宇部興産とDow Chemicalは7月6日、リチウムイオン二次電池向け電解液の製造及び販売等を行う合弁会社を設立することで合意したと発表した。
・社名 : Advanced Electrolyte Technologies LLC
・所在地 : 米国ミシガン州
・代表者 : 宇部興産から派遣
・設立 : 設立の認可が取れ次第ただちに
・出資比率 : 宇部興産(米国子会社) 50%、Dow 50%
宇部興産は、リチウムイオン二次電池の主要四部材のうち、電解液とセパレーターを事業化している。
電解液事業については、高純度電解液に添加剤を加えることで電池性能を向上させるというコンセプトのもと製品を拡充した。
宇部興産はグローバルな生産・販売体制を早急に構築することが不可欠であると判断し、Dowとの折半出資により合弁会社を設立する。
Dowにとってはエネルギー貯蔵関連の製品群に電解液事業を加えることで、Energy Materials事業の成長戦略を強化する。
JVの製品はDowのリチウム電池JVのDow Kokamなどに供給する。
代替エネルギーはDowの戦略の中心の一つで、住宅の屋根に設置するDow Powerhouse solar shingle(太陽光発電屋根)を第4四半期に発売する計画。
合弁会社は今後順次、米国・中国・欧州に年産5000~1万トンの電解液の製造設備を有する子会社を設立する予定だが、Dowでは最初のプラントはMidlandに建設し、2012年にスタートアップするとしている。
宇部興産は、電解液の技術を合弁会社にライセンス供与する。
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電池材料は、宇部興産が最重点事業とする4つの事業領域(医薬・電池材料・ファインケミカル・ポリイミドチェーン)の一つ。
本年2月にLiB用の電解液とセパレーターの両事業を統合し、「機能電池材料ビジネスユニット」を新設するとともに、両事業に関わる開発機能を統合する組織として「先端エナジーマテリアル開発センター」を新設した。
別途、欧州及び北米におけるLiBの需要拡大に対応するため、欧州製造拠点のスペインのUBE Chemical Europeに自動車や電力貯蔵用途の大型電解液開発体制を整備した。
今回のJVで、日本と欧州に開発拠点、日本と米国及び中国・欧州に製造拠点を持ち、自動車メーカー、電池メーカーに供給する。
同社の電池材料の戦略は以下の通り。
電解液事業
・高性能電池向けの高機能電解液では技術開発力トップの地位を維持
・コスト競争力の強化とさらなるシェアの拡大
・車載・電力貯蔵LIB電解液の積極的展開
セパレーター事業
・伸長する中国市場におけるデファクトスタンダードの堅持
・生産技術の高度化と増産設備の立上げ
・車載・電力貯蔵LIBセパレーター拡販
・宇部マクセル社での開発促進
宇部興産と日立マクセルは本年1月、リチウムイオン電池用塗布型セパレーターの製造および販売等を行う合弁会社を設立することで合意した。(宇部 51%、日立マクセル 49%)
宇部興産はPEとPPの積層膜に均一な微細孔構造を形成する乾式プロセス技術でセパレーターを量産しているが、この積層膜に、マクセルの分散塗布技術を利用して無機微粒子によるコーティング膜を形成することで、高温耐熱性をさらに高め、異常発熱時の熱収縮を小さく抑え電池内部での短絡を防ぐもの。
社名:宇部マクセル株式会社
所在地 京都府乙訓郡大山崎町
付記
宇部興産は2012年4月、車載用リチウムイオン二次電池向けなどでの需要増大に対応するため、堺工場で新たにセパレーター製造設備を増強することに着手した。
現在、セパレーターを宇部ケミカル工場のみで生産しているが、堺工場でも2013年度初めより生産開始し、段階的に能力増強を実施する計画で、2014年度末には2工場合わせた生産能力を2億m2に拡大する。付記
宇部興産は2012年4月、中国に炭酸ジメチル製造のJV設立を決めた。
COを原料としてDMCを製造する宇部興産独自の気相ナイトライト技術を使用するもので、宇部興産は、合弁会社からDMCを購入し高純度化することで電解液用途での自家消費や外販を行う。社名:河南碳一新能源有限公司(Henan Tanyi New Energy Co., Ltd.)
場所:河南省濮阳市
出資者: 中原大化 51%、宇部興産 24.5%、ハイケム 24.5%
能力:10万トン宇部興産は宇部に15,000t/年のプラントを有している。
宇部興産はリチウムイオン二次電池と電解液で重要な特許群を保有しており、パテント・リザルトの2010年の有機電解液に関わる調査では、特許の質と量から総合的に見た評価で総合力1位にランキングされている。
同社はこのたび、TDKが2005年に買収したポリマーリチウム電池製造販売会社Amperex Technology(本社:香港、中国・東莞市に製造拠点)に、その特許の一部をライセンスし、ビジネス関係を強めていくことで合意した。
宇部興産では、ライセンス供与により、"機能性電解液"を通じて、リチウムイオン二次電池市場でのプレゼンス強化を図ると共に、ATLと友好的な関係を構築していくとしている。
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電解液の世界シェアは以下の通りとされる。(テクノ・システム・リサーチ 2010年数量ベース)
宇部興産 24%
三菱化学 17%
PANAX ETEC(韓国) 13% (第一毛織から事業譲渡を受ける)
Techno Semichem(韓国) 9%
電池メーカー自製 13%
その他 24%
三菱化学はリチウムイオン二次電池の主要四部材(正極材、負極材、電解液、セパレーター)の全てを扱っており、同社によると電解液の2009年のシェアは25%で、英国、米国での新設を合わせ2015年には40%に引き上げるとしている。
2010/9/13 三菱化学、リチウムイオン二次電池用負極材の製造能力増強
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