原発賠償支援法案、民自公が修正で大筋合意

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民主、自民、公明3党の実務者は7月22日、原発賠償支援法案の修正で大筋合意した。
早ければ7月26日にも衆院を通過し、8月上旬にも成立する見通しとなった。

付記 8月3日の参院本会議で、民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決、成立した。

同法案は6月14日に閣議決定し、国会に提出されたもので、5月13日に発表された政府支援の枠組みをベースにしている。

                    2011/5/16 福島原発損害賠償の政府支援の枠組み 


今回、とりあえず政府案をベースとして新機構を作るが、野党の修正要求がかなり盛り込まれた。

また、野党五党が提出した国が東電に代わり賠償金の半額以上を立て替え払いする「原子力事故被害緊急措置(仮払い)法案」を民主党が受け入れた。
「仮払い法案」は支援機構法案と同時に採決される見通しで、早ければ8月下旬から国の立て替え払いが可能になる。

     付記

原発賠償仮払い法が7月29日の参院本会議で賛成多数で可決、成立した。
原発事故の被害者への賠償金の半額以上を国が仮払金として立て替える内容で、国が政府の原子力損害賠償紛争審査会の指針に基づいて被害者に仮払金を支払い、代わりに東電への賠償請求権を取得する。
地方自治体の事故対策費を国が補助するための原子力被害応急対策基金設置も盛り込んだ。


各報道によると、原発賠償支援法案の主な修正点は以下の通り。(最終法案が出れば修正します)

1) 原子力事業を推進してきた国の賠償責任を条文に明記。
   
2) 原子力損害賠償法(原賠法)の見直し

「1年後をめどにした原賠法の改正」を付則に盛り込む。
原発1カ所につき1200億円とした国の負担上限額の引き上げや、原子力事業者の無限責任の見直しを検討する。

第三条 (無過失責任、責任の集中等)
原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
 
第六条  原子力事業者は、原子力損害を賠償するための措置を講じていなければ、原子炉の運転等をしてはならない。
第七条  損害賠償措置は、・・・原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結・・・
.
注)
通常の原子力損害の場合の賠償に対しては、民間の損害保険会社による保険である責任保険により、賠償措置額(発電用原子炉の場合は通常
1200億円)まで保険金が支払われる。
地震、噴火、津波の自然災害による原子力損害等の場合は政府補償により、賠償措置額まで補償金が支払われる
   
3) 他の電力会社が機構に拠出する負担金の扱い

自公両党は他電力分を賠償に充てないよう要求。民主党は東電が債務超過に陥りかねないと反対。

当面は他電力分も賠償に充当されるが、電力会社ごとに帳簿を付け資金の出入りを管理する折衷案で合意。
賠償に使われた分は最終的に各電力会社に返済し、東電と国が責任を負う。

   
4) 東電が機構を通じて公的支援を受けるための特別事業計画を策定する際に株主などのステークホルダーにも協力を要請。
「東電を債務超過にさせない」としていた閣議決定(6月14日)は白紙に
.

閣議決定
(具体的な支援の枠組み)
3.機構は、原子力損害賠償のために資金が必要な原子力事業者に対し援助(資金の交付、資本充実等)を行う。援助には上限を設けず、必要があれば何度でも援助し、損害賠償、設備投資等のために必要とする金額のすべてを援助できるようにし、
原子力事業者を債務超過にさせない。

「この法案が成立することによって、あの閣議決定は意味を失うというをはっきりさせ、東京電力が債務超過になることがあり得るということを認めさせた。」(河野太郎議員の「ごまめの歯ぎしり」2011/7/22)

   
5) 今回のスキームそのものをなるべく早く見直す。

「即時法的破綻処理ではなく、二段階方式ではあるが、東電を破綻処理して出直しをさせる、つまり、長期間債務の返済だけをやるゾンビ企業にはしないということが確認された。」(「ごまめの歯ぎしり」7/22)

「当初は財務省プランでスタートするが、折を見て、東電を破綻処理させますという経産省プランを持って、経産官僚が議員会館を回り始めた。」(「ごまめの歯ぎしり」(7/7)

 

付記 河野太郎代議士の「ごまめの歯ぎしり」(7月27日号)では玉虫色の修正案となっている。(以下、要約)

実際の修正は、東京電力を債務超過にしないとうたった6月14日の『具体的な支援の枠組み』を、
「その役割を終えたものと認識し、政府はその見直しを行うこと」という文言を付帯決議に入れるという中途半端なものになったので、質疑できちんと答弁をさせることになった。

しかし、海江田大臣は、東電を債務超過にすることは想定していないという答弁をする。それでは、まったく付帯決議の精神に反するので、修正案もダメということになりかけたが、午後の経産委員会で、経産大臣が、現時点での東電の債務超過は想定していないが、将来は、あらゆる可能性があると答弁する。さらに、この法案に関しては、修正案の立法者の意思を尊重して政府は対応していくと明確に答弁。

修正協議で、法案の附則第六条2項が新設された。
「政府は、この法律の施行後早期に、平成23年原子力事故の原因等の検証、平成23年原子力事故の係る原子力損害の賠償の実施の状況、経済金融情勢等を踏まえ、平成23年原子力事故に係る資金援助に要する費用に係る当該資金援助を受ける原子力事業者と政府及び他の原子力事業者との間の負担の在り方、当該資金援助を受ける原子力事業者の株主その他の利害関係者の負担の在り方等を含め、国民負担を最小化する観点から、この法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。」

これが「魔法の杖」だ。まともな政府なら、この条文を使って、この賠償スキームを変更し、東電を債務超過と認定し、破綻処理をさせる。

財務省は、依然として東京電力を債務超過にせず、交付国債を何十年もかけて返させることによって、国の財政負担を避けようとしている。
東電が債務超過になって破綻処理されれば、賠償金の残額は国が負担することになるので、財務省は債務超過させないということを死守しようとしている。
今回のこの修正により、他の電力会社の負担金を、計数管理をして将来精算させることになると、東電は債務超過になる。
単に計数管理だけするという修正になったので、そこも玉虫色だ。

西村代議士は法案提出者として、審議のなかで、将来精算させると明確に答弁している。ほんとうに東電に精算させることになると、間違いなく債務超過になる。

 

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