7月12日付けの人民網日本は、「5年間赤字続くも循環型農業に挑む日系企業」という題で、アサヒビールが主体の山東朝日緑源農業高新技術有限公司を大きく取り上げている。
山東省煙台市の県級市・莱陽市で農業に取り組む日系企業の山東朝日緑源農業高新技術有限公司は、設立から5年が経つものの赤字続きで、現地の農民の笑い者になっているという。
同公司は2006年、日本のアサヒビール、住友化学、伊藤忠商事により合弁設立された。
当時、同公司は莱陽市で1500ムー(100ヘクタール)の土地を借りて、酪農を始め、トウモロコシや小麦やイチゴ などを植えた。土地の借用期間は20年間だった。
同市大明村の村民は、「あの人たちは土地の扱い方を知 らない」と話す。
化学肥料を使わず、農薬を使わず、除草をしないこともあり、 1ムーの土地の収穫量は現地の農民の半分ほどに過ぎなかったのだ。ーーー
莱陽市の土地は肥沃だが、化学肥料や農薬をたくさん使ったために土地が退化しており、土地は化学肥料を絶えず追肥しなければ収穫量を保てず、このようにして生産された農作物には化学品が残留していることが多い。
そこで同社は、初めの数年間は土壌の回復に大きな力を注ぐことにした。
人民網日本は7月13日付で、「中国の伝統備えた日系企業を前に中国は冷や汗」という記事でこれをフォローしている。
われわれが真っ先に気づくべき点は、中国食品産業は安全問題で損なわれており、未来の食品市場は空白であることを同公司が見据えているという点だ。
次に気づかなければならない点は、同公司の土地に対する態度から、中国古代の質朴で持続可能な発展の哲学思想がうかがえるということだ。
残念なことに、中国の現在の農業生産では、こうした伝統的で素朴な持続可能な発展の観念が、短期的な利益や目先の利益のためにしばしば覆われてしまっている。自分たちの土地にどのように接するべきか。再生不可能な自然資源にどのように対処すべきか。農薬をたっぷり浴びた農産品をどのように扱うべきか。こうしたことをしっかり考えた時、同公司のやり方を前にしてわれわれに冷や汗が出ることは確実だ。笑い話ではない。
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山東朝日緑源農業は2006年5月に、アサヒビール73%、住友化学17%、伊藤忠商事10%の出資で設立された。
・トレサビリティーの確保や循環型農法などの先進技術を導入
・中国都市部で高まる安全・安心で美味しいというニー ズに応えた農作物を生産し、
徹底した品質管理のもとで中国国内に供給。
・農作物の栽培から物流・販売まで一貫したフードシステムを構築して新たな農業経営モデルを示す。このため、レタスやスイートコーンなどの野菜栽培(露地栽培)、イチゴなどの果実栽培(温室栽培)に加えて、搾乳牛で将来的には1000頭規模の酪農を行うとした。
2008年4月には、同地に、アサヒビール90%、伊藤忠商事10%の出資で、牛乳・乳製品の製造・加工・販売を行う山東朝日緑源乳業有限公司を設立した。
・日本の品質管理技術を導入し、単一農場の原料牛乳を使用して成分無調整のチルド牛乳を製造。
・アサヒ(朝日緑源)ブランドの牛乳を、上海・北京・青島の市場にむけて販売を開始。
山東朝日緑源農業は、青年海外協力隊でケニア、パナマ、ネパールなどでの指導経験がある農業技術者、獣医師を中心に事業を運営しており、近代農業を志す現地雇用者とともに、中国における新たな農業経営モデルを実践している。
同社は日本の先端農業技術を導入した大規模農業経営を展開している。
1)循環型農法
酪農から生じる牛糞を用いた堆肥を野菜や果実の畑に散布し、化学肥料などに頼らず地力を維持する循環型農法を実践。
2) 省エネ
風力発電や太陽光発電設備を導入するほか、堆肥工場を建設し、堆肥が発酵するときに出る熱を利用してビニルハウスを温めることで農場でのエネルギー使用量の削減を進める。
3)IT活用
温室での各種センサーによる栽培管理や農作物の生産履歴管理、ICタグによる乳牛の個体管理などITを駆使してトレーサビリティの充実を図る。また、温度管理を徹底した鮮度物流システムの構築を進める。
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