8月7日付の英国のGuardian紙は、ドイツの脱原発の決定の結果、ドイツの多くの企業が安いエネルギーコストを求めて工場を移転する可能性があると報じた。
BayerのMarijn Dekkers社長は、「ドイツは他国と比して競争力がなければならない。さもなければ、Bayerはエネルギーコストの安い国に生産を移転することを考えねばならない」と述べた。「ドイツの電力コストは既にEUで最も高く、化学産業にとって魅力的ではなくなっている」としている。
平成21年度エネルギー白書によれば、電気料金の国際比較は以下の通り。
EUでは原子力大国のフランスが安いが、産業用ではイタリア(原発なし)と英国がドイツを上回っている。
1.各国の1年間の使用形態を限定しない平均単価を計算したもの
2.米国は課税前の価格
3.2008年(日本とドイツは2007年)
出所 OECD/IEA, Energy Prices & Taxes, 3rd Quarter 2009
Bayerはドイツ国内で 35千人以上を雇用している。Bayerはドイツで1700人など、世界で4500人の人員カットを計画しているが、同時にブラジル、インド、ロシア、中国などで新規に2500人を雇用している。
インターネット会社の 1&1の社長は、電力をノルウェーの水力発電所から購入しているが、それでもドイツの再生可能エネルギーの税金を払う必要があると述べ、移転したいとしている。
参考
英国のINEOSは節税のため、2010年に本社をスイスのRolleに移転した。
2010/3/5 INEOS、節税のためスイスへの移転を検討
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ドイツ政府は早くも 2002年に、原子力法を改正し、2021~23年の脱原発を決めた。
2009年の総選挙で過半数を獲得した保保連立政権が、脱原発期限を平均12年間延長する原子力法の改正を行った。
しかし、福島第一原発の事故を受け、本年3月に原発の運転を延長する政策を3カ月間凍結した。
メルケル首相は福島事故の直後に3カ月にわたる「原子力モラトリアム」を発令し、1980年末までに運転を開始したドイツで最も古い7基の原子炉を停止させた。
政府は6月6日、これら 7基とトラブルで2007年以降停止している1基の合計8基の原発を再稼動せず廃炉にすること、残りの9基の原発についても、2022年までに順次停止することを正式に閣議決定した。
全く新しい決定ではなく、2002年の脱原発決定の修正(運転延長)を取りやめただけ。
ドイツ連邦上院は7月8日、2022年までに国内17基の原発を停止する改正原子力法案に同意した。既に下院が可決しており、「脱原発」が法的に成立した。
稼働中 廃止 停止時期 既停止 2010s 2020s Avr Juelich 1基 Biblis 2基 moratorium Brokdorf 1基 2021 Brunsbuettel 1基 moratorium Emsland 1基 2022 Grafenrheinfeld 1基 2015 Greifswald 5基 Grohnde 1基 2021 Grosswelzheim 1基 Gundremmingen 2基 1基 2017 2021 Isar 2基 moratorium 2022 KNK 2基 Kruemmel 1基 2007 停止
トラブルLingen 1基 Muelheim-Kaerlich 1基 MZFR 1基 Neckarwestheim 2基 moratorium 2022 Niederaichbach 1基 Obrigheim 1基 Philippsburg 2基 moratorium 2019 Rheinsberg 1基 Stade 1基 THTR-300 1基 Unterweser 1基 moratorium Vak Kahl 1基 Wuergassen 1基 合計 17基 20基 7基+1基 3基 6基
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