BPとTNK-BPの争い、仲裁へ

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BP本年1月、ロシアのRosneftとの間でグローバルな戦略的提携で合意した。

Putin首相と腹心のIgor Sechin副首相がこれをバックアップした。

Rosneft BPの株式5%を購入、見返りにBPRosneft株式 9.5%を購入する。
両社はロシアの北極海大陸棚にある3つの鉱区
EPNZ 1,2,3)を共同で開発する。

2011/1/17 BP、ロシアのRosneft と戦略的提携 

しかし、これに対し、BPのロシアのJVTNK-BPの株主のAlfa Access Renova (AAR)を構成する4人の新興財閥が、BPRosneftとの取引がTNK-BPを除外しているのは、BPTNK-BPの株主契約に違反するとしてロンドンの高等法院に訴えた。
BPが株主契約に基づき、ロシアではTNK-BPを通して活動することを求めた。

TNK-BPはBPとAAR45%ずつ出資、残り5%が一般株主となっている。
AARの構成は以下の通り。

Alfa Group ロシアの新興財閥で、ロシア最大の金融産業コングロマリットのひとつ。
Mikhail Fridman German Khan 50%ずつ保有。
Access Industries ロシア生まれの Len Blavatnik が設立し所有する米国の投資会社で、Basellを買収した。
Renova Holding ロシアの長者番付では第5位のViktor Feliksovich Vekselberg SUALの大株主)のベンチャーキャピタル。

21日、裁判所は調停での問題解決を命じた。

調停委員会は201151日、下記の決定を下した。
  ・
TNK-BPRosneft の同意を前提に、北極海開発に参加する。
  ・これを条件に、
BPRosneftの株交換を認める。

これに対しRosneft TNK-BPの北極大陸棚での事業参加には難色を示した。
このため、
AARの持ち株をBPRosneftが買い取る交渉が進められたが、AARは拒否し、この結果、BPRosneftの契約は5月16日に時間切れで白紙となった。

2011/5/18 BPRosneft との提携、白紙に 

 

AAR側は4月の時点で、BPの行動により TNK-BPが北極海開発の機会を失ったとして、100億ドルの損害賠償を求める意向を明らかにした。

この対抗策として、BPは8月5日、AARのメンバーのRenova Holdingに対し、調停の通知を行った。
RenovaがIES Holding Ltdを通じて大規模な天然ガス、燃料事業を行い、株主契約に違反しているとする。

Renova側はTNK-BP の株主契約になんら違反しないとし、AARが予定している仲裁を遅らせることを狙っていると批判した。

この直後の8月10日にTNK-BPのロシアの少数株主のAndrei Prokhorovが TNK-BPの役員でもあるBPの役員Peter Charrow と Richard Sloanを訴えた。
BPとRosneftの交渉を知っていたに違いないとし、この情報をTNK-BPに伝えなかったために、
TNK-BPが北極海開発の機会を失い、約870億ルーブル(約2,970百万ドル)の損害を被ったとしている。

このAndrei Prokhorovはごく少数の株を持っているだけで、AARの利益を代表しているとみられている。

ロシア紙によると、西シベリアのTyumen仲裁裁判所が9月21日にヒアリングを予定している。既にTNK-BPとBPに資料提出を求めている。BP はこの訴えは根拠がないとし、徹底的に争うとしている。

付記
ロシアの司法当局は8月31日、モスクワのBPの事務所を家宅捜索を行った。

裁判所が派遣した捜査員や武装警官、訴訟原告の代表者など二十数人が到着、Rosneft
との提携交渉やTNK-BPに関連した書類を 調べた。

その後、BPはこの家宅捜査を法律違反であるとして取り消しを求め、連邦執行局(Federal Bailiff Service)は9月10日まで執行を延期した。


AARは8月15日、Stockholm仲裁パネルに、BPがRosneftとの提携によりTNK-BPの株主契約を破ったかどうかの審理を求めた。

AARでは損害賠償についての判断は求めていない。
損害賠償はAARとBPとのストックホルムでの調停ではなく、TNK-BPとBPの間の英国での裁判でやる必要があるとしている。

 

5月の調停では、Rosneft の同意を前提にTNK-BPが北極海開発に参加するとし、これを条件にBPRosneftの株交換を認め た。
BPとAARの株主契約を尊重したものであり、調停ではBPが株主契約を破ったとの判断が下される可能性がある。

BPは北極海開発での将来の利益を失ったうえに、多額の損害賠償を求められる可能性があり、メキシコ湾原油流出事故に続く大きな負担となる

 

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BPRosneftの契約は5月16日に時間切れで白紙となった。

Rosneft は8月30日、北極海大陸棚などでの油田探査・開発に関し、ExxonMobilと業務提携することで合意した。

対象はロシア北部の北極海と、ロシア南部の黒海の深海油田で、Rosneft が66.7%、ExxonMobilが33.3%のJVで油田のほか、ガス田の開発を行う。

ーーー

BPは2011年2月、インドの石油精製・石油化学最大手のReliance Industries と提携し、インドでの石油・ガス開発を拡大すると発表した。
両社はロンドンで枠組み協定に調印した。

BPRelianceが操業しているベンガル湾のKrishna Godavari (KG)海盆のKG D6 blockを含む23の鉱区(総面積27km2)の石油・ガス権益の30%を取得する。
また
50/50JVを設立し、インド市場でのガス販売の市場調査などを実施する。
JVはまた、インドで天然ガスの受け入れ、輸送、販売のためのインフラ作りに努力する。

2011/2/28 BP、インドでのガス・石油開発でRelianceと提携 

両社は2011年8月30日、正式契約に調印した。
BPは対価として72億ドルを支払うが、実績に応じて追加で最高18億ドルを支払う。

 

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