcellusでは地盤からみて、この可能性は少ないだろうとしている。(間に数千フィートの岩盤がある)
問題は、地表近くで、井戸のケーシングでのセメント工事のミスにより、上がってきたメタンが漏れて地下水を汚染する可能性がある。
また、frackingでは大量の有害な排水が出てくる。テキサスなどではDeepwellに投入して処分するが、ペンシルバニアでは地形上これが出来ず、下水処理場に輸送して処理している。輸送前の貯水池からの漏えいや、輸送中の漏れ、処理場で汚染物質を処理できないケースなどがある。
(薬剤が何かは明らかにされていない。地底の放射能に汚染されている可能性もある)
排水の再利用などの考えもあるが、計画通りなら今の量の何十倍にもなるため、今後どうするのか、大問題であるとしている。
世界のドキュメンタリー「ガスランド ~アメリカ 水汚染の実態~」では飲み水の着色や異臭はもとより、家庭の蛇口から出る水が燃えるという異常な事態を示している。
NHK BS世界のドキュメンタリーで7月31日にアンコール放送される。
前篇 午後1:00-1:50
後篇 午後2:00-2:50参考 2011/4/14 「岐路に立つタールサンド開発」
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北米のシェールガス開発では、以下の各社が開発に参加している。
三菱商事 | ブリティッシュ・コロンビア州のCordova堆積盆地のシェールガス Penn West Energy Trustから50%の権益 2010/8/26 三菱商事、カナダのシェールガス開発プロジェクトに参画 |
三井物産 | ①ペンシルベニア州のMarcellus Shaleエリアのシェールガス Anadarko Petroleum から32.5%の権益 2010/2/18 三井物産、米国でシェールガス開発生産プロジェクトに参画 ②テキサス州Eagle Ford shale (今回) |
住友商事 | ①テキサス州Barnett Shale field開発 Carrizo Oil & Gasから12.5%の権益 ②ペンシルベニア州Marcellus Shale field開発 Rex Energyから30%の権益 2010/8/26 三菱商事、カナダのシェールガス開発プロジェクトに参画 |
双日 | テキサス州北東部Carthage onshore gas 鉱区Tightsand gas、シェールガス 2007年7月に権益取得 2010/10/19 伊藤忠、米国のシェールオイル開発に参加、商社の非従来型石油/ガス開発出揃う |
伊藤忠 | ワイオミング州Niobraraのシェールオイル Fidelity Exploration & Production(MDU Resources Group子会社)から25%の権益 2010/10/19 伊藤忠、米国のシェールオイル開発に参加、商社の非従来型石油/ガス開発出揃う 付記 2011/11/28 KKRと伊藤忠など、米Samsonを72億ドルで買収へ |
日揮 | テキサス州Eagle Ford シェール 2011/6 TriTech I, LLCからChesapeake Energy運営の鉱区の10%の権益 |
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