欧州一般裁判所、東芝・三菱電機への電力用ガス絶縁開閉装置カルテル制裁金を取り消し

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EUの一般裁判所(General Court:第一審裁判所を改称)は7月12日、2007年1月に欧州委員会が電力用ガス絶縁開閉装置で国際カルテルを結んでいたとして日欧10社に7億5千万ユーロの制裁金支払いを課した件で、東芝と三菱電機への制裁金を無効とし、富士電機への制裁金を減額した。日立製作所の提訴は却下した。

このカルテルには日本企業は参加していないが、日本企業は欧州で販売せず、欧州企業は日本で販売しないことも決めていたとされ、「欧州でほとんど売っていないのを理由に多額の制裁金を課せられる」という珍しいケースとなった。

2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金

日本企業は、欧州市場参入を見送った経緯について「参入しても採算を取るのは難しい」との判断があったと説明、東芝、日立製作所、三菱電機は、制裁を不服として提訴していた。

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裁判所はまず、欧州企業が日本市場に参入しないことを決め、日本企業に欧州での割り当てを通知していたとし、日本企業が欧州市場に販売しないとのカルテルがあったことを認めた。

次に制裁金の計算方法を検討し、欧州委員会が三菱電機と東芝には2001年の売上高を使用し、欧州企業には2003年の売上高を使ったことを問題とし、平等な扱いでないとみなした。

欧州委員会が年度を変えた理由は、東芝と三菱電機は2002年10月に両社の電力系統・変電事業を統合して50/50の合弁会社TMT & Dを設立した(2005年4月末に解消)が、カルテルにはJVではなく、東芝と三菱電機として参加していたため、JV設立前の両社の売上高を採用したもの。

裁判所は、意図は理解できるが、何か別の方法を使用することにより、日本企業を不平等に扱わないようするべきであったとし、平等処理の原則に反しているとして、東芝(90.9百万ユーロ)と三菱電機(118.6百万ユーロ)の制裁金を取り消した。

富士グループについては2002年10月以前の分の制裁金を240万ユーロから220万ユーロに減額した。

日立については却下した。理由は明らかにされていない。

なお、裁判所はこれに先立ち本年3月に、Areva(とArevaが引き継いだAlstromの事業)への制裁金(共同負担)を53.5百万ユーロから48.2百万ユーロに減額、別途Alstomへの単独の制裁金を11.5百万ユーロから10.3百万ユーロに減額している。

対象企業と制裁金の額は以下の通り。(単位:千ユーロ)

  免責額 制裁金 判決
Siemens(ドイツ)     396,563  
Siemens(オーストリア)      22,050  
ABB(スイス)  215,156       0  
三菱電機     118,575     0
東芝      90,900     0
Alstom(フランス)      11,475   10,300
Areva/Alstom(フランス)   53,550   48,200
日立製作所      51,750   却下
Schneider(フランス)      8,100  
富士電機システムズ      3,750 2,4002,200
日本AEパワーシステムズ*      1,350  
合計  215,156   750,713  
* 富士電機システムズ、日立、明電舎のJV


日立は「当社の主張が認められなかったことは遺憾であり、今後の対応については、判決内容を精査の上、検討してまいります」としている。

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付記

EUのGeneral Courtは7月14日に、合成ゴムカルテルの制裁金についても、減額及び取消の判決を行った。

2006年11月、ブタジェンゴム(BR)とエマルジョンSBRESBR)の価格カルテルで合成ゴムメーカー5社に519百万ユーロ(約800億円)の罰金支払いを命じたもので、ENIShell と(Bayer)は再犯ということで罰金が50%増しとなった。

2006/12/5 EC、合成ゴム価格カルテルで5社に約800億円の罰金支払い命令

ENIと子会社Polimeriについては、過去に何度も違法行為を行ったことについて、十分詳細な具体的な証拠がないとして、制裁金を181.50百万ユーロ(割増なし)に減額した。

理由は明確ではないが、今回の違反行為は子会社のPolimeriであり、Polimeri自体は再犯ではないというのがEniの主張であった。

チェコのUnipetrolと子会社のKaucukとTrade-Stomilについては、違法行為に参加した十分な証拠がないとして、制裁金を取り消した。
Shellについては却下した。

罰金の内訳は以下の通り。

  社名・国 減免率
   %
減免額
     euros
罰金
     euros
2011/7
General Court
1. Bayer, Germany    100   204,187,500         0  
2. Dow, USA     40    43,050,000    64,575,000  
3. Eni, Italy     0         0   272,250,000 181,500,000
4. Shell, Netherlands     0         0   160,875,000  
5. Unipetrol, Czech Republic     0         0    17,550,000 0
6. Trade-Stomil, Poland     0         0     3,800,000  
  TOTAL     247,237,500   519,050,000  

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