BASF、バイオベースのコハク酸のJV設立へ

| コメント(0) | トラックバック(0)

BASFは8月1日、CSM 子会社のPuracとの間でバイオベースのコハク酸製造のJVを設立する交渉を開始したと発表した。

CSMはオランダに本社を置 き、欧州、北米、南米、アジアで活動する世界最大規模の製菓製パン材料メーカー
PuracはCSMの子会社で、乳酸、乳酸の誘導品、ラクタイド(乳酸の環状二量体)のリーダー。米国、オランダ、スペイン、ブラジル、タイに工場を持ち、世界中で販売している。

BASFとPuracは2009年以降、共同開発契約の下でバイオベースのコハク酸の開発を続けてきた。

コハク酸の需要は今後急速に増大すると見られている。主な分野は、バイオプラスチック、化学品中間体、溶剤、ポリウレタン、可塑剤である。

まず、遅くとも2013年までにスペインBarcelona近郊のPuracの工場で、年産25千トンの発酵プラントの商業生産を開始し、需要の伸びに応じてワールドクラスの50千トンのプラント建設を計画する。

BASFでは新事業を担当するBASF Future Business GmbH (2001年4月設立)が担当している。

ーーー

バイオベースのコハク酸は多くの企業が手掛けている。

1)三菱化学

三菱化学は、コハク酸と1,4-ブタンジオールを主な原料とする環境持続型樹脂「GS Pla®」の市場開発を推進している。
これは
ポリブチレンサクシネート系樹脂(PBS系樹脂)、商品名は Green Sustainable Plastic から名づけた。

三菱化学は、生分解性プラスチック GS Plaの植物原料化に向け、バイオコハク酸の製品供給、研究開発及び製造について、米国のBioAmber(及び同社に既に出資している三井物産)と提携した。
  BioAmberは旧称
DNP Green Technology

GS Plaの原料であるバイオコハク酸をBioAmberから調達が可能となるとともに、BioAmberのもつバイオコハク酸の既存のプロセス技術と、三菱化学のもつ高度生産技術及び分離精製技術をそれぞれ組み合わせることによって、より高効率なバイオコハク酸の製造技術の確立を目指す。

三菱化学はまた、米国のGenomatica社と戦略的提携で合意した。
Genomaticaが開発した植物を原料に1,4-ブタンジオールを製造する技術に、三菱化学の技術を組み合わせ改良した技術を用いて、中東、インドを含むアジアでの1,4-ブ
タンジオール事業化を検討する。

付記
BioAmberはフランスに3千トンのバイオコハク酸のプラントを持つが、2011年8月にカナダのSarniaに17千トンのプラントの建設を決めた。2013年に稼働の予定で、2014年にはCargillとともに開発している次世代イーストを導入し倍増する。
また、DuPontから独占権を得たコハク酸を1,4 butanediol (BDO)に変換する技術で同地でBDOを生産する予定。
Sarniaでは最終的に35千トンのバイオコハク酸、23千トンのバイオBDOを生産する。

三菱化学は3月30日に、GS Plaの海外事業展開に向け、タイのPTT Public Company Limitedと合弁会社を設立した。
GS Pla事業の投資計画検討や更なるマーケティング等を実施する。

三菱化学は2010年7月、タイ王国政府科学技術省国立イノベーション機構が進めているバイオポリマー普及プロジェクトの一環として、PTTなどと共同で、生分解性樹脂普及プログラムを実施した。

生活ゴミによる環境問題が深刻化しているサメット島において、
「GS Pla」を使用したゴミ袋を使用し、有機廃棄物を効率的に収集するとともに、堆肥製造設備を設置し、ゴミの量を減らしかつ有効活用しようとするもの。

2)DSM

DSMは5月9日、フランスのスターチのメーカーのRoquette Frèresと共同でバイオベースのコハク酸を生産する商業規模のプラントを建設すると発表した。

年産10千トンのプラントをイタリアのRoquetteの工場内に建設し、2012年下期の生産開始を目指す。

 
3)
Myriant Technologies, Inc.

Myriant Technologiesは2009年、トウモロコシからコハク酸を精製する技術に関し、二酸化炭素の排出量抑制に大きく貢献できる画期的製法を開発した。従来の製法に比べてエネルギー効率が高く、工程を通じた二酸化炭素の排出量よりも吸収量の方が多い。
米ルイジアナ州にバイオコハク酸の新工場(14千トン)を建設中。 

なお、タイPTTの子会社のPTT Chemical2011年1月Myriant Technologiesに6000万ドル出資すると発表した。
Myriantは、PTT
Chemical
の出資で得た資金を上記の建設費に充てる。

PTT
Chemicalはバイオコハク酸を原料に、タイ初のバイオポリマー工場を建設する意向で、PTTと三菱化学とのJVと競合となる可能性がある。

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: https://blog.knak.jp/knak-mt/mt-tb.cgi/1538

コメントする

月別 アーカイブ